underwater EMRについて

赤坂智史 他、大腸ポリープに対するunderwater EMRのコツと実際、Gastroenterological Endoscopy、Vol. 60( 2), Feb. 2018

underwater EMR=UEMRは消化管の管腔内を見ずで満たした状態で粘膜下局注を行わずに病変をスネアで絞扼し、高周波手術装置を用いて通電切除する。消化管内を脱気して水で満たすと、粘膜・粘膜下層が固有筋層から管腔内に浮かぶ様に突出し、スネアによる絞扼が容易となる

2012 年Binmoeller らが初めて報告した処置法
Binmoeller KF, Weilert F, Shah J et al. “Underwater” EMR without submucosal injection for large sessile colorectal polyps (with video). Gastrointestinal endoscopy 2012;75:1086-91.

消化管内腔を水で満たすと粘膜・粘膜下層が管腔内に突出し,それに伴い病変は隆起性病変や亜有茎性病変のような形態を呈し,スネアによる絞扼が容易となる.この際,固有筋層は輪状となり,粘膜・粘膜下層とは異なり管腔内に突出しないため,スネアで絞扼する際に筋層を巻き込むリスクが少ないというのが安全に切除できる理論である.

従来のEMR(Conventional EMR:CEMR)では粘膜下局注を行うことで筋層との距離を保ち穿孔を回避する努力がなされてきたが,局注の成否によりEMR の成否が大きく左右される不確実な側面があった.


浸水法による腸管の状態


UEMRとEMRの比較

一般的に合併症が多いといわれる十二指腸腫瘍に対しても良好な成績が報
告されており,良い適応であるとされる。

Binmoeller らの報告では電流の散逸を考慮して滅菌水を用いているが,注水量が多くなった際は水中毒(低ナトリウム血症)の危険性を伴う.また,万が一穿孔が発生した際のことも考慮すると,清潔で刺激の少ない生理食塩水が安全である.当院では生理食塩水を用いているが,電流の散逸はほとんど感じず切除の感覚としては滅菌水と違いはない.

高周波手術装置の設定の参考値
VIO300D(Endo Cut Q Effect 3,Duration 2, Interval4)
ICC200(Endo Cut Effect 3,80W)

UEMR の際主に使用しているスネアの参考例
キャプチベーターⅡ(ボストン・サイエンティフィック)
スネアマスター(オリンパス)

注意点
UEMR は筋層を把持するリスクが少ないとされているが,術中穿孔例の報告もある。
Ponugoti PL, Rex DK. Perforation during underwater EMR. Gastrointestinal endoscopy 2016;84:543-4.

解剖学的に壁の薄い右側結腸病変の処置には慎重な操作が必要.
切除時に通電時間が長くかかる症例などでは筋層を巻き込んでいる可能性も考え,ためらわずに分割切除や,CEMR に切り替えるなど柔軟に対応するべきである.
固いスネアで強く押し付けると,筋層を把持し穿孔させてしまうリスクがある.

穿孔時は管腔内の水が腹腔内に漏れて,CEMR より炎症が波及する恐れがある.穿孔を疑った場合には迅速に注水した液体を吸引し,二酸化炭素を送気することで液体の漏出を避けるべきである.

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