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5歳の孤独と愛

仲良しなエルサとベル。

5歳の娘、エルサは今、
幼稚園の年長組です。
一年前に年中組の時、
ベルという女の子と大の仲良しでした。
エルサにとって初めての仲良くなったお友達です。
ベルにとっても初めて仲良くなったお友達です。
ベルとエルサは、いつも一緒。
鉄棒したり、
お着替えしたり、
変顔したり、
誰がどう見ても、
仲良しの2人組だったのです。
ところが、
今年の4月、
年長組に進級したとき、
クラス替えがありました。
残念なことに、ベルとエルサは
別々のクラスになってしまったのです。
2人とも落胆しました。
特に、ベルは、
落ち込みようは誰がみても明らかでした。
いつも口を尖らせて
下を向いて元気がないのです。
それでも、
2人は休み時間や
帰りのお迎えを待つ時間になると
今まで通り一緒に遊んでいたのです。

寂しいベル

ベルのママは、
ママの仕事が忙しくなってきたこともあり、
ベルを園長保育で預けることにしたのです。
幼稚園は、普通午後2時に終わります。
2時になると、
ママやパパ達が迎えに来たり、
バスに乗って帰って行くのです。
でも、ベルのママは迎えに来ません。
園長保育のお友達は数も少なく、
数少ないお友達と先生と
5時までママの迎えを待たなければいけません。
ベルは、大好きなエルサもいない。
ママも迎えに来ない。
なんだか寂しい気持ちがつのってきました。

ある日の事、エルサのママが、
ベルの表情が冴えないので、
「どうしたの?」
って声をかけてみました。
するとベルは、
「今のクラスつまンない。楽しくないもン」
と口を尖らせていうのです。
ママは、かわいそうに寂しいのかなと思いました。

ココロがチクチク

エルサとママが家に帰ると、
エルサがママに言いました。
「ベルちゃんね、この前、アリエルちゃんとケンカしてたんだよ」
「そうなの?どうやって?」
「ベルちゃんね、ワタシが!ワタシがー!ワタシがー!!」
っていうんだよ。
「えー!ホント。気が強いのかな。」
「それにね、アリエルちゃんに○ねば、いいのに。
とか言うんだよ」
「そんなこと、言っちゃダメだよね。
エルサは、今もベルちゃんと遊んでるんでしょ」
「最近はね、同じクラスのジャスミンちゃんと2人で遊びたいの」
「そうなの。ベルちゃんとジャスミンちゃんと3人で遊べば良いじゃん?」
「だってね、ベルちゃんが、前にみたいにエルサと2人で遊びたいっていうからね、ジャスミンちゃんと遊ぶときは、ベルちゃんに見つからないように、そうっと廊下を歩いてるの。」
複雑になってきました。

会いたくない人になってきた。

エルサは、ベルに会いたくなくなってきたのです。
4歳の時は、あんなに毎日遊んで、仲良しだったのに。
4歳の時は、幼稚園が終わってからも、ベルと遊びに行くことが楽しみだったのに。夜にも朝顔が咲いてしまうんじゃないかと思うくらい、
ベルのことを話しているエルサは、光り輝いてたのです。
つい先日のことです。
エルサが幼稚園に登園したとき、妹のアナが朝からジャムパンのイチゴジャムが少ないからもっとつけろといいママを困らせ、エルサとアナの幼稚園へ行く支度が遅れ、ほんの少し遅刻をしまったのです。
遅刻をするとベテランの園長先生は、安全のために門に鍵をかけてしまいます。門が閉まっても、遅れてきたママたちがインターフォンで呼び出し子供達の名前を言うとオートロックの鍵を開けてくれる仕組みになっているのです。

エルサが、遅れてしまって門に近づくと、
反対側からベルとベルのママが近づいてきたのです。
エルサは、しまった。見つかった。
というばつの悪い表情で、早歩きで門に近づきます。
「ママ、早くあけて~」
ママがインターフォンを押して、門を開けて急いで中に入りました。
でも、ベルがエルサを見つけて追いかけて、
「エルサー!一緒に行こう!」
とエルサはベルに手を捕まれて、一緒に教室のある方に歩いて行ったのです。

「今日は、ベルちゃんと遊んだの?」
と雨が降りそうな生暖かい風が吹き抜ける家で、そうママが聞くと
「遊んだよ。でもね。本当はね、ジャスミンちゃんと遊びたかった。」
「じゃあ、ベルちゃんに今日はジャスミンちゃんと遊ぶからっていえばいいじゃん」
「それいうと、ベルちゃん怒るよ、ぜったい。」

だれもが孤独で愛が欠如している。

5歳の子供達とはいえ、立派な社会が形成されているんですね。
このあと、ベルちゃんのココロはどうなっていくのでしょう。
ママが言うには、最近のベルちゃんやさぐれてきたと言う。
子供たちの間でも好き嫌いがはっきりしてきて、
他の子の目を盗んで内緒で何かをしたり
小さな子や弱い子に、キツイ口調でモノを言ったり、
本当に大人と変わらない。

人の多くは、少年から青年になり恋をしたり、恋愛に妥協したりして
いろんなことを経験して親になる。
親になっていろんなことがめまぐるしく起きてるような錯覚に陥って、
子供の話に真剣に向かうことを忘れてしまう。
子供達の話より、政治の話をしたり、金融市場の話をしたり、
仕事の考え事だと言ながら好きな芸能人の事を考えたり、
宗教や宝石、ファッション、釣り道具に嫌いな人、自己啓発書や
マルチまがいの健康食品販売の方法など。
いろんなことが考えられてインターネットに流されて、
子供を見るより、スマホを見てる。
本当は、そんなことより、もっと大切なことが
毎日、自分の家で、向かいの家で、海を渡った家で起きている。
エルサやベルの子供達を見ながら、
カワイイねといいながらも、
大人も同じように人との関わりが不器用で、
解決方法も分からないまま過ごしている。
目の前にいる子供達との会話もままならないままに。

世の中のお父さんお母さん、ほんの少しの時間でも
子供達の話を聞いてみましょう。

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