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『基準はどこにあるのか?』障害者グループホーム入居をめぐるすれ違い【40歳知的障害女性】
※事例に関しては個人が特定されないよう一部脚色して作成しております
障害者福祉関係のアドバイザーとして問い合わせを受ける中で、圧倒的にグループホーム設立に関するご相談が多い。自分自身キャリアの中では最も時間を割いてきた分野でもあり、ありがたいことではあるが、多い分だけそれぞれの相談が良くも悪くもバラエティに富んでいることが実感できる。
こういう立場で仕事をしている以上、「障害者グループホームでビジネスを始めませんか?」という広告もやたらと目にする。それぞれの運営会社がそれぞれの思惑を胸に様々な手法・口述で障害者ビジネスに参入を試みている。10年前は考えられなかったことかもしれない。
繰り返すが「良くも悪くも」ある。
生意気なことを申し上げるならば、やはり「質」の問題だ。私自身決して質の高い支援をしてきたと自信持って言い切れない。それは私の支援を受けてきたクライエントそれぞれが判断することだ。
しかし、この障害者ビジネスの宣伝の類に「経験不要・誰でもできる」「圧倒的に不足しているので営業は不要」「何もしなくても利益を得られる」等のうたい文句がはびこるのはどうも違和感を感じる。障害者グループホームは、人気のある地域では「設立過多」の状態である。なぜ人気があるかと言うと、「家賃(土地)が安い」これが大きい。グループホーム運営で家賃の固定出費のウエイトがかなり大きいためだ。
初期投資を抑えることはビジネスの基本ではあるが、そもそもが市場調査をしているのかどうかと言う点で言えば、個人的には不信感を覚える。設立過多の地域では「入居者の取り合い」「職員の取り合い」状態が続いている。空き室リスクや職員不足を常に抱えながらぎりぎりの運営をしているところが多い。このあたりを直視する必要が多分にあると思う。
ただ、人気のある地域と言うのは家賃だけでなく「福祉に力を入れている」というポジティブな理由もある。就労継続B型事業所などの福祉資源が多い地域も人気だ。人気があるというのは言い換えれば競合も多いということ。競争相手の多い地域に戦いを挑むのであればどうすればよいのか?
私はグループホーム運営のアドバイスで必ず伝えることは「グループホームのコンセプトを決めること」。グループホームの強みを明確に決めること。わかりやすく言うと「このグループホームは●●のような人に向いています。●●に力を入れています」というような、「グループホームのキャラクター」を決めること。ただ「グループホーム作りました。皆さん入居してください」では、他のグループホームとの違いが伝わらず(そもそもないのかもしれないが)、選ぶほうはより自分に合ったカラーのあるホームにときめきを感じる。
このコンセプトと言うのは、何も「軽度向け」「重度向け」「ADHD向け」のような障害特性に限ったことではない。「みんな元気で明るいホーム」でもありだし「郊外の静かな地域でのんびり過ごしましょう」でもあり。おのずと入居者のカラーも定まってくる。これは、入居者が自分に合ったコンセプトを持つホームに入ることで、自分のペースで生活できることにつながる(そのため、入居後の安定を図ることができる)。
もちろん働く側にとっても「自分が勤めるホームは●●なホーム」と言う意識で業務に取り組めるので、思いを整理しやすいはず。
グループホームの運営を円滑に進めていく以上、このコンセプトに沿って地道に営業活動を続けることが大切。決して「座して入居者を待つ」状態ではうまくいくことはない。
※ちなみに、誤解しないでいただきたいのは「入居者を選別する」ということではない。そのカラー・キャラクターと言うのは、「入居者が自分に合ったホームを決めるため」のイメージ画像である。
かといって福祉の精神だけでは当然運営自体が立ち行かなくなる。これからの福祉ビジネスを考えるうえで、「経営の精神」と「福祉の精神」両立できる、そんな存在が育っていくことを願ってやまない。もちろん私も努力しなければ。
十年ほど前の話になるが、とあるグループホームに一人の入居希望者が紹介された。40代の知的障害女性。おおむねADLも成り立ち、コミュニケーションも円滑なことから、紹介元では「手放すのは寂しいけど地域で頑張ってほしい」と送り出される予定だった。
ところが、体験入居後、その入居予定のグループホームの職員よりNGが出される。理由はほんの些細なことだった。
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