見出し画像

TRPG制作日記(110) 未来社会5

私たちは貧困と格差の問題を似たものだと考えがちですが、たとえば生活報償をなくして貧困層が子どもを育てることができなくしたり、また貧困層が医療を受けることができなくするだけで貧しい人は減り、そして格差の問題も落ち着いていくことから、そもそも格差のない社会と貧困のない社会はそれぞれ目指す社会が異なることは明らかです。

『太陽神の巫女-AmaterasuCard-』に登場する八惑星連邦は、二十一世紀末に誕生した八つの惑星を支配する宇宙都市国家です。この国では能力に応じて働き必要に応じて受け取る社会を実現することで、貧困は根絶されていますが格差は残っています。

同じ格差社会である現代資本主義社会と八惑星連邦ですが、今日はこの二国の違いについて書いていきます。


(1)技術者や肉体労働者は尊敬されている。

八惑星連邦において、技術者や肉体労働者は尊敬されています。それは八惑星連邦が特殊な思想を教育しているからではなくて、たとえば飲食店で料理や給仕をしている人たちは自分達の仕事に熟達化していますし、ロボットたちと宇宙都市の保守管理をしている労働者たちは、宇宙物理学などの基本的な知識があるためその賢さが敬意の対象になっています。

何かができることそのものに敬意が払われます。人々が能力と、その能力を習得するのに費やした努力に敬意を払うのは不思議ではありません。

八惑星連邦では能力の高い人間は尊敬されるのです。


能力が高い人間が尊敬されるのであれば、それは資本主義と同じではないかと思う人もいるかもしれません。

しかし、もしあなたが資本主義が能力の高い人を尊重する社会だと思っているのであれば、残念なことに資本主義について何も理解していないと判断せざるえません。

資本主義が称えるのは能力ではなくて地位と権利です。

資本主義は基本的には管理職と労働者に分かれます。そして、資本主義で尊敬されるのは管理職であり労働者ではありません。

この精神労働と肉体労働の分離が資本主義の定義そのものであり、そして能力の高い人が管理職になると宣伝されているので、特定の技術を持つ人は軽蔑されて貧困になります。

技術や知識よりも、人を管理する能力が能力として認められるので資本主義と呼ばれるのです。

そして、資本主義社会では、技術者や肉体労働者など管理職を目指さないことは意識が低いと判断されて軽蔑の対象になります。学校の教師たちは飲食店の店員になりたいと生徒たちが口にすることを許さないでしょう。

資本主義とは他人の努力を搾取することにより豊かになる人だけが権力を握ることを目指しているのです。


(2)排他的な社会だが差別がない。

八惑星連邦の人々は排他的です。高校生たちも自分と同じ嗜好を持つ生徒たちとサロンを形成しています。

この社会ではたくさんの人たちと友だちであること、できるだけ多くの人と知り合いであることよりも、生涯の友、生涯の伴侶、少数の本当に親しい人間関係が歓迎されます。

誰とでも仲良くできる人が称えられることはありません。営業が得意な人材を育てる意識が低いからです。

そのため富裕層と庶民のあいだで交流は乏しく、同じ宗教や文化の人々が固まって暮らしています。


とはいえ、現代社会で問題になっているような差別はありません。

差別とは精神労働と肉体労働が分離されており、そして精神労働が富を握りマイノリティが精神労働から排除されている現象です。

もし管理職がすべて白人男性が支配している社会があれば、そして管理職と労働者の経済格差が圧倒的であれば、それは差別社会です。差別社会とは一部の人が富を独占していて、他の人々を豊かな社会から排除していることが条件です。


八惑星連邦は一部の人たちが富を独占しているかもしれませんが、八惑星連邦の富は多くの人に開けています。

八惑星連邦に貧困層はありません。

なぜなら、人工知能たちがすべての人々の生活を保障しており、しかも最低生活保障の最低が非常に高いところにあるからです。

そのため、誰もが自分達の小さな世界で楽しく生きています。


(3)貧困という恐怖による支配がない。

資本主義を特徴付けるのは失業と貧困です。資本主義というのは小学校の掃除当番を特定の立場が弱い子どもたちに押しつけることに似ています。

資本主義を成り立たせるためには、家を建てたり、工場で働いたり、プログラミングをしたり介護をしたり飲食店で給仕をしたりする人たちが必ず必要になります。

そして、これらの仕事をするためには勉強と訓練が必要で、しかも能力を高めれば高めるほど困難な仕事を与えられます。

そうなると、誰も技術者や肉体労働者になろうと思いません。

しかし、管理職を一部の階級が独占して、そして技術者と肉体労働者を常に貧困状態においておけば被差別階級は喜んで働くようになります。失業者を見下すようになるからです。

遊んでいる子ども、掃除をする子ども、そしていじめられている子どもの三つの層があれば、掃除をする子どもは労働意欲を失わないし、また遊んでいる子どもを尊敬するようになります。

もちろん、いじめるのは掃除をする子どもです。遊んでいる子どもは特定の人々をいじめるべき人たちだとラベル付けするだけで、いじめすら行おうとはしません。


八惑星連邦は人工知能とロボットが発展しており、彼らの労働に人間が加わるような社会です。

そこでは人々は失業と貧困が怖いからではなくて、ただ異性や友人、家族に自分の魅力をアピールするために働きます。

そこにあるのは失業と貧困への恐怖ではなく、誰にも何も誇るものがないという恐怖です。何も続けてこなかったという恐怖です。



今日は以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?