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リスクアプローチで監査リスクを抑え、内部監査の付加価値を最大化する


はじめに:内部監査の役割に対する誤解

内部監査の仕事は、「ルール通りに業務が行われているかを単にチェックするだけ…」、このように思っていたことはありませんか?
実際、私も内部監査部門に配属されるまでは、そのように考えていました。

しかし、リスクアプローチ監査の手法を知ったことで、内部監査に対する見方が180度変わりました。もしかしたら、読者の皆さんも同じような経験があるかもしれません。

今回は、このリスクアプローチ監査がどのように業務の付加価値を高めるのか、具体例を交えて解説します。



1.リスクアプローチ監査とは?


内部監査部門では、確かに「ルール通りに業務が行われているか」をチェックしています。しかし、先進的な内部監査部門では、それだけに留まりません。
監査対象部門の業務が直面する主要なリスクに目を向け、リスクが適切に管理されているかどうかも評価します。

この手法は「リスクアプローチ監査」と呼ばれています。
なお、実務においては「リスクベース監査(※1)」と同義で説明されることもありますが、ここでは区別して説明します。

(※1)リスクベース監査:
高リスク領域を優先的に監査し、リソースを効率的に配分する手法。

「リスクアプローチ監査」とは、単にルールや手続きの遵守状況をチェックするだけでなく、業務が直面する主要なリスクを識別し、それらが適切に評価され、対応されているかを監査する手法です。


2.監査リスクとは?

「監査リスク」とは、監査人がリスクを見落とし、誤った監査意見を表明してしまうリスクを指します。通常、外部監査で使われる用語ですが、内部監査においても同様のリスクがあります。

例えば、内部監査報告書上で内部統制は「有効」と結論付けたが、実際には「非有効」だった場合などです。

リスクアプローチ監査を導入しなければ、このような監査リスクが高まることは避けられません。


3.【事例】新しい市場への参入に対する監査 

例えば、ある企業の販売部門が新しい市場に参入しようとしているとしましょう。通常の準拠性監査では、既存の内部統制に基づいて、「市場参入の事前の手続きが定められたルール通りに行われているか」をチェックします。一方で、リスクアプローチ監査では以下の点も考慮します。

  • 主要なリスクの識別:新市場への参入時に直面するリスクは何か?

  • リスク評価の適切性:それらのリスクはどのように評価されているか?

  • リスク対応の適切性:それらのリスクに対してどのような対応が取られているか?(回避、移転、受容、低減)

このようなアプローチによって、リスクの適切な管理ができているかを評価し、必要な場合には改善提案を行うことが可能になります。


4.リスクアプローチ監査の導入のすすめ


皆さんの職場では、リスクアプローチ監査は導入されていますか?
もし未だ導入されていない場合には、まずはリスクを洗い出した上でリスク評価を実施し、その結果に基づいて監査手続を再構築することを提案します:

 1) リスクの洗い出し
    2) リスク評価の実施
    3) 評価結果に基づく監査手続の再構築


5.リスクアプローチ監査の付加価値


リスクアプローチ監査を実施することで、内部監査部門は業務に潜むリスクに対する洞察を提供し、リスク管理の質を向上させることができます。

この手法は、既存のルール遵守の確認を超えて経営者に対する信頼を獲得し、内部監査部門の影響力を強化します。


さいごに:信頼と影響力を高める内部監査


リスクアプローチ監査は、内部監査の付加価値を最大化する強力な手法です。このアプローチを通じて、内部監査部門は業務リスクへの深い洞察を提供し、経営者にとって、より信頼されるパートナーになることが可能です。

今後も、企業・組織にとっての価値を提供できる内部監査の実現を一緒に目指していきましょう。

【おまけ】自己評価チェックリスト

上記コンテンツの「振り返り」と「実務に役立てるポイント(Takeaway)」として、以下をご活用ください。

[ ] 自社が直面している主要なリスクを3つ以上列挙できる
[ ] リスクアプローチ監査の基本的な手順を説明できる
[ ] 自部門の内部監査計画はリスク評価の結果が反映されている
[ ] 経営者と主要なリスクについての対話を定期的に行っている
[ ] 内部監査報告書にはリスク視点からの分析や提言が含まれている



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