2022年2月25日~28日の体操ニュース
2月28日までの体操ニュースです。
コトブスW杯も無事終了し、いよいよ体操シーズンの幕開けです。
と同時に、パリ五輪に向けたスタートでもあります。
2年半後、誰がどのように活躍するのか今から楽しみです。
また、五輪期間中にもかかわらず勃発したロシアによるウクライナ侵攻は、スポーツ界、体操界にも多大な影響をもたらしています。
▼ビンセンツ・フックがコロナ陽性でコトブス欠場、ドーハも欠場か
オーストリアのつり輪のスペシャリスト、ビンセンツ・フックがコトブスW杯に出場するために実施した検査でコロナ陽性判定が出て大会を欠場していたそうです。
今週末にはドーハでのW杯が始まるので、そちらも欠場という事になるのでしょうか。
本人は「これが世界選手権じゃなくて良かった」と検査同様ポジティブな様子。
オーストリアのオールラウンダーアレクサンダー・ベンダも指を負傷しており、今大会のオーストリア勢はジェニ・ディルミシがあん馬のみの出場。ミスがあり決勝進出はなりませんでした。
▼ハンガリーのメザロシュ パリ五輪に向けて難度の底上げへ
ハンガリーのオールラウンダー、クリストファー・メザロシュについての記事。
昨年の北九州世界選手権では、個人総合予選上位6人による「1組」でローテーションを回ったメザロシュ。
世界選手権の後にいくつか怪我をしたそうですが、競技に影響はないとしています。
「跳馬で前方2回半のひねりを入れている」そうですがヨー2の事でしょうか。
今週末のドーハW杯に出場予定。パリ五輪に向けてハンガリーの団体出場に最大の焦点を当てているという事です。
▼英国代表カニンガムがアイルランドへ移籍
FIGが執行役員会を開催し、採択された事項を公開しています。
ロシア・ベラルーシへの制裁(後述)のほか、エアロビックやパルクールについての決定が並ぶ中、国籍を移す選手の承認についても記述がありました。
その中にイギリス代表として世界選手権に出場、ヨーロッパ選手権の種目別ゆかで優勝経験のあるドミニク・カニンガムの名前がありました。
イギリスから隣国のアイルランドへ移籍するようです。
本人がSNSで報告しています。
「アイルランドでまたメダルを獲るぞ!とやる気満々」とのことです。
今年のヨーロッパ選手権やコモンウェルスゲームス、世界選手権には出られるんでしょうか。
ちなみに、東京オリンピックアイルランド代表のリース・マクレナガンは英領の北アイルランド出身ですが、アイルランド代表として競技をしています。カニンガムはイングランドのバーミンガム出身。
▼全日本個人総合選手権 班編成が決定
体操協会の大会ページに、4月に行われる全日本個人総合選手権の班編成が公開されました。
男子
女子
女子には、この大会で引退を宣言している寺本明日香選手の名前もあります。
男子は橋本大輝選手が連覇なるか。パリ五輪での団体金メダル、そして個人総合連覇へ向けたスタートです。
ある者にとっては始まりであり、ある者にとっては終わりでもある大会。
選手皆が持てる力を全力で出し切れることを祈っています。
▼米国ウィンターカップ オクラホマ大学のビタリー・ギマランイスが個人総合優勝
25日に米国でウィンターカップが開催され、2022年の米国体操シーズンが開幕しました。
米国体操協会:2022年ウィンターカップ ギマランイスが優勝 5名がナショナルチーム入り
個人総合で競う大会で、優勝したのはオクラホマ大学のビタリー・ギマランイス。この大会の上位5人は自動的に米国代表チーム入りが決まります。
優勝したギマランイス
2位のスタンフォード大学 コイ・ヤング
3位は僕が注目してるアッシャー・ホン
4位は東京五輪代表のユル・モルダウアー
5位はスタンフォード大学 コルト・ウォーカー
この5人は米国ナショナル入りが決定です。
米国内のローカルルールで、この大会から何やらボーナス点なるものがあったそうです。何がどうなったらボーナスがつくのかはわかりませんが、アッシャー・ホンは跳馬で最高難度のヨネクラを跳んでボーナスが1.780加算されて16.680という通常ではありえない点数が出ています。
さらに27日に2日目の競技が行われ、ここでは初日と合わせて2日間の合計得点で各種目別の勝者が決まりました。
米国体操協会:2022年ウィンターカップ最終日 種目別優勝者が決定
各種目優勝者は以下の通り。
ゆか…イアン・ラシク=エリス
あん馬…コイ・ヤング
つり輪…アレックス・ディアブ
跳馬…アッシャー・ホン
平行棒…クラン・フィリップス
鉄棒…ジャック・フリーマン
▼IOCがロシアとベラルーシの大会中止、国旗・国歌の使用禁止要請
2月24日、ロシアが隣国ウクライナへ軍事侵攻を実行しました。
侵攻はロシアが実効支配するクリミアと、ロシアの傀儡である隣国ベラルーシからも行われました。
これを受け、IOC(国際オリンピック委員会)は作戦を実行したロシアだけでなく、侵攻に加担したベラルーシにも制裁を与えるよう、各競技連盟に要請しました。
サンスポ:IOCがロシア、ベラルーシでの大会中止要請 国旗や国歌の使用禁止も求める
IOCからの要請は、
・ロシア、ベラルーシ両国で開催予定の大会の中止または代替地での開催
・国際大会で両国の国旗、国歌の使用禁止
これに伴い、FIGも制裁措置を取ります。
▼FIGがロシアのウクライナ侵攻についての措置を決定
IOCからの要請を受けて、FIG(国際体操連盟)が制裁措置を決定しました。
FIGから発表された措置の内容は下記の通り。
◆ロシアとベラルーシの国旗を掲揚してはならず、追って通知があるまでFIG公認のいかなる競技会でもロシアとベラルーシの国歌を演奏してはならない。
◆ロシアとベラルーシで開催される予定のすべてのFIGワールドカップとワールドチャレンジカップは中止され、追って通知があるまで他のFIG競技会はロシアとベラルーシに割り当てられない。
◆ロシアとベラルーシで開催予定のすべてのFIG公認競技会は、FIGカレンダーから削除され、今後FIGによって承認されることはありません。 ロシアとベラルーシで開催される他の競技会は、追って通知があるまでFIGによって公認されることはないでしょう。
まさにこの措置が発表された翌日に行われたのが、コトブスW杯の決勝でした。そして、この措置が早速実行されています。
▼コトブスW杯でベラルーシの国旗・国歌使用されず
ドイツ・コトブスでは、今シーズンの初戦となるワールドカップが開催されていました。ロシアの選手は参加していなかった(できなかった)ものの、ベラルーシの選手は参加していました。
コトブスW杯決勝1日目、男子種目別ゆかでは、ベラルーシのヤホール・シャラムコフが優勝。しかし、スタートリストにも、リザルトにもベラルーシの国旗は表示されませんでした。
そして種目別ゆかの表彰式では、メダルの授与はありましたが、国旗掲揚と国歌清聴はありませんでした。
表彰式だけではありません。
体育館内に飾っている国旗群の中にもベラルーシの国旗はありません。
このコトブスW杯にはロシアの選手は出場していませんが、今週末行われるドーハW杯にはロシア選手が出場予定です。
ロシアはそもそも別問題で国旗も国歌も使えない状態ですが、去年のオリンピックでは国旗が使えない代わりにROC(ロシアオリンピック委員会)の旗を使っていました。
同様に、世界選手権ではRGF(ロシア体操協会)として出場した過去があります。
これらの措置について、ロシア体操協会も声明を出しています。
▼ロシア選手表彰の際はRGFの旗を使用 ティトフ氏
ロシア体操連盟会長であるヴァシリー・ティトフ氏が諸般の措置についてメディアに語っています。
ロシア体操連盟:ティトフ「ロシアの体操選手は、ロシア体操連盟の旗の下で競技を行う。」
ティトフ氏は、「この決定は政治的で強引なものだ」としながらも、「表彰される際はロシア体操連盟(RGF)の旗が使われる」としています。
今後はRGFの旗が使われるという事なのでしょう。
ロシアの軍事侵攻に関連する影響はそれだけにとどまりません。
▼ウクライナのゼレンスキー大統領が国民総動員令を発令、18歳~60歳の男性は出国禁止に
25日、ウクライナのゼレンスキー大統領は国民総動員令を発令。
18歳~60歳の男性は出国禁止とし、予備役として国防に就くよう命じられました。期間は90日間としています。
FNNプライム:【中継】ウクライナ国境 隣国脱出する人々…男性は出国禁止で“戦闘員”に
発令から90日以内に、W杯ドーハ大会、カイロ大会、バクー大会と3つの大会があります。
バクー大会の出場者はまだ発表されていませんが、ドーハ大会、カイロ大会ともにウクライナ選手の出場が予定されています。
ドーハ大会には、イリア・コフトゥン、ロマン・バスチェンコ、イゴリ・ラディビロフ
カイロ大会には、ヴラジスラフ・フリコ、ミキタ・メルニコフと
コトブス大会に出場していない選手が出場予定です。
コトブスW杯に出場していたイリア・コフトゥン、ロマン・バスチェンコは直接ドーハに渡りますが、ラディビロフは出国ができず、ドーハに向かう事ができないのではないか。フリコとメルニコフも同様に大会に出場できないのではないかという懸念があります。
コフトゥンはコトブスからドーハに向かい、ドーハ大会が終わればイタリアセリエAの所属チームの元に行くという情報もあります。
そして、IOCからさらなる通達がありました。
▼IOC すべての競技でロシア・ベラルーシの選手・関係者の除外を求める
IOCがすべての競技においてロシア・ベラルーシの選手及び関係者の参加を認めないよう要請しました。
「国際スポーツ連盟、および世界中のスポーツイベントの主催者にロシア、ベラルーシのアスリート、またはスポーツ関係者が参加できないように全力を尽くすことを強く求める」と、表明した。
また、
ウクライナ選手が自国への攻撃のため、大会に参加できなくなっている一方で、ロシア、ベラルーシの選手がイベントに参加できることを「ジレンマ」と表現し、理事会で勧告の決定を行った。
とあります。
今後の大会にウクライナ国内にいる選手が参加できなくなることを考えるとこの言い分も筋が通っているように思えます。
加えて、
ただ、「中立的なアスリート、チームとしてのみ受け入れられるべき」とし、参加する場合は国旗、国歌などを使用しないことを求めた。
とあるので、大会への参加は不可能ではない事が窺えます。
体操競技はこの要請に就いてどのような対応をするのか。
こちらについてもFIGからの発表を待ちましょう。
▼各国体操連盟が声明を発表
ロシアの行動に対し、主に欧州の各国体操連盟が声明を出しています。
ルーマニア体操連盟「ルーマニア体操は、オリンピック憲章の精神に基づき、平和の発展と促進に尽力しています。」
ドイツ体操連盟「ドイツ体操連盟(DTB)は、ウクライナでの戦争とロシア軍のウクライナ国内への侵攻を非難する。」
欧州体操連盟「我々は、主権国家に対するいかなる攻撃も非難し、ウクライナ体操界を支援することを目指している。」
リトアニア体操連盟会長「ウクライナの人々は、ヨーロッパと全世界の人々の自由と平和を守っている。」「ウクライナに栄光あれ!!!」
スウェーデン体操連盟「我々は、ロシアやベラルーシの体操選手が彼らの国旗の下で競技を行ってはならないという国際体操連盟の決定を支持します。」
フィンランド体操連盟「ロシアとベラルーシでの競技会の中止を支持する」
遠く離れた地での有事とはいえ、我々にとっても対岸の火事とは言えません。
事を起こした国は我々の隣国でもあります。
一刻も早く事態が治まり、一人の命も無駄に失われることが無いよう祈るのみです。
画像出典
https://youtu.be/ZVDdolmGBqM
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Odessa_oblast%27_field.jpg
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