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2022年4月第一・二週の体操ニュース

体操のニュースだけでなく、国際情勢にも日々目を向けなければならなくなりました。
それにしても、今週はニュースが盛りだくさんです。


▼パリ五輪の日程が公開

2024年パリ五輪の日程が公開されました。
大会は7月26日に開会式~8月11日に閉会式が行われます。
サッカーやラグビーは7月24日から競技が始まります。

体操競技は開会式翌日の7月27日~8月5日まで。
8月2日は体操競技はお休み、トランポリン競技が行われます。

パリ五輪公式サイト:競技日程

セーヌ川で開会式、自転車競技のゴールがシャンゼリゼ通り、ヴェルサイユ宮殿で馬術、タヒチ島でサーフィンが行われるなど、競技会場にも大きな注目が集まるパリ五輪。
体操競技はベルシーアリーナという会場で行われます。

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▼リース・マクレナガンが世界記録を更新

リースが2018年からアンバサダーを務めるアクション・メンタルヘルスという運動の一環で意気込んでいた、あん馬で1分間に40回旋回するという挑戦ですが、このほど挑戦が行われ、世界記録である40回を破ったそうです。

リースの記録は1分間に42回。
僕はてっきりシンプルな旋回を回るものだと思ってたんですが、馬端でロシアン旋回を回る挑戦だったようです。数回落下しながらも1分間回り続けて記録を更新しました。
リンク先には動画もあります。

BBC:リース・マクレナガンがロシアンサークルの世界記録を破る

そもそも40回の記録を持っていたのは誰なんでしょうか。


▼ゾンダーランドがオランダ体操ナショナルトレーニングセンターを開設

ロンドン五輪種目別鉄棒金メダリストであり、東京オリンピックを最後に競技を引退したオランダのゾンダーランドが、オランダのヘーレーフェーンという街にナショナルトレーニングセンターを開設したとのことです。

Leeuwarder Courant:エプケ・ゾンダーランドが新しいジムをオープン トップ体操選手に別れを告げる

当初は2021年11月にオープンする予定だったものがコロナの影響で遅れたそうです。
記事にはゾンダーランドがジュニアの練習を視察する様子も窺えます。

センターの開設に伴い式典が行われ、そこでゾンダーランドの引退式のようなものが行われ、長年鉄棒で競い合ったドイツのハンビュヘンからもメッセージが送られたそう。

ゾンダーランドといえば、体操で金メダリストでありながら医大に通う文武両道っぷりも有名でしたが、現在はスポーツドクターとしてのキャリアを歩み始めています。
記事の文末には、今年の秋にゾンダーランドの伝記が出版されるとの記述もあります。


▼山室光史・田中佑典が所属変更 コナミの所属はは3人に

リオ五輪団体金メダルのメンバーであり、コナミスポーツ所属だった田中佑典・山室光史の2人がそれぞれ所属を移籍することを発表しました。
田中佑典は、兄の和仁さんが立ち上げ、代表を務める田中体操クラブへ。
山室光史は、アテネ五輪団体金メダリストで東京五輪日本代表監督の水鳥寿思さんが代表を務めるMizutori sports clubへ所属になります。

田中佑典⇒田中体操クラブ



山室光史⇒Mizutori sports club


コナミは昨年度に3人が引退。
これに上記2選手の移籍が重なり、現在の所属選手は3人だけになってしまいました。

現在コナミに所属しているのは、
加藤凌平
神本雄也
加藤裕斗 の3人のみ

コナミスポーツ体操競技部

昨年度引退した選手
古谷嘉章
星野力維
横山聖

ちなみに…
2020年度に引退した選手
小山仁寛
白井勝太郎
佐藤匠
鈴木湧

思い返せば、昨年の全日本団体の時点で団体組めるギリギリの人数だったんですね。
今の人数では団体も組めませんし、新入社員も入れていないみたいです。
どうしてこんなことに…。


▼全日本個人総合選手権 班編成が公開

4月21日~24日に行われる全日本体操個人総合選手権の班編成が公開されました。
4月になるとこれを観ながらあの選手の所属が変わってる~とか、あの選手はここに進学したのか~とか見るのが楽しみなのです。

日本体操協会:体操天皇杯 第76回全日本体操個人総合選手権

男子 

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男子種目別トライアウト

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女子

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全日本で引退を発表しているのは
○寺本明日香
○畠田瞳


▼バクーW杯 コフトゥンが平行棒で4大会完全制覇

2月末から行われているW杯シリーズ最後の大会がアゼルバイジャンの首都バクーで行われました。

W杯シリーズはコトブス(ドイツ)、ドーハ(カタール)、カイロ(エジプト)、バクー(アゼルバイジャン)と、ヨーロッパ中東で開催されたため、ヨーロッパからの参加がほとんどでした。

3大会目のカイロW杯が終わった時点で3大会とも種目別平行棒を制覇していたイリア・コフトゥンは、ここでも優勝し、W杯4大会制覇を達成。
同じく種目別跳馬で3大会制覇していたアルメニアのアルトゥール・ダフティアンは最終戦であるバクー大会には出場しませんでした。
これにより、3大会連続跳馬2位だったウクライナのナザール・チェプルニーがやっと優勝することができました。

また、全英選手権で優勝したイギリスのジョー・フレイザーが参加し、種目別平行棒で3位、種目別鉄棒では優勝しています。

【ゆか】アルチョム・ドルゴプヤット(イスラエル)
【あん馬】ナリマン・クルバノフ(カザフスタン)
【つり輪】サルバトーレ・マレスカ(イタリア)
【跳馬】ナザール・チェプルニー(ウクライナ)
【平行棒】イリア・コフトゥン(ウクライナ)
【鉄棒】ジョー・フレイザー(イギリス)

【跳馬】オクサナ・チュソビチナ(ウズベキスタン)
【段違い平行棒】ロレッテ・チャーピー(フランス)
【平均台】サラ・ボシュ(ドイツ)
【ゆか】ジュリア・ソアレス(ブラジル)

詳しい結果はこちら


余談ですが、アルメニア勢はコトブス・ドーハ・カイロとW杯シリーズに毎回出場していたのにバクー大会だけ出なかったのは、アルメニアとアゼルバイジャンという国同士がめちゃくちゃ仲悪いのが理由です。現実、この2国はナゴルノ・カラバフという地域を巡ってちょっと前まで戦争していました。今は一応停戦していますが、この戦争を仲介し、停戦に持ち込んだのがロシアです。
ロシアのウクライナ侵攻により、ナゴルノ・カラバフ地域に駐留していたロシア軍がウクライナに流れた事、また、ウクライナでの戦況を見てロシア軍が思いの外弱いと察したアゼルバイジャン側が停戦合意を破り始め、再び泥沼化しています。
さらにアゼルバイジャン側を支援しているのがトルコです。
アルメニア勢は2020年にトルコで行われたヨーロッパ選手権もボイコットしています。さらに2021年のヨーロッパ選手権でアルトゥール・ダフティアンが表彰台に上った時、アルメニア人虐殺の追悼を意味するパフォーマンスをしたこともありました。アルメニア人虐殺はトルコの前身であるオスマン帝国によるジェノサイドです。
体操界でここまで露骨に政治色を見せるのはアルメニアくらいですね。
隣国ってのは仲が悪いものです。


▼W杯シリーズ総合優勝者が決定

W杯シリーズ4大会が終了し、各種目の総合優勝者が決まりました。
この順位はポイント制で競われ、各大会の順位ごとにポイントが割り当てられ、その上位3得点の合計が総合得点になります。各種目でその総合得点が最も高い選手がW杯総合優勝者となります。
優勝者は以下の通り。

男子
【ゆか】アルチョム・ドルゴピアト(イスラエル)
【あん馬】ナリマン・クルバノフ(カザフスタン)
【つり輪】ヴァハグン・ダフティアン(アルメニア)
【跳馬】アルトゥール・ダフティアン(アルメニア)
【平行棒】イリア・コフトゥン(ウクライナ)
【鉄棒】アレクサンダー・ミヤキニン(イスラエル)

女子
【跳馬】オクサナ・チュソビチナ(ウズベキスタン)
【段違い平行棒】ダニエラ・バトロナ(ウクライナ)
【平均台】ダニエラ・バトロナ(ウクライナ)
【ゆか】ドリナ・ボツォゴ(ハンガリー)

アルメニアのダフティアン兄弟がそれぞれ優勝。バトロナは2冠に輝きました。
コフトゥンは文句なしの優勝です。

詳しい結果はこちらから⇒ 男子 女子

W杯4大会の各種目トップ3
(※名前の表記は調べたうえで書いていますが、正確なものとは異なるかもしれません。)

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▼W杯シリーズを終えたウクライナ選手団がイタリアへ到着

W杯を終えたウクライナ選手団がイタリアに到着し、しばらくはイタリアを拠点にトレーニングするそうです。

イタリア体操協会:ウクライナの選手団はフェラーラとリッチョーネに拠点を置く

イタリアに到着したウクライナ選手団は「フェラーラ」と「リッチョーネ」に分かれてそれぞれ滞在するそう。
「フェラーラ」とは、コフトゥンが所属するイタリア国内リーグのクラブの名前。
ダニエラ・バトロナとバトロナのコーチの2人は同じくイタリアのクラブである「リッチョーネ」に合流するということです。

ウクライナでは18歳~60歳の男性に対し出国禁止令が出ています。
しかし、イリア・コフトゥン、ロマン・バスチェンコ、ナザール・チェプルニーの3人は2月24日から始まるコトブスW杯に出場するため既に出国していました。
そして、コトブスW杯初日の予選の日にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、この大統領令が出された時には3人はドイツにいたことで、大統領令を免れた形になります。
そして当初残りのW杯3大会に出場予定だったウクライナの選手に代わり、この3人でW杯4大会を渡り歩きました。


▼シン・ジェファンがアジア大会代表選考を棄権

東京五輪種目別跳馬で金メダルを獲得した韓国のシン・ジェファンが、去年の12月に酩酊状態でタクシー運転手に暴行したとして略式起訴されていたそうです。
これ自体初耳だったのですが、この事があったにもかかわらずアジア大会の代表選考会にエントリーしていたとして物議を醸していたそうです。
結局この選考会のエントリーを棄却したという旨の記事。

聯合ニュース:タクシー運転手暴行のシン・ジェファン、杭州アジア大会予選を棄権

なぜかyahooニュースにもなってます。
「東京五輪」体操・跳馬の金メダリスト、杭州アジア大会選考会を棄権

ついでに探してみたらこんな記事あったんですね。
全然気づきませんでした。
韓国スポーツ界に衝撃! 男子体操の東京五輪金メダリストが泥酔→タクシー運転手への暴行容疑で立件へ

シンはなぜかよく日本のネットニュースに出てきます。金メダリストだから記事にしやすいんでしょうか。
これは良い話。
東京五輪の体操男子金メダリスト・申在煥が褒賞金で借金を清算


▼オレグ・ベルニャエフが軍に入隊

リオ五輪個人総合銀メダリストで種目別平行棒金メダリスト、ウクライナのオレグ・ベルニャエフが自国の軍に入隊したと現地メディアが伝えています。

UNIAN:ベルニャエフがウクライナ軍に入隊

自身のInstagramのストーリーに軍服姿の写真を公開していましたが、どうやら本当に軍に入隊したそうです。
ウクライナではこれまでにも著名なスポーツ選手が入隊しています。
五輪金メダリストのボクシング選手ワシル・ロマチェンコ。
同じく五輪金メダリストでボクシング選手のオレクサンドル・ウシュクなど。
ベルニャエフと同じく体操選手であり、2019年のジュニア世界選手権に出場していたヴォロディミール・コスティウクも入隊したとの情報もあります。

3月の引退イベントを前に会見に臨んだ内村航平さんはウクライナの状況について質問された際に「オレグがどうしているのか心配」と言っていました。
内村さんとベルニャエフはリオ五輪個人総合で金メダルを争い、0.099点差という名勝負を繰り広げました。

スポーツ選手が今回の戦争で戦死する事例が相次いでいます。
ロシアによる侵攻が始まってから入隊した俳優さんが既に戦死してしまった例もあります。
軍に入隊はしていませんが、サッカー選手が遺体で見つかったという報道もあります。

誰が犠牲になってもおかしくない状況です。
どうか無事でいてほしいと願うばかりです。


▼ロシアが独自の国際大会を検討

体操競技において国際大会から完全排除されているロシアが、7月に8カ国が参加する国際大会の開催を計画しているそうです。

タス通信:カルーガで8カ国参加の大会開催を検討

タス通信の記事で明らかになっている参加国は中国、トルコ、イスラエル、そして韓国です。ほかに参加が予想されるのは旧ソ連のベラルーシやカザフスタン,、アルメニアなどでしょうか。
親ロシアの国が並ぶ中にいわゆる”西側”の韓国が入っていることが波紋を呼ぶのではとする記事もあります。

東スポ:ロシアが今夏に独自の国際大会を開催へ 西側から韓国も

同じく国際大会から排除されているベラルーシが4月6日から始まっているロシア選手権への参加を申し出ているとの情報もありましたが、ロシア側が「時間が足りない」という事でこの提案はなくなりました。

ちなみにリオ五輪団体銀メダルメンバーのストレトビッチはロシア選手権を欠場するそうです。


もう聞いて呆れますが、ロディオネンコ氏やネモフ氏の話聞いたら要するに、強いロシア様と仲の良い国集まって仲良くやろうぜ、ロシアいないとおもしろくないだろ?ってことですよね。

ドーハW杯にロシア選手が参加したとき、ウクライナの選手団が「政治的行為で挑発してきた」として胸にZの紋章を付けて反発しました。Z事件が世界で報道され、その真意を聞かれたロディオネンコ氏やロシア選手団はウクライナ選手団に対して「スポーツに政治を持ち込むべきではない」と言っていました。
この大会開催こそスポーツ外交そのものであり、スポーツの政治利用ではないのでしょうか。自分の国が今何をしていて、自分たちが何をしているのかわかって言っているんでしょうか。

国際大会からロシアが排除されたことに対してこの人たちは「この戦争に選手は関係ない」とか言いますけど、国際社会による制裁の対象は"ロシア人"ではなく"ロシア"なんですよ。あなたたちも選手たちも"ロシア"を構成する要素のひとつなんですよ。この人たちはそれをわかってない。




画像出典
https://www.paris.fr/pages/pour-paris-2024-l-accor-arena-prend-le-rebond-20428
https://youtu.be/BTx2Oit7nOs
https://www.independent.ie/sport/other-sports/rhys-mcclenaghan-makes-irish-sporting-history-with-bronze-medal-in-world-gymnastics-final-38587895.html
https://www.epkezonderland.com/epke/
https://hochi.news/articles/20220111-OHT1T51198.html?mode=photo&photoid=1
https://news.yahoo.co.jp/articles/72d80bd839863c8727dbad458207468beaeee849/images/000
https://www.instagram.com/verniaiev13/
https://www.insidethegames.biz/articles/1120122/kovtun-gymnastics-world-cup-in-doha



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