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4月1日から未払賃金の請求期間や賃金台帳などの保存期間が3年に延長されています

多治見さかえ法律事務所は、企業側・使用者側の労働問題を注力分野としています。

今回も、労働分野の重要な法改正についてお伝えします。

[1]改正労働基準法が4月1日に施行されました

新型コロナウイルスの感染拡大真っ只中だった4月1日、改正労働基準法が施行されました。

残業代などの未払い賃金を請求できる期限(賃金請求権の時効)を、現行の2年から当面3年に延長する改正労働基準法が27日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。4月1日の施行日以降に支払われる賃金から適用される。(3月27日付日本経済新聞電子版)

[2]未払賃金の請求期間は、当分の間「3年間」となります

未払賃金を請求できる期間は、これまで2年間となっていました。

改正法の施行により、将来的に5年間に延長しつつ、当分の間は「3年間」に延長することとなりました。

施行期日である令和2年4月1日以降に支払われる賃金に適用されます。

労働基準法
第百十五条
この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
附則
第百四十三条
3 第百十五条の規定の適用については、当分の間、同条中「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」とあるのは、「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」とする。

これは、改正民法の施行に合わせたものとなります。

時効の起算点も、「これを行使することができる時から」と明確化されています。

退職金請求権はこれまで通り5年間です。

また、年次有給休暇請求権、災害補償請求権についてはこれまで通り2年間となります。

[3]賃金台帳などの記録の保存期間も、当分の間「3年間」となります

労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類の保存期間も、5年に延長されつつ、当分の間は3年となりました。

労働基準法
第百九条
使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。
附則
第百四十三条
第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。

[4]付加金の請求期間も、当分の間「3年間」となります

付加金は、解雇予告手当や休業手当、時間外・休日・深夜労働の割増賃金を支払わなかった使用者や年次有給中の賃金を支払わなかった使用者に対し、裁判所から、未払金に付加して支払いを命ぜられるものであり、一種の制裁金に当たります。

この付加金を請求できる期間もこれまでは、2年でした。

これも、期間を5年間に延長しつつ、当分の間はその期間を「3年間」としています。

令和2年4月1日以降に支払われる賃金に適用されます。

労働基準法
第百十四条
裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第九項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これら の規定により使用者が支払わなければならない金額についての未 払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる 。ただし、この請求は、違反のあつた時から五年以内にしなければならない。
附則
第百四十三条
2 第百十四条の規定の適用については、当分の間、同条ただし書中「五年」とあるのは、「三年」とする。

[5]経営者が注意すべきポイント

法改正は、令和2年4月1日以降の賃金について適用されます。

それまでに発生した未払い残業代の請求期間は2年間のままです。

したがって、2年分を超えて請求されるリスクは、令和2年の2年後、令和4年(2022年)4月以降に顕在化することとなります。

消滅時効期間が3年に延長されると、未払残業代が存在した場合の企業の支払額も増加します。

同じく令和2年4月から、時間外労働の上限規制が中小企業についても始まっています。

労働時間を把握するとともに、withコロナの時代を踏まえ、適正な業務量、適正な人員、適正な仕事の配分、適正な労働時間を見直す必要がありそうです。

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