ERCP後膵炎の危険因子


ERCP後膵炎の危険因子に関する検討
https://doi.org/10.11210/tando1987.21.5_617

ERCP後膵炎の危険因子について従来欧米で報告されている因子にERCP施行時間,深部挿管までの時間を加えて検討した.
対象は2003年8月から2006年5月までにERCPを施行したうち,いわゆる新鮮乳頭の629例,平均年齢65.5歳,男女比1.4:1.0,全体での発症率は4.1%であった.これを,膵炎を発症した群(発症群)と発症しなかった群(非発症群)に分けて検討した.
年齢,男女比,総胆管径,主膵管径には差がなかった.施行時間は47.5分,29.4分と発症群で有意に長かった.深部挿管するまでの時間は17.4分,8.7分と発症群で長かったが有意差はなかった.膵管造影率は85.2%,36.5%と発症群で有意に高かった.
施行時間と膵管造影の有無がERCP後膵炎の危険因子として示された.

施行時間は膵炎発症群と非発症群の問に有意差が認められたが,これは胆管造影が難しい症例も初心者が施行して時間がかかった症例も,複数の手技を施行した場合も乳頭に対する物理的刺激の総和として評価できた可能性がある.しかも,ERCP施行中に判定することができることより,どの施設でも客観的かつ即時的に評価できる点が優れていると考える.
FriedlandらはERCP中の疹痛4点,ERCP後膵炎の既往2点,膵管造影3点,挿管を試みた回数を1から4点として計4点以下は膵炎の発症率が2%未満,5-8点が7%,9点以上だと28%であったと報告されている、今回はこの報告との相関を検討していないが,判定の即時性が求められていることの証しであると考えられる.
膵管造影が膵炎の発症を誘発する理由として膵管内圧の上昇による膵実質への直接的な障害が考えられる.しかし,Johnsonらは非イオン性の低張造影剤を使っても膵炎は減らなかったと報告しており,Tsulinoらは多変量解析で膵管造影のみが単独でERCP後膵炎の危険因子であると報告しているが機序は分からないとしている。

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