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2023年10月11月の体操ニュース

どういうわけか半年ぶりの更新となってしまいました。
僕が更新を怠っている間に世界選手権が終わり、体操界は既にオフシーズン。
久しぶりの体操ニュースですが、今回は世界選手権以降の出来事をまとめました。


▼世界選手権が終了 橋本大輝が3冠

9月30日から10月8日にかけて、ベルギーのアントワープにて世界選手権が開催されました。
日本代表は、
【男子】橋本大輝/萱和磨/千葉健太/南一輝/杉本海誉斗(三輪哲平に代わり出場)
【女子】宮田笙子/岸里奈/深沢こころ/芦川うらら/畠田千愛(渡部葉月に代わり出場)

男子は悲願だった団体金メダルを獲得!
個人競技では橋本大輝が個人総合で金メダル。
種目別では、ゆかで南一輝が銀メダル、平行棒で杉本海誉斗が銅メダル、鉄棒では橋本大輝が金メダルをそれぞれ獲得。
女子はメダル獲得はならなかったものの、目標としていた団体でのパリ五輪出場権を獲得しました。

結果はFIG(国際体操連盟)のHPで確認できます。
より詳細なデータはFIG公式サイトの「RESULTS」ページから「52nd FIG Artistic Gymnastics World Championships」の横にあるPDFファイルのアイコン(トロフィーアイコンの左横)をクリックすると見られます。

フィルターを駆使すれば見つけやすいです

主な結果
【男子】

【女子】

今回世界選手権が開催されたアントワープという地は、10年前の2013年にも開催地となった場所。その10年前の世界選手権でデビューを飾ったのがアメリカのシモーネ・バイルズでした。
東京五輪でメンタルの不調を訴えてから2年ぶりの世界大会復帰戦でもあり、彼女にとっては何重の意味で「帰ってこれた」大会となりました。
10年前の同大会でも個人総合と種目別ゆかのチャンピオンとなり、10年経った今大会では団体・個人合わせて4冠を達成しています。

FIGは大会総括の記事を投稿しています。
FIG:世界の体操選手が歴史をつくり、アントワープで輝いた

日本男子の団体金メダルは2015年以来8年ぶり。アメリカ男子の団体メダル獲得は2014年以来9年ぶり。アメリカ女子は団体7連覇。ブラジル女子は南米初の団体メダル獲得。フランス女子は73年ぶりの団体メダルとなりました。
橋本大輝選手は個人総合で内村航平さん以来となる連覇達成。バイルズ選手は内村航平選手に並ぶ6度目の個人総合優勝。
種目別では、ドルゴピアトがイスラエル勢初の金メダル。ネモールはアフリカ初のメダル。マクレナガンは連覇達成。劉洋は9年ぶりの金メダル。
記録づくめの大会となりました。

▼パリ五輪出場権の行方

この世界選手権は、来年2024年に開催されるパリオリンピックの予選でもありました。
先に少し触れましたが、メダルはもちろんの事、パリ五輪の出場権を獲得を目標とする選手が大半でした。
日本女子団体もそのうちのひとつだったわけです。

FIGの記事でもこの世界選手権でパリ五輪の出場権を得た国・選手たちを取り上げています。
FIG:男子9カ国がパリへの団体出場権を獲得
FIG:注目の嵐の中でも穏やかに、バイルズはさらに2つの金メダルへと順調に航海する

パリ五輪の出場権を獲得できる枠組みと条件というのが以下の通り。

原本はこちらで確認できます。
FIG公式サイト⇒RULES⇒Olympic Games⇒「1.1 - Olympic Qualification System Paris 2024 ART」からPDFが見られます。

これらの基準については体操協会が分かりやすく図式化しています。
(一部解釈違いあり。)
日本体操協会:体操競技・新体操・トランポリン出場権獲得基準(まとめ)

今回の世界選手権では、基準2 3 4 5 (開催国枠)が一挙決まりました。

既に昨年2022年の世界選手権で基準1の団体で出場できる3カ国が男女それぞれ決まっています。男子は、中国日本イギリス。女子は、アメリカイギリスカナダ。この枠で出場する各国5人の選手は各国が自由に決められます。

FIG公式サイト GAMES OF THE XXXIII OLYMPIAD PARIS (FRA)⇒「02_GAR List of WAG Qualifiers after WCH 2023_08.10.2023」「03_GAR List of MAG Qualifiers after WCH 2023_08.10.2023」より

これにより、基準2の、基準1の出場権獲得国を除く、2023年世界選手権予選上位9カ国が決まります。
男子は、アメリカカナダドイツイタリアスイススペイントルコオランダウクライナ
女子は、中国ブラジルイタリアオランダフランス日本オーストラリアルーマニア韓国 となりました。
この枠で出場する各国5人の選手は各国が自由に決められます。
実質2023年世界選手権の団体予選上位12カ国がパリ五輪への団体出場枠を獲得したことになります。

FIG公式サイト GAMES OF THE XXXIII OLYMPIAD PARIS (FRA)⇒「02_GAR List of WAG Qualifiers after WCH 2023_08.10.2023」「03_GAR List of MAG Qualifiers after WCH 2023_08.10.2023」より

また、基準3の、基準1・2の出場権獲得国を除く、2023年世界選手権団体予選上位3カ国は…
男子は、ブラジル韓国ベルギー。女子は、ドイツメキシコハンガリー
この基準では国に資格が与えられていますが、団体ではなく個人としての出場枠になります。この枠で出場できる1人の選手は各国が自由に選べます。

FIG公式サイト GAMES OF THE XXXIII OLYMPIAD PARIS (FRA)⇒「02_GAR List of WAG Qualifiers after WCH 2023_08.10.2023」「03_GAR List of MAG Qualifiers after WCH 2023_08.10.2023」より

基準4の、基準1・2の出場権獲得国を除く、2023年世界選手権個人総合予選上位8人(男子)/上位14人(女子) (個人)は以下の通り。
(ただし1カ国1人まで)
この基準では、選手個人に出場枠が与えられます。つまり、ここに記載のある選手たちはパリ五輪への出場が決まっていることになります。

FIG公式サイト GAMES OF THE XXXIII OLYMPIAD PARIS (FRA)⇒「02_GAR List of WAG Qualifiers after WCH 2023_08.10.2023」「03_GAR List of MAG Qualifiers after WCH 2023_08.10.2023」より

ここに記載がある選手のうち、基準3で1枠を獲得した国の選手も含まれています。その場合、個人で権利を獲得した選手以外にもう1人出場する選手を選べることになります。
つまり、ここまでで基準3で権利を得ている男女各3カ国は出場枠を2枠獲得していることになります。

基準5の、基準1・2の出場権獲得国を除く、2023年世界選手権各種目別最上位者(個人)は以下の通り。
この基準でも、選手個人に出場枠が与えられるため、ここに記載のある選手たちはパリ五輪への出場が決まっていることになります。

FIG公式サイト GAMES OF THE XXXIII OLYMPIAD PARIS (FRA)⇒「02_GAR List of WAG Qualifiers after WCH 2023_08.10.2023」「03_GAR List of MAG Qualifiers after WCH 2023_08.10.2023」より

また基準とは別に「開催国枠」が1枠設けられています。
もしも開催国、今回の場合はフランスの選手がどの基準も満たせなかった場合にフランスの選手がこの枠で出場できます。
男子は現状フランスの選手はどの基準も満たしていないので空席のままですが、女子は団体での出場権を決めているので、この枠は基準4の次点の選手が割り当てられます。
この枠も女子は選手個人に権利が与えられましたが、
仮にフランスがこの枠を使うことになった場合は国に枠が与えられ、基準3と同様に、出場する選手はフランスが自由に選ぶことが出来ます。

FIG公式サイト GAMES OF THE XXXIII OLYMPIAD PARIS (FRA)⇒「02_GAR List of WAG Qualifiers after WCH 2023_08.10.2023」「03_GAR List of MAG Qualifiers after WCH 2023_08.10.2023」より

世界選手権終了時点で確定したパリ五輪出場枠は以下のようになりました。

【男子】

FIG公式サイト GAMES OF THE XXXIII OLYMPIAD PARIS (FRA)⇒「03_GAR List of MAG Qualifiers after WCH 2023_08.10.2023」より

【女子】

FIG公式サイト GAMES OF THE XXXIII OLYMPIAD PARIS (FRA)⇒「02_GAR List of WAG Qualifiers after WCH 2023_08.10.2023」より

男女各96ある枠の内、この大会だけで8割ほどが埋まりました。
これから2024年に行われる各種国際大会で空いている枠が埋まり、各国の国内大会で団体メンバーが決まっていきます。


▼男子5技、女子5技が新技認定(FIG)

FIGの技術委員がこのほど、男子5技、女子5技をそれぞれ新技として認定したと報告しています。

FIG:男子採点規則に新技が追加!
FIG:女子採点規則に新技が追加!

男子の方は、日本の南一輝選手が3月のワールドカップ・ドーハ大会で披露した、「後方抱え込み2回宙返り3回半ひねり」が「ミナミ」と名付けられたことも正式に発表されました。
以下、今回新技認定された技です。

【男子】
▶ミナミ(後方抱え込み2回宙返り3回ひねり)
ゆか/H難度
発表者:南一輝(日本)
実施した大会:W杯ドーハ大会

▶リード(馬端から馬端まで縦向き後ろとび移動)
あん馬/E難度
発表者:マイケル・リード(ジャマイカ)
実施した大会:パンアメリカン選手権

▶ゾウ2(十字倒立からゆっくりおろして逆懸垂経過伸腕伸身逆上がり上水平支持)
つり輪/E難度
発表者:鄒敬園(中国)
実施した大会:ユニバーシアード

▶ジャーマン(後方伸身2回宙返り3回半ひねり)
ゆか/I難度
発表者:ジェイク・ジャーマン(イギリス)
実施した大会:W杯パリ大会

▶ベルバルデ(バーを越えながら後方伸身2回宙返り2回ひねりおり)
鉄棒/E難度
発表者:アンドレス・ベルバルデ(コスタリカ)
実施した大会:パンアメリカン選手権


【女子】
▶バイルズ2(ロンダート後転とび~後方屈身2回宙返り)
跳馬//D6.4
発表者:シモーネ・バイルズ(アメリカ)
実施した大会:世界選手権

▶ゴッドウィン(前方浮き支持回転倒立1回ひねり)
段違い平行棒/E難度
発表者:ジョルジア・ゴッドウィン(オーストラリア)
実施した大会:W杯テルアビブ大会

▶ネモール(閉脚シュタルダー~伸身トカチェフ~高棒懸垂)
段違い平行棒/G難度
発表者:カイリア・ネモール(アルジェリア)
実施した試合:アフリカ選手権

▶モルツ(屈身とび1回ひねり正面支持臥)
ゆか/C難度
発表者:アリッサ・モルツ(オーストリア)
実施した試合:ヨーロッパ選手権

▶はさみとび
ゆか/A難度
発表者:アナ・バルボス(ルーマニア)
実施した試合:ヨーロッパ選手権


男子はB難度以上、女子はC難度以上の技でないと名前がつかないという決まりがあるそうで、今回アナ・バルボスの発表したはさみとびはA難度の価値は認められたものの、技に名前が付くことはありません。

バイルズと名前が付いた技は5つ目。
過去には、跳馬のロンダートひねり前転とび前方伸身宙返り2回ひねり、平均台の後方抱え込み2回宙返り2回ひねりおり、ゆかの後方伸身2回宙返りひねり後方抱え込み2回宙返り3回ひねりを発表しています。どれも異次元の技ばかりです。


▼パンアメリカン選手権

10月21日~25日にかけて、チリのサンティアゴでパンアメリカン選手権が開催されました。

大会公式サイト:結果
(個人総合決勝の結果はPDFから確認できます)

南北アメリカ大陸の国が一堂に会する総合スポーツ大会。
世界選手権と日程が近かったにもかかわらず、カナダ、ブラジルの男子は世界選手権と同じメンバーを派遣。この2国は女子も主力は世界選手権から連戦でした。アメリカは世界選手権代表メンバーは男子補欠だったコルト・ウォーカーのみ。
体操競技は男女とも団体・個人総合・種目別が行われ、1軍ではないアメリカが団体でアベック優勝と強さを見せました。

【男子】

【女子】

男子個人総合はアメリカ勢を抑えてカナダのフェリックス・ドルチが制覇。
カナダの選手が個人総合を制すのは60年ぶりとのこと。

また、この大会は、パリ五輪の出場権獲得基準7、大陸枠の対象大会でもありました。基準1・2 で権利を得た国(基準3・4・5・6で個人3枠を獲得している国)、また、基準4・5・6で既に権を得ている選手を除く個人総合決勝で最上位になった選手男女各1人にパリ五輪出場権が与えられます。

この基準で権利を得たのは…
男子個人総合最上位者、ドミニカ共和国のオードリーズ・ニン・レイエス。
女子個人総合最上位者、コロンビアのルイサ・ブランコ。

大陸枠はアジア・ヨーロッパ・アメリカ・アフリカ・オセアニアにそれぞれ各1枠ずつ、男女各5枠、計10枠が与えられています。
今回アメリカ大陸の男女1枠が決まったので残り8枠になりました。


▼全日本団体選手権 男子徳洲会、女子鯖江高校がともに連覇

11月26日、三重県四日市市にて全日本団体選手権が行われました。
昨年の福井県鯖江市に続く地方開催です。

体操協会:第77回全日本体操団体選手権

今大会は、CBCが男女1班2班ともライブ配信(アーカイブも残っています)をするといった施しよう。解説はおなじみ鹿島丈博さんと寺本明日香さん。
この会場は、三重県で行われるはずだった国民体育大会の体操競技のためにつくられた会場でしたが、コロナの影響で大会が中止になってしまい、使用されないままでした。それを今回、全日本団体の会場として使用したというわけです。
三重県はもともと社会人チーム相好体操クラブの拠点であり、クラブは県内に多数展開していて競技人口も多い県。今後体操競技の会場として広く使われるといいですね。

競技結果は下記より。
男子結果女子結果
個人のスコアも確認できます。(Dスコア・Eスコアは記載なし)

男子は徳洲会体操クラブが圧勝。層の厚さとミスなく演技を繋いだことが決め手となりました。
女子は鯖江高校が優勝。インターハイ、国体、全日本シニアの優勝に続き、その強さを顕示しました。

徳洲会は出場した選手の全演技をyoutubeにアップしています.。
大きい大会がある度に動画をアップしてくれてありがたい限りです。

また、男子4位に入ったジュンスポーツ北海道も動画をあげてくれています。
下記ページのぞれぞれの選手の得点の右にあるDETAILをクリックすると演技の動画が見られます。


こちらはCBCが、地元にある相好体操クラブに所属する岡村真(まな)選手を特集した記事。
岡村真選手は10月に行われたアジア大会の種目別平均台で金メダルを獲得しています。
CBC:アジア大会の種目別平均台で金メダル獲得の岡村真選手(18) 足の冷えを防ぐ愛用品は“ペンギンスリッパ”


▼橋本大輝・土井陵輔がセントラルスポーツに内定

全日本団体選手権で3位に入ったセントラルスポーツが、この程、ニュースリリースとして来年4月に橋本大輝選手と土井陵輔選手が入社することを報告しています。

セントラルスポーツ:橋本大輝選手、セントラルスポーツ体操競技部への新加入内定のお知らせ

セントラルスポーツ:土井陵輔選手、セントラルスポーツ体操競技部への新加入内定のお知らせ

所属選手は少ないながらも、オリンピック・世界選手権代表を毎年排出する強豪クラブに現役の世界チャンピオンと世界選手権メダリストが加入。
昨年新加入した三輪哲平選手含め、セントラルスポーツのこれからが楽しみです。

東スポweb:セントラルスポーツ入社予定の橋本大輝 パリ五輪での3冠誓う「挑戦したい」

西スポweb:男子体操のホープ土井陵輔「同じチームで切磋琢磨できるのは心強い」


画像出典
https://www.instagram.com/p/CyJNno_Mb8n/?utm_source=ig_web_copy_link&igshid=ODhhZWM5NmIwOQ==

https://www.instagram.com/p/Cx-kdI9Iy4S/?utm_source=ig_web_copy_link&igshid=ODhhZWM5NmIwOQ==

https://www.instagram.com/p/Cx80y-kMNFg/?utm_source=ig_web_copy_link&igshid=ODhhZWM5NmIwOQ==

https://www.panamsports.org/en/news-sport/felix-dolci-wins-gold-and-audrys-nin-reyes-qualifies-for-paris-2024/

https://youtu.be/uIWGg-8cUx8?si=b7hqI1vzcMpP9q7u

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