見出し画像

建築瑕疵と民法改正

最近、新しい生活様式への行動変容はしつつも、経済活動は徐々に元通りになっているためか、多種多様な相談が舞い込んでくるようになりました。

注文者が報酬を支払ってくれない、完成した建築物が契約内容に適合していないと主張されている、というように、建築に関するご相談・ご依頼もいただいております。

当事務所では、主に、監理設計側(建築士側)や施工側(業者側)のご相談を受けており、注文者側については、戸建て住宅の注文者側の相談は受け付けておりません。

今回は、令和2年4月に施行された民法改正により、注文者や請負人の権利はどのように変わったのかについて解説していきます。

令和2年4月1日以降に締結された請負契約に適用されます。

1 割合的に報酬を請求できる場合

請負人は、仕事を完成しない限り、報酬を請求することはできません。

もっとも、注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったときや仕事の完成前に契約が解除されたときで、履行した部分とまだ履行していない部分とを分けることができる場合は、その履行した部分を仕事の完成とみなし、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができます。

民法
第六百三十四条 次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。

2 請負人の責任 契約不適合責任

従来、瑕疵担保責任と言われたものが、契約不適合責任に変わりました。

売買契約の契約不適合責任の規定が請負にも準用されることになりました。

物の売買に関する契約に不適合がある場合には、

・完全な履行がなされるように求めること(履行の追完請求:民法562条)
・代金減額を求めること(民法563条)
・解除や損害賠償を求めること(民法564条、415条)

ができます。

この規定が請負契約にも準用されますが、履行の追完請求は、請負契約では目的物の修補を求める権利(修補請求権)を意味することとなります。

3 契約の解除ができる場合

契約の不適合があり、相当な期間を定めて、履行を追完するよう促し(催告をし)、その期間内に履行がないときは、契約を解除することができます(541条1項本文)。

不履行が契約や社会通念に照らし軽微である場合は解除は認められません(541条1項ただし書)。

さらに、契約をした目的を達成することができない場合には、相当期間を定めて催告をしなくとも、契約を解除することができます(542条1項)。

4 期間の制限

履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をする場合には、不適合を知ったときから1年以内に請負人に通知する必要があります。

もっとも、請負人が不適合について知っていた又は重大な過失により知らなかったといった場合には、この期間制限は適用されません。

民法
(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
第六百三十七条 前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。
2 前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。

さらに、住宅新築工事の請負契約については、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)により民法637条の期間制限が修正され、注文者に引き渡した時から10年間、請負人は、住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分について、住宅新築工事に関する瑕疵担保責任を負うこととなっています。

住宅の品質確保の促進等に関する法律
(住宅の新築工事の請負人の瑕疵担保責任)
第九十四条 住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの(次条において「住宅の構造耐力上主要な部分等」という。)の瑕疵(構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く。次条において同じ。)について、民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百十五条、第五百四十一条及び第五百四十二条並びに同法第五百五十九条において準用する同法第五百六十二条及び第五百六十三条に規定する担保の責任を負う。
2 前項の規定に反する特約で注文者に不利なものは、無効とする。
3 第一項の場合における民法第六百三十七条の規定の適用については、同条第一項中「前条本文に規定する」とあるのは「請負人が住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号)第九十四条第一項に規定する瑕疵がある目的物を注文者に引き渡した」と、同項及び同条第二項中「不適合」とあるのは「瑕疵」とする。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?