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フランク・リーケン(オランダ)の平行棒/2021年世界選手権予選の演技

世界のトップを戦う選手たちを見てみると、平行棒という種目はどの選手も似通った演技構成になっていきます。
難度が高く、且つ減点されにくい技という点を鑑みると、そういう現象が生じるのも肯けます。

そういった時流も、オリンピック毎のルール改正によって大きく変わっていきます。
ルール改正によって難度が格上げされる技もあれば、一方で格下げされる技もあるわけです。
例えば、平行棒の前方抱え込み2回宙返りひねりおり

前方ダブルハーフ

2本の棒の真横に向かって外に出ながら前方向に2回宙返り、更に半分ひねりを加えて着地する技。
この技は2021年現在はF難度として存在していますが、2022年からのルール改正ではE難度に格下げされる予定です。

ダブルハーフ格下げ

終末技は演技の中に必ず入れなければならない要素で、F難度という難度の高さと着地の決めやすさから、2015年辺りからトップ選手の間で流行しました。

格下げされたとはいえE難度なので、2022年以降、この技が廃れるという事はないと予想しますが、実施する選手は以前よりも減るのではないかと思います。
難度が低くなっても、技自体の難しさは変わりません。
E難度の前方ダブルハーフで減点を食らうよりも、D難度の後方屈身ダブルで確実に着地を決めた方が得だと考える選手、指導者もいるでしょう。

今後の平行棒の終末技の傾向が気になるところです。

そんな平行棒の終末技ですが、なにも真横に降りる技だけではありません。
あまり見られませんが、棒端外向きで懸垂から振り出して宙返りをする技があります。

難度表1@

この技を実施する選手として有名だったのがコロンビアのホシマール・カルボ・モレノです。
カルボが実施していたのが、棒端懸垂からの月面宙返り
この技はD難度という事で、グループ点も0.5が取れる技です。

懸垂月面

しかし、世界トップ選手の技のレベルが上がった事で、カルボもDスコアの向上を計り、終末技を前述の前方抱え込みダブルハーフに変えてしまいました。

そういった経緯があり、今では見ることのない技になってしまっていたわけです。

そんな中、先日の世界選手権でこのレア技を実施する選手がいました。
オランダのフランク・リーケン選手です。
鉄棒が得意なオールラウンダーですが、東京オリンピックへの出場は叶わず。
世界選手権には過去2015年、2018年、2019年と出場しています。
2018年には、オランダが初めて団体決勝に進出した際のメンバーでもありました。

リーケンが実施したのは、C難度の懸垂後方屈身ダブル
中技でも腕支持系の高難度技を取り入れていて、まだまだ伸びしろが期待できる選手。実施面で不安定さがありますが、まずまずの演技と言っていいでしょう。

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実はこれらの平行棒における懸垂系の終末技が、ルール改正によって格上げされるのです。

難度表2@

リーケンが実施していた懸垂屈身ダブルはC難度からD難度へ、カルボがかつて実施していた懸垂月面はD難度からE難度へと格上げがなされます。

リーケンの過去の平行棒の演技を見てみると、終末技にE難度の前方抱え込みダブルを実施しているのが確認できます。

つまり、2021年の演技はルール改正を見越しての演技構成だという事が窺えるわけです。
リーケンはこのまま演技構成を変えずして、難度価値点とグループ点で計0.3もDスコアを上げることができるわけです。

F難度の前方ダブルハーフと、D難度の懸垂月面。
かつて2段階も難度に差があった両技が、今回のルール改正を機に同じ難度として存在し続けることになります。
世界のトップ選手たちがこの両技のどちらを使うのか。
楽しみでなりません。


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