酸素療法 - ⑦ ネーザルハイフロー(HFNC)


HFNCとは

高流量鼻カヌラHFNC:High Flow Nasal Cannula)は鼻腔内に高流量の酸素/空気の混合ガスを投与する方法である。この方法を利用して酸素を投与することを高流量鼻カヌラ酸素療法HFNCOTHFNCOxygen Therapy)という。

HFNCの特徴

  1. 高濃度酸素まで投与可能
    患者の呼吸パターンの影響をほとんど受けずにFiO2 = 1.0まで設定できる

  2. 解剖学的死腔の洗い流し
    上下気道に溜まっている呼気ガスを洗い流すことができ、CO2の再呼吸を防ぐことによってガス交換や換気効率を上げることができる。

  3. 上気道抵抗の軽減
    吸気流速を上回る高流量ガスを送ることで吸気努力に伴った鼻咽頭の虚脱を防ぐことができる

  4. PEEPと肺胞のリクルートメント
    持続的な高流量により呼気終末の気道内圧が陽圧になるため肺容量が増加する。

  5. 気道の粘液繊毛クリアランスの維持
    体温程度までの相対湿度100%までの加温加湿が可能で、気道の乾燥の防止や繊毛機能の維持ができる。

HFNCの回路

HFNCは酸素/空気ブレンダーと加温加湿器、それらをつなぐ回路と鼻カヌラで構成される。もしくは専用の装置が用いられる。

HFNCOTの適応

低流量酸素システム/高流量酸素システムとNPPVの中間に位置付けられることが多く、NPPV導入の前段階や病態の終末期などの緩和ケアで使用されることが多い印象である。是し、HFNCOTでは低いPEEPしかかけられないため、高いPEEPが必要な場合は適応できない。また、慢性Ⅱ型呼吸不全の急性増悪などで呼吸状態を改善させなければならない場合などもNPPVの代わりに使用することは難しい。
NPPVなどより快適性が高いため、緩和ケアやNPPVの拒否症例に対して使用できる可能性がある。

HFNCOTの禁忌

  • 自発呼吸のない患者

  • 気道確保が困難な患者

  • 循環動態が不安定な患者

  • 非協力的な患者

流量設定

成人では30[L/min]から開始することが一般的で、更なるPEEP効果などを期待するのであれば流量を増加させる。50〜60[L/min]まで増加させることが可能だが、患者の不快感も強くなりがちであり、長期的な管理は難しい場合もある。
小児(3kg~12.5kg程度の患者)に対しては2[L/kg/min]でのアプローチが立証されている。
新生児のガイドラインでは4〜6[L/min]で開始するべきとされている。

酸素濃度設定

II型呼吸不全患者に対してはSO2 88~92[%]を目標に適宜調整する。

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