経鼻内視鏡補助下イレウスチューブ挿入法の適応

経鼻内視鏡補助下イレウスチューブ挿入法 
Gastroenterological Endoscopy Vol.52(6), Jun. 2010

経鼻内視鏡補助下イレウスチューブ挿入の適応は,一般的なイレウスチューブ挿入と同様である.複雑性もしくは絞扼性の閉塞の場合,高度の虚血や壊死が疑われる場合は早期の外科的治療が基本であるが,それ以外の小腸閉塞はドレナージによる軽快を期待することができるため,イレウスチューブ挿入の適応となる.大腸閉塞では,最終的に外科切除を要することが多いが,緊急手術,汚染手術を回避するために一時的にドレナージを選択することができる.右側大腸閉塞の場合にはイレウスチューブの適応とする場合があるが,閉塞部位が左側大腸の場合は有効な減圧が得られないことが多く,ドレナージの手段としては経肛門的チューブ挿入が選択される.
 小腸閉塞,大腸閉塞のいずれでも,適切なドレナージ効果が得られない場合や症状が増悪する場合には,速やかに外科的治療に移行することを念頭に置くべきである.
 経鼻内視鏡補助下イレウスチューブ挿入は,胃術後症例に対しても問題なく施行できる.特にBilroth-Ⅱ法再建では,従来の挿入法では小腸への挿入が困難な症例をしばしば経験するため,内視鏡補助下挿入の良い適応である.Bilroth-Ⅰ再建や胃全摘後では,従来法でも比較的容易に小腸に挿入できることが多く,あえて内視鏡補助下でなくとも良いと考えられる.吻合部狭窄を有する例やρループ再建例などでは適応となる場合がある.
 腸閉塞の患者に上部消化管内視鏡は原則的に禁忌とされるが,内視鏡によって腸閉塞が悪化したと考えられる報告はなく,そういった経験も現在
のところない.ただし,送気量を必要最小限に留める注意は必要である.
一般的なイレウスチューブ挿入と同様に,咽喉頭,食道に疾患がある患者,誤嚥のリスクの高い患者などは注意が必要である.またX 線透視を用いるため,妊娠中の患者の適応は慎重に決定するべきである.


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