腸閉塞とイレウスチューブの有用性

経鼻内視鏡補助下イレウスチューブ挿入法
Gastroenterological EndoscopyVol.52(6), Jun. 2010

腸閉塞は「腸管内容の肛門側への輸送が障害されていることによって生ずる病態」と定義され,我が国ではイレウスとも呼ばれる(欧米では一般にbowel obstruction intestinal obstructionを用い,麻痺性腸閉塞以外にはileusの語はあまり使われない).腸閉塞は,適切な治療を行わなければ脱水状態,敗血症,多臓器不全へと進展することがある病態である.虚血が存在する場合には腸管壊死や破裂などの原因ともなる.虚血が存在しない腸閉塞の場合には保存的加療が第一選択となり,イレウスチューブなどによる腸管のドレナージが有効である.1900年代初頭,外科手術の普及とともに術後癒着による腸閉塞が飛躍的に増加し,その致死率は50% に及んだというが,イレウスチューブ(欧米ではlong intestinaltubeと呼ばれる)の出現に伴って劇的に減少し,現在では3% に満たない
 イレウスチューブ挿入は有効な治療法であるが,検査時間が長く患者の苦痛が大きくなることもしばしば経験される.小腸への挿入成功率を上
げるための工夫が歴史的になされてきたが,これは挿入困難例が存在することの証明でもある.近年外径5mm 前後の極細径内視鏡が市販化され,経鼻挿入が少ない苦痛で可能となった.これを用いた経腸栄養チューブ留置の報告が相次ぎ,続いてイレウスチューブ挿入において有用性が報告されている.

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