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学校現場での個人情報の管理 生徒名簿を業者に貸し出すことのリスク

県教委が20日に発表したこと

多治見工業高校が業者に名簿を貸し出し、その業者が名簿を紛失したそうです。さらに、岐阜新聞によると、他の県立高校等でも名簿の貸出しをしていたことが発覚しました。

岐阜県教育委員会は20日、多治見工業高(多治見市)の生徒に体操服を納入する業者が、同校が作成した新入生121人分の氏名や性別などを記載した名簿を紛失したと発表した。今のところ、個人情報の流出は確認されていない。
(略)
県教委の調査で、県立の高校55校と特別支援学校5校で業者に名簿を貸し出していたことが判明。取りやめることを検討している。

さらに、CBCテレビ(TBS系)によりますと、体操服に生徒の名前を刺繍するために名簿を業者に貸し出していたとのことです。

(略)県立多治見工業高校の体操服に生徒の名前を刺繍するため新入生121人分の名簿を預かっていましたが、これを紛失したということです。

個人情報を収集する際に名入れにも使うと明らかにしていたといえないのではないか

個人情報を収集するときには、何のために使うのかその目的を明確にし、その目的達成に必要な範囲で収集しなければなりません(岐阜県個人情報保護条例6条1項)。

岐阜県個人情報保護条例
(収集の制限)
第六条 実施機関は、個人情報を収集するときは、個人情報を取り扱う事務(以下「個人情報取扱事務」という。)の目的をできる限り明確にし、当該目的を達成するために必要な範囲内で収集しなければならない。
2 (略)

しかし、今回の件については、そもそも、収集する際に、利用目的を明らかにしていたのか、体操服に生徒の名前を刺繍するために使うということを明らかにしていたのか疑問が残ります。

個人情報を目的の範囲を超えて個人情報を利用したり第三者に提供したといえないか

また、本人の同意があるときや法律等に定めがあるときなど例外的な場合を除き、収集の際に明らかにした目的以外の目的で個人情報を利用したり、第三者に提供してはいけないとされています(岐阜県個人情報保護条例7条1項)。

今回の件では、個人情報を収集の際に明らかにした目的以外の目的で使ってたり、第三者に提供した場合に当たるのではないのかという疑問があります。

岐阜県個人情報保護条例
(利用及び提供の制限)
第七条 実施機関は、個人情報取扱事務の目的以外の目的のために、個人情報を当該実施機関の内部において利用し、又は当該実施機関以外のものに提供してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 本人の同意があるとき、又は本人に提供するとき。
二 法令等に定めがあるとき。
三 個人の生命、身体又は財産の保護のため緊急かつやむを得ないと認められるとき。
四 出版、報道等により公にされているとき。
五 実施機関の内部で利用する場合又は他の実施機関、国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しくは県が設立した地方独立行政法人以外の地方独立行政法人(以下この項において「他の実施機関等」という。)に提供する場合であって、事務又は事業の遂行に必要な限度で利用し、かつ、利用することに相当な理由があると認められるとき。
六 他の実施機関等以外のものに提供する場合であって、提供することに特別な理由があると認められるとき。
2 (略)

業者に対し個人情報を適正に取り扱うために必要な措置を講ずることを求めていたのか

さらに、第三者に提供する場合で必要があるときは、その第三者に対して、必要な制限を課したり、適正な取り扱いについて必要な措置を講ずることを求めないといけないとされています(岐阜県個人情報保護条例8条)。

今回、業者は名簿を紛失しました。

かりに、岐阜県個人情報保護条例の6条1項や7条1項をクリアしていたとしても、必要な措置を講ずることをしっかり求めていたかどうかが問題になります。

(提供先に対する措置の要求)
第八条 
実施機関は、個人情報を実施機関以外のものに提供する場合において必要があると認めるときは、提供を受けるものに対し、当該個人情報の使用目的若しくは使用方法の制限その他の必要な制限を課し、又はその適正な取扱いについて必要な措置を講ずることを求めなければならない。

公教育の現場においても、県の個人情報保護条例等に従い、個人情報の適正な取扱いの確保が求められますが、今回は適正な取り扱いが行われていたといえるのかしっかり検証する必要があるでしょう。

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