透明フードなくして大腸憩室出血の内視鏡診断はできない

大腸憩室出血への対応

https://doi.org/10.11280/gee.57.1296

前処置不良下で行う通常内視鏡では大腸憩室出血の診断は困難である.高率に診断するためには洗腸と透明フードが不可欠である.病歴,薬剤歴,直腸診所見から憩室出血を疑ったらまず造影CTを行い,そして速やかに洗腸し,フードを装着した内視鏡を行うフードを憩室周囲に軽く押し当て憩室を吸引,反転することで内部の観察ができる.また,フードを憩室周囲に軽く押し当てたまま鉗子孔より水を注入すると,非責任憩室では内部に凝血塊や血液があっても洗浄にて容易に除去されるが,責任憩室では容易には除去されず,鑑別できる.露出血管を有するびらんを認めた憩室が責任憩室である.憩室出血の止血には組織傷害が軽微なクリップ法を第1選択にすべきである.クリップ法ではできるだけクリップにて露出血管を把持するように試みる.循環状態が不良で洗腸が困難な重症例や,内視鏡的止血術の抵抗例にはIVRが有効であるが,偶発症に注意が必要である.

1 .憩室出血の内視鏡診断に欠かせない,透明フードを用い た 4 つ のテクニック
1 )テクニッ ク 1 : ハウストラの陰に隠れた憩室の見落としをなくす
内視鏡による大腸憩室の正診率は47.1%であったとしている.すなわち,フードを用いない内視鏡では憩室の半数は見落とされていることになり,憩室出血の診断はとてもできない.しかし,フードでハウストラを軽く押し上げると陰に隠れていた憩室を見つけることができる.しかし,フードに慣れていない初心者では憩室の見落とし率が高く,習熟を要する.
2 )テクニッ ク 2 : 憩室を反転し内部を観察する
 通常内視鏡では憩室内部を観察することは困難であるが,内視鏡先端にフードを装着し,憩室周囲に軽く押し当て憩室を吸引,反転すると憩室内
部の観察が可能とな る.十分に洗腸してあればフードを用いても視野の妨げにはならない.責任憩室の内部には小さなびらんの中に露出血管を有するDieulafoy 潰瘍様の所見を認めることが多い.
3 )テクニッ ク 3 : 憩室内部の粘膜を損傷することなく洗浄ができる
 憩室周囲にフードを軽く押し当てたまま約50ml の水を鉗子孔から勢いよく注入すると内部の粘膜を損傷することなく洗浄でき る.非責任憩室では内部に凝血塊や血液があっても洗浄にて容易に除去されるが,責任憩室では容易に除去されない.内視鏡の送水機能では同様の洗浄は困難であり,責任憩室と非責任憩室を鑑別する上で重要なテクニックである.また,繰り返し憩室内を洗浄しても内部より新鮮血が流出する場合も責任憩室の所見である
4 )テクニッ ク 4 : フードの一部を腸管壁に軽く当てたまま軸を合わせることで憩室内部の病変が正面視できる
 テクニッ ク 2 で 反転できない憩室が約半数ある.その場合は腸管内から憩室内部を覗き込むしかないが,フードの一部を腸管壁に軽く当てたまま軸を合わせることで憩室内部の病変が正面視でき,また内視鏡的止血術も容易に行える.
2 .大腸憩室出血の内視鏡診断に適した内視鏡と透明フード
 憩室をうまく反転させるためにはフードの全周が均等の力で腸管壁に当たることが必要であること,また深部挿入性がいいことから斜め型のフードが適している.
 また,先端アタッチメント(OLYMPUS)に代表される浅いフードや,CF TYPE H260(OLYMPUS)に装着する外径16.0mm の広径のフード(MH - 591)では反転した憩室の粘膜がスコープのレンズに接し赤玉となり観察できない .憩室出血の診断における透明フードの有用性を唱える文 献 は散見されるが,ほとんどが浅いフードを使用した文 献 で,それらの方法では 反転した憩室の内視鏡像を提示できていない.
 よって,憩室出血の内視鏡診断には細径の内視鏡と奥行きが深いフードが最適である.
 ただし,前処置不良例ではフード内に便や血液が入り込み視野が不良となること,フードにて憩室が反転できない例では憩室底部までの距離がくなり内部を覗き込むことが困難であることから,それらの例では浅いフードの方が有用である.
 また,テクニッ ク 2 は 陰圧を,テクニッ ク 3 は陽圧を利用する方法であるため,側孔を有するフードは適さない.
3 .透明フードの装着方法
 奥行きが深い,斜め型のフードを内視鏡先端に装着し,フードの最も短い部分と内視鏡の鉗子孔の位置を合わせる.また,クリップ装置がフードに引っ掛かり,出せなくなる時があるので検査前にクリップ装置がフードに引っ掛からないことを確かめておく.


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