是枝監督の「怪物」を観て
わたしたちが、いかに一方的に物事を決めつけてしまい、真実を見誤ってしまうかについて描かれているようだ。
何か事が起きた時、できるだけ沢山の人の話を聞き、多角的な視点から判断しないと、時にとんでもない誤解を生み、誰かを不幸にしてしまう。そういう事を映像化していて、言葉で説明するよりも説得力がある。
怪物とは、わたしたち一人一人にある「心」なのではないかと。
…と思って見ていたら、湊と依里の関係が危ういものになってきて、どうも途中から主題がズレているんじゃないか、と感じた。観終えてから、この映画がクィア・パルム賞を受賞したことを知って、ああ、そっちかい、と。クィア・パルム賞とは、性的マイノリティに関連した賞らしい。そうなると、湊と依里の関係というものは周囲の人たちには理解出来ないもので、ますます物事を表層的に、「決めつけ」だけで見てしまうことは、真実を見誤ってしまう、ということではある。
いずれにしても、冒頭からラストまで退屈せずに、面白く観れた。そして、ラストシーンは美しい。
最後に余計なことだが、田中 裕子って役者は上手いんだかヘタなんだか、いつもよくわかんないんだよね。今回は「おばさん」を演じられていたけど、「校長」を演じきれていなかったように思えた。