日常診療における緊急ERCPへの対応

 小泉 優子, 今村 綱男, 小山 里香子, 奥田 近夫, 竹内 和男, 日常診療における緊急ERCPへの対応, Progress of Digestive Endoscopy, 2008, 73 巻, 2 号, p. 103-106, 公開日 2013/07/31, Online ISSN 2187-4999, Print ISSN 1348-9844, https://doi.org/10.11641/pde.73.2_103, https://www.jstage.jst.go.jp/article/pde/73/2/73_103/_article/-char/ja

胆膵領域では緊急処置を必要とする致死的な病態が日常的に存在する。処置の主となる内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)は熟練した術者,介助者,X線透視操作者,器具出しなど外回りといったマンパワーを必要とし,緊急で施行することに難渋することが少なくない。当院における緊急ERCPの実態について調査した。2006年1月から2年間における自験例594症例のうち,約1/4を占める146例に対し,緊急的にERCPを行っており,特に急性胆管炎が125例と大多数を占めた。これらをretrospectiveに急性胆道炎の診療ガイドラインと照らし合わせると,重症急性胆管炎の場合,疾患・時間帯を問わず全症例で速やかにERCPを施行していた。中等症および軽症急性胆管炎の場合,原疾患が総胆管結石や悪性腫瘍における胆管ステント閉塞の場合は,速やかに施行していた。一方,悪性腫瘍初発例の場合は,胆管炎が保存的治療が可能であればCTやEUS等の画像検索を先行し待期的に行う例が多かった。重症度分類を用いての緊急ERCPのトリアージに関しては,重症のうち「菌血症」の有無は発症時には確定できないことと,中等症のうち「黄疸」の項目は原疾患が悪性腫瘍の場合には高頻度に該当してしまう点が,臨床的矛盾点として考えられた。ERCPにより急性胆管炎は全例改善しており,有用な治療手段であった。実施時期に関しては来院時間帯や検査室の状況が大きく関与していた。

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