渋公のトランスレイション

高校出ていろいろあって上京、北海道、キツネやリスに囲まれた生活(※ウソです)からですから、そこそこのお上りさんでした。
 
浪人時代の初夏。渋谷で友達と待ち合わせることに。
 
当時の連絡手段は家電とポケベル。事前確認は重要でした。カッコつけ知ったかぶり隊長の僕は、前日友人に電話でこう告げます。 
  
僕:『シブコウだったらおまえもわかりやすいっしょ。』 
  
上から目線の発言。しかも略語入り。今思うと、長野人を東京でエスコートしようなんて大それ過ぎ。長野県様なんて、北海道からみるとほぼ東京じゃないか。
  
  
友:『うん。聞いたことあるよ。調べて行ってみる。』 
  
  
僕は約束どおり午前11時に渋谷のハチ公の前で待ち続けました。来ない。あいつがこんなに遅れるはずない。30分後ポケベル。 
  
・友:『ド゙ッチノイリグチ?』 
  
アホか。ハチ公に入口なんてあるかよ。続いてメッセ。
  
・友:『ナカノデンワヨリ』 
  
なにやってんだよ。ハチ公の中にデンワなんてあるもんか。ハチ公前の公衆電話からベルを打つ。 
  
・僕:『マワリノタテモノハ?』 
  
・友:『トナリガクヤクショ』 
  
  
 もうだめだ。交番があった。おまわりさんに聞こう。 
  
・僕:『クヤクショってどこですか?』 
 
・警:『ここまっすぐ、西武越えたら左。道なりにまっすぐ。』 
 
・僕:『(ハチ公を指差して)シブコウってあれ以外にもあるんですか?』 
 
・警:『シブコウったら、渋谷公会堂のことかな? あれは、ハチ公だよ。』 
  
   
   ( 号 泣 ) 
   
  
ずっと渋谷のハチ公を略して『渋公』だと思っていた私は、恥ずかしさとパニックで今思い出してもコメカミがキューンとします。
  
  
〈FINE〉

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