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変えるのは今でしょう! 日本の現状維持的エネルギー計画

    
先週13日、エネルギー基本計画(エネ基)の見直しに向け、資源エネルギー調査会基本政策分科会の議論が始まりました。

エネ基は、石炭、天然ガス、原子力、再生可能エネルギーなどの電源構成(エネルギーミックス)を含む、我が国のエネルギー政策を決定するもので、改定は3年に一度です。

このチャンスを逃すと、さらに3年待たねばなりません。

分科会は、環境関係の研究所、産業界、金融業界、県知事、大学、メディアなど多様な分野からの24名で構成されています。
 
環境NGOは今回の改定に大変注目しています。

2018年にIPCC(気候変動に関わる政府間パネル)が1.5℃特別報告書で、世界の平均気温を産業革命以前と比べ1.5℃上昇に抑えないと、地球環境に甚大な悪影響を及ぼすことになると発表しました。

それ以来、ヨーロッパをはじめ多くの国々が、温室効果ガスの削減目標(NDC)を引き上げています。

このような潮流にもかかわらず、日本はそれまでも不十分だと国際的に非難されている削減目標を、今年4月に添え置いたまま国連に提出しました。

手続き的にエネ基の改定がないとNDCを見直せないことがあったのかもしれません。個人的には、もしそうだとしても強い危機感と意志があればNDCを引き上げて提出できたと思います。

いずれにせよ、来年エネ基が変わればNDCが変わります。

したがって、今回のエネ基の見直し内容で、日本が本気で気候危機の解決に取り組む姿勢かどうかが分かります。

日本の今までの超スローな取り組みの原因は危機感の欠如だと思います。

この点では、新型コロナと同様に科学者の意見を真剣に聴くべきです。

IPCCの報告から例を挙げると、今後1.5℃上昇に抑えられたとしてもサンゴの生息域が70-90%消失するとされています。「英国王立協会紀要」の最近の論文は、世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフでは、過去25年間でサンゴの半数が死んだと発表しました。

海の熱帯雨と呼ばれるサンゴ礁を失ったら、他の海洋生物にどんな影響が出るか計り知れません。

このままの世界の排出が続けば、2030年代に1.5℃上昇という予測もあります。

また、今後どこかで引き返す、つまり気温上昇を反転できなくなる時点(Tipping Point)に至ってしまうと、科学者は警告しています。

分科会では委員から「もはやエネルギーの脱炭素化論議というのは、環境問題というよりも国家間の産業競争力・産業政策の問題になっている。」という発言がありました。

「環境問題というより」という表現は気になりますが、温暖化対策は、日本の将来の経済力の面からも強化する必要があります。

ところで、今までの議論では「イノベーション」で解決という意見が、政府や産業界からよく出されています。

今実現できていない「イノベーション」を待つ時間的余裕はありません。

気候危機対策は地球規模のリスク管理です。リスク管理で大事なことは、まず最悪を考えて計画すること。そして希望に頼るのではなく、現実的に行動することです。

火事が起きている時に、消火器を作ることを考えても間に合いません。

横山隆美