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夏目漱石 夢十夜「第五夜」 全5回④

いよいよ後半戦です。気合い入れていきましょう!

⑤なぜ女に通じた?

さて、ここで少し、夢だから何でもありだと考えないと答えが分からない謎について書きたいと思います。

それは、なぜ女は自分が会いたがっていると知ったのかということです。

敵陣で自分が女に会いたいと言った後、いきなり女が馬を出す場面になっているのですが本当に謎です。

いくら考えても、夢の中だから伝わったという答えしか思いつきません。

ただ、夢だからという答えにも根拠が全くないわけではありません。
本章では、このことについて僕なりの見解を述べます。

5-1.夢とは

夢の定義について確認すると願望の充足(フロイトが提唱)や無意識による意識の一面の補償(ユングが提唱)、といった機能があるとされています。

つまり夢は「こうなりたい」という無意識からのメッセージである場合があるのです。全ての夢がそこに分類されるかどうかは分かりませんが。

さて、夢を無意識からのメッセージであるとした場合、この謎に対して一つの仮説が浮かび上がってきます。

それは、「気持ちが通じて女が一心不乱に駆けつけてくれる」のが漱石の願望というか美しく感じるものであったのではないかということです。

それを夢で見た風に書いたのではと考察しました。

5-2.月がきれいですね

根拠はもう一つあります。夏目漱石は「月がきれいですね」の生みの親とされている³のは有名な話です。

このフレーズ、意味はI love youですが何故そうなるのか考えたことはありますか?これは同じ対象を見て美しさを共通の認識とすることで愛が通じるという意味らしいです。

「同じ対象を見て共通認識を持つ」 
...実は第五夜でも使われているのではと思い考えてみました。

第五夜での同じ対象とはズバリ、篝火です。暗闇を照らす篝火が月の代わりに設定されているのです。

自分は間近で、女は遠くから篝火を見つめて共通認識を抱きます。

それは勿論、恋人に会いたいということ。

自分と女の心が通じ合っているからこそ篝火を通じて女は自分に会いたい(会わなければならない)と感じ、馬を駆ったのではと考えました。

正直深読みしすぎかもしれません。でも一応理論は通ると思います。

さあ以上で第4回は終わりです。

つぎはいよいよ最終第5回。ゴールはもうすぐそこ!

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