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港町・函館 今と昔

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天然の良港をいだく函館。 高田屋嘉兵衛の千石船が出入りし、ペリー提督が水と薪をもとめて開港をせまり、戊辰戦争では榎本武揚の艦隊が官軍と交戦するなど歴史を刻んできた。 開港160年…
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2023年3月の記事一覧

縄文のヴィーナス

半世紀ほどまえ、 ひとりの主婦がじゃがいも畑で鋤をいれると ガチっと何かにあたった。 泥をとると人間のような目と鼻があらわれた。 腰をぬかすほどびっくり。 家族は、これ、土偶みたい、と。 函館郊外、昆布の里で知られる南茅部。 太平洋をのぞみ温暖で 豊かな自然にめぐまれている。 3500年まえ、縄文後期、 縄文人がマグロを獲り鹿を狩り、 栗の実をとって住んだ。 いまは、その遺跡があちこちにある。 そのひとつから中空土偶が姿をあらわした。 発掘から重要文化財、 さらに北海道唯

「幻の津軽そば」 かね久山田

津軽そばの旨さを味わうために、 いつも「かけもりセット」を注文する。 道内の幌加内で採れたソバを手打ちする。 水でふやかした大豆をすり鉢で50分ほど摺りおろした 呉汁(ごじる)をつなぎにつかう。 これが津軽そばの特徴。 コシがあり大豆の甘みがほのかにする。 ウルメイワシの丸干しでとったダシは、 くせがないが深みがあり甘みと香りがたって そばとの相性が良い。 津軽そばを全国に伝え歩いた職人が、 大正のころ、東京以北で最大の都市で賑わっていた 函館の末広町に落ちつきそば屋を

ああ、五稜郭公園

夕飯に遅れると母ちゃんに怒られる。 で、うす暗くなった公園のベンチの 人影に声をかけた。 「おじさん、今、何時? ねえ、教えてよ、おじさん」 返事がない。 そこで、おじさんの背後から正面にまわった。 僕は見た。初めて見たのだ。   男と女が接吻していた。 今、考えても、かなりなディープキス。 小学生のころ、遊び場のひとつが、五稜郭公園。 夕暮れまで洟たれ小僧は、あそびに遊ぶ。 いまでも表門の橋をわたる時、 そこから堀に飛びこんだ夏を思いだす。 あのころ、もっぱら犬か