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港町・函館 今と昔

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天然の良港をいだく函館。 高田屋嘉兵衛の千石船が出入りし、ペリー提督が水と薪をもとめて開港をせまり、戊辰戦争では榎本武揚の艦隊が官軍と交戦するなど歴史を刻んできた。 開港160年… もっと読む
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#津軽

「幻の津軽そば」 かね久山田

津軽そばの旨さを味わうために、 いつも「かけもりセット」を注文する。 道内の幌加内で採れたソバを手打ちする。 水でふやかした大豆をすり鉢で50分ほど摺りおろした 呉汁(ごじる)をつなぎにつかう。 これが津軽そばの特徴。 コシがあり大豆の甘みがほのかにする。 ウルメイワシの丸干しでとったダシは、 くせがないが深みがあり甘みと香りがたって そばとの相性が良い。 津軽そばを全国に伝え歩いた職人が、 大正のころ、東京以北で最大の都市で賑わっていた 函館の末広町に落ちつきそば屋を

望郷の思い

大雪のあと晴れわたった函館・下海岸、汐泊川ちかくの浜辺。 昔そこにあった屋根の瓦と壁が欠け落ち、傾きかけた大柄の番屋は跡かたもなく消えていた。 イワシの木村番屋。雪原が広がっているだけ。  明治から昭和初期にかけイワシの大群がおしよせ海の色がかわった。イワシを大釜で炊いて畑作肥料となる漁粕が地域をうるおした。   漁期の11~12月、漁師は番屋に泊まりこみ“ヤサヨ、ヤサァヨー”と地引き網をひいた。女たちはイワシをつめこんだモッコをかつぎ浜と釜場を行きかう。 番屋跡にたた