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テレワーク・リモートワークと営業秘密の保護を両立するために必要なこと

経済産業省は、5月7日に、テレワークの実施と「営業秘密」の保護を両立させるために企業がどのような措置を講ずるべきかについてまとめた、「テレワーク時における秘密情報管理のポイント (Q&A解説)」を公表しています。

こちらのページから入手できます。

企業の研究・開発や営業活動の過程で生み出された様々な営業秘密を保護するための制度が、不正競争防止法にはあります。

不正競争防止法では、営業秘密を保護するため、営業秘密を侵害する行為について、侵害行為の差止め、損害賠償、信用回復措置を求めることができると規定しています。

不正競争防止法上の「営業秘密」は、

(1)秘密として管理されていること(秘密管理性)、
(2)事業活動に有用な技術上又は営業上の秘密であること(有用性)、(3)公然と知られていないものであること(非公知性)

の3つを満たすものをいいます。

技術やノウハウ等が「営業秘密」として不正競争防止法の保護を受けるためには、これら3つを満たす必要があります。

不正競争防止法
(定義)
第二条
6 この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。

テレワークの場合、テレワークを念頭に置かずに定められた秘密管理措置を大きく変えざるを得ませんからこの中の秘密管理性、つまり、「秘密として管理されていること」が問題になります。

「秘密として管理されている」といえるためには、

(1)情報にアクセスした者が、営業秘密だと認識できるようにしておくこと(客観的認識可能性の存在)、
(2)情報にアクセスする者が制限されていること(アクセス制限の存在)

の2つが必要とされています。どの程度具体的な措置を講ずる必要があるかについては、過去の裁判例では、情報の性質、保有形態、企業等の規模などを総合考慮して、合理性のある秘密管理措置が実施されていたかどうか判断するとしています。

経産省の「営業秘密管理指針」(平成27年1月改訂版)では、不正競争防止法の保護を受けるためには、企業が特定の情報を秘密として管理しようと考えている場合に、特定の情報を秘密として管理しようとするつもりであること(秘密管理意思)を、秘密管理措置によって従業員に対して明確に示し、情報にアクセスした従業員等がこれは秘密なんだと認識できるようにしておく必要があるとしています。

今までは、社内の様々な情報取扱規程などでは、「秘密情報の社外への持ち出し禁止」などとしか規定していなかった企業も多いかと思います。しかし、テレワークの実施によりこうした規定が形骸化してしまうと、企業の秘密管理意思が従業員に明確に示されないまま、従業員が情報を扱い続けてしまう危険があります。

不正競争防止法の「営業秘密」といえるためには、秘密管理性、有用性、非公知性の3つの要件を満たす必要がありますが、このような場合、秘密管理性、つまり「秘密として管理されている」という要件を満たさず、秘密としておきたかったはずの情報が不正競争防止法上の「営業秘密」に当たらず、不正競争防止法の保護の対象とならなくなってしまうという危険があります。

こういう危険を避けるために何をすべきか。

「テレワーク時における秘密情報管理のポイント (Q&A解説)」では次のような回答があります。

各種情報取扱規程等の関連規程を改めて見直し、通常勤務における情報の取 り扱いに関する規定に加えて、テレワークの実施を念頭に、必要な場合には秘密情報の社 外への持ち出しを認めつつ、その場合のルール(秘密管理措置)を定めること(各種情報取扱規程等の見直しも含みます。)が考えられます。

「テレワーク時における秘密情報管理のポイント (Q&A解説)」では、秘密としておきたかったはずの情報が不正競争防止法上の「営業秘密」に当たらず、不正競争防止法の保護の対象とならなくなってしまうという危険を避ける方策など、テレワークの実施と「営業秘密」の保護を両立させるために企業がどのような措置を講ずるべきかについてまとめられています。

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