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小6男子のフォートナイトを観て学んだこと

まえがき

この記事は「子供から学ぶ Advent Calendar 2021」の11日目の記事です。
いやはや、今年のこのテーマ設定自体が深い、深すぎる。さすがは子供とネットを考える会さん。毎年のことですが、楽しく読めるのに、他にはない視点からの良記事が多数並んでいるので、拙稿にお目通しをいただいた後はぜひリンク先にも。

なお、この記事の背景としては「観察対象はうちの子(小6男子)とその周辺のお友だちのみ(フォートナイトを本格的にプレイし始めたのは今年の8月末:チャプター2のシーズン7)」「ゲーム機(Switch)は家の外に持ち出さない」「リビングルームで43インチディスプレイにつないでプレイする」「プレイ時間帯は18時半まで(そしてわたくし最近在宅勤務気味なので、だいたいそのへんに居る)」といった前提条件や、機器利用上のローカルルールがございますことを初めにお伝えしておきます。
そんな名前初めて聞いたよ!という方向けに、フォートナイト運営の公式ページはこちら

フォートナイトは小学生の外遊びを模したメタバースだ(言ってみたかっただけ)

フォートナイト≒メタバースという解釈は、既にあちこちで指摘されているようで、こんな記事やらこんな記事がすぐに見つかります。でも、正面から読みに行くと、満たすべき定義とかが多くて、なんだか難しそうだなという印象も受けてしまうわけです。

メタバースとはなにか?
メタバースがなにかと聞かれると回答するのは難しい。マトリックスやレディ・プレイヤー1など、バーチャルリアリティ的なインターネット世界へ繋がるような表現をされることが多い(おそらく違う)。1982年にインターネットが2020年にはどのようになるか想像できなかったように、次のインフラのイメージ図を出すのは非常に難しい。ただメタバースのコアな機能や特徴を紹介したいと思う。
1. 終わらない
オフラインやインターネットの世界みたいに、「オフボタン」はなく、常にあり続けること。
2. 常にライブで同期されている
今までの人生と同じく予定されたイベントなどは実在するが、メタバース自体がすべての人に取ってリアルタイムで体験できるものとなる。
3. 誰でも参加できるアクセス人数は無制限
誰でもメタバースに参加でき、一緒にイベントや場所、アクティビティーに参加しながら、個性を表現する場所でもあること。
4. 自社経済を持つこと
個人や企業がメタバース上で物やサービスの開発、売買、投資、保有、そして作った物などについて報酬をもらえる経済ができること。
5. オフラインとオンラインやオープンとクローズドで体験を提供
6. データ、デジタルアセット、コンテンツなどで過去ないレベルの相互運用が可能に
他のゲームでのスキンが別のゲームでも使えるようになったり、Facebookで共有できるようになるのが重要になる。
7. さまざま人々が作るコンテンツや体験があること
個人、小さいグループや会社がコンテンツや体験を作れて提供できるようになる。

フォートナイトの急成長、テックジャイアントが注目する「メタバース」とはなにか

現時点のフォートナイトが、厳密な意味で“メタバース”なのかそうでないのかは置いておいて(持ち出しておいて、すいません。メタバースって言ってみたかったんです…)、その人気が続いている理由の一つは、昔からの“小学生の外遊び”のような要素があるという点なのかなと感じています。

約束した友だちと連れ立って、いつもの遊び場に行くと、「あ、あいつも来てる」というのがわかる仕掛け。その日どんな服装(スキン)を選ぶのかも、課金やらの都合にもよりますが、お互いの趣味嗜好を知る/知らせる手段。「今度は◎◎(地図上の地名)に行ってみない?」と、同じパーティの友だちと相談しながら行き先(どこに降下するのか、どの建物に入るのかなど)を決める。乗り物にも乗れるし、水の中も自由に進める(魚も釣れます)。舞台となる地形の高低差が大きく、斜面を駆け上ったり駆け下りたりの視点の移動には、リアルな野山を駆け回る時のような高揚感があります。建物のあちこちを巡って必要なアイテムを集めるのも、隠れんぼや宝探し遊びに通じるワクワクです。
プレイに求められる技能もさまざまで、ただ突進する、狙撃するだけではなく、隠れたり、すばやく遮蔽物を作ったり(それを“建築”と呼ぶのが面白い)が必要で、昭和の“秘密基地”とか“戦いごっこ”と何も変わりません。

そして、ゲームそのものが提供する楽しみ方も、ひたすら撃ち殺し続ける(生き残るために自分や自パーティ(チームというか、グループですね)以外の相手を倒し続ける=バトルロイヤル)殺伐した世界かと思えば、そうでもないんですね。フォートナイトの中で人狼ゲーム(“インポスターズ”モード)が遊べたりもする。カッコいいダンス(エモート)も踊れるし(うちの子はゲームしてないときも思い出したように踊ったりしている)。なんなら自分でプレイの舞台(島)を作ることもできます(クリエイティブモード)。

気が向いた時に、団地の公園やら近所の空き地に行けば、誰かに会えて、日が落ちて心ゆくまで遊べた昭和の子どもたちと、今の子どもたちの置かれた状況は大きく違います。こうした“遊び場”はいつだって子どもに必要だし、もしこの先いつか、フォートナイトが廃れても、また別の何かがオンラインで支持され続けるのだろうなぁと感じています。

CERO C(15歳以上対象)とD(17歳以上対象)の間にある超えられない壁

研修講師の立場で聞こえてくる、受講者(保護者)のフォートナイトの評判は散々です。「とにかく銃で撃ち合う、殺し合うというのが耐えられない」「ヘッドセットをして、知らない誰かとしゃべりながらプレイして声が聞こえてくるのが気味悪い」「プレイに終わりがない、夜遅くまで繰り返し遊んでいるせいで翌朝起きられない」「土日は一日中プレイしている、不健康だ」「期間限定の課金が必要だと言われて、あわててコンビニにカードを買いに行くことになった」などなど。
さらには「ゲームをしている時の言葉遣いがひどい」「ゲームをしていないときも言動・行動が粗暴になったような気がする」と言われる方も少なくありません。

そもそも、フォートナイトは日本のレーティング機関(CERO)に、15歳以上が対象だと評価されたゲームです。一方、米国のレーティング機関ESRBの評価では13歳以上とされます。もちろんレーティング情報はあくまでも個々の利用者判断の参考材料でしかなく、利用規約上の問題などはありませんが、いずれにしても客観的に見ると、小学生が遊ぶのにはかなり背伸び気味のゲームだとは言えそうです。

保護者から聞こえてくる課金や長時間利用の悩みは、フォートナイトに限らず、最近のオンラインゲームには共通の話題と言えそうですが、わが家でも“暴力表現”と“他のプレイヤーとのコミュニケーション(ボイスチャット)”という、フォートナイトとは切っても切れない要素については、気になっていたところではありました。うちの小6男子の周りでも、たとえば4年生の頃からフォートナイトをプレイしている友だちは少なくありませんでしたが、その当時のわが家では、ゲームのモチーフ(バトルロイヤル)自体、認めるにはまだ早すぎるという判断をしておりました。

小6の夏になって、これをようやく解禁するにあたっては、どの程度の暴力表現なのかを確かめる過程が必要でした。特に小6男子の母親に許容してもらえる範囲なのか。ゲーム実況動画をYouTubeで探して、観てもらうところからのスタートになりましたが、「まあよくわからないがOKかな」ということになり、晴れて自宅のSwitchでフォートナイトがプレイできることに。(実際には友だちの家で何度もプレイさせてもらっていた)。

公式のトレイラームービーを注意深く観ていただいても気付けるところですが、フォートナイトの戦闘シーンでは、たとえ暴力的な表現(銃器で相手を倒す、自分が倒される)であっても、CEROの言うところの“出血描写”、“身体の分離・欠損描写”や“死体描写”はいずれも避けられていることがわかります。これが、CERO C(15歳以上対象)の範囲内だということですね。

実は、フォートナイトの次に子どもたちが向かう、CERO D(17歳以上対象)の人気ゲーム(公式ムービーの例)もあります。
ただしこちらには“出血描写”や“死体描写”が当たり前に含まれており、YouTube動画を見るだけでも、その差の大きさは歴然かと思います。個人的にはちょっとこれを自分の子どもがプレイすることは考えられない。これを上達して、どうするんだと感じます。
その意味で、CERO CとDの差は大きい。いろいろ調べなくても、ラベルを一目見るだけで「ああDだから、わが家にはムリ」となるのは本当にありがたいことです。

うちの小6男子の友だちの中には、フォートナイトに加えて、CERO D分類のバトルロイヤル系ゲームも楽しんでいる子がいるようですが、わが家のリビングで小6男子がそれをプレイする日は、まあ来ないと思います。その大切な時間は、日常生活の潤いや向上に少しは役立つようなゲームに費やしてほしい。はやく父ちゃんと一緒にグランツーリスモ7をやろう。それでもどうしてもという場合は、18歳過ぎて、家を出てからにしてください。

また、他のプレイヤーとのコミュニケーション(ボイスチャット)については、プレイを始めてみるまで、どうなるか分からなかったのですが、結果オーライでした。
彼がそれまで頑張ってきたサッカーチームでの、試合中のチームメイトへの声がけの仕方がそのままフォートナイトのプレイ中にも出ているのです。あるいは小学校の同級生との人間関係が、そのまま再現されている。
次のセクションで触れるように、彼がチームプレイが好きなプレイスタイルだということもあるでしょうが、フォートナイトというゲームの持つ、“競争”と(パーティ内の)“助け合い”のバランス設定の良さを感じることができ、保護者としては胸をなでおろしたのでした。

うちの小6男子はSocializers(コミュニケーション型)優勢らしい

出所:株式会社ミクシィ「ゲームの魅力とリスク」Ver1.0(2021)p.11

一部ではバートルテストというものがよく知られておりまして、同じタイトルのオンラインゲームを楽しむにしても、プレイヤーによって楽しみ方はいろいろだよ(そしてそのタイプごとに好むゲームタイトルも違ってくる)という現象を、選択式テストの回答スコアの偏りをもとに、簡潔に示すことができる面白い試みです。(こちらにそのテストの一例があります)。

オンラインゲームのプレイヤーを分類する、すごくよく知られた類型に「バートルのプレイヤータイプの4分類」があります。

元々は1996年にリチャード・バートルが以下の論文で提案したものです。

"HEARTS, CLUBS, DIAMONDS, SPADES: PLAYERS WHO SUIT MUDS"(https://mud.co.uk/richard/hcds.htm)

ここでは、プレイヤーを「アチーバー」「エクスプローラー」「キラー」「ソーシャライザー」の4種に分けています。この分類は、縦軸に相互作用の程度、横軸に他のプレイヤーとの対話やゲーム世界の探索の好みの程度を設定し、そのいずれに属するかによってプレイヤーのタイプを決定します。

ゲームプレイヤーのパーソナリティについて〜バートルの4分類を超えて〜

ちょっとネットで検索していただけると、ゲーム関係に限らず、いろいろな方が解説記事、関連記事を書かれているので、そちらもぜひご覧いただければと思いますが(玉石混交ですが)、この3ヶ月ほどを観察する限り、うちの小6男子のフォートナイトの楽しみ方は、“Socializers(コミュニケーション型)”が相当に優勢、そこに“Explorers(探検者型)”が少々加わるという感じですね。
端的に“社交家”と訳されるケースも多いこの“Socializers”タイプ、「他のプレイヤーと協力プレイをすること」の優先度が高く、「ゲームが本当に好きかは謎」とまで言われる始末…笑。ログインしても友だちが見当たらないとすぐ飽きてしまうあたり、うちの小6男子のプレイスタイルにピッタリ当てはまります。

ちなみに、小6にもなると、友だちとどんな会話をしているのか、どんな遊び方をしているのか、親がそのナマの姿を見る機会は少なくなるわけで、ヘッドセットをして友だちとどんな会話をしながらフォートナイトをプレイしているのか、リビングで毎日見られることは、「うるさーい、も少し静かにしなさーい」という場面もある一方で、有り難い機会だなぁとも思えるところです。その様子を見ていると、ふだんの会話が出ているなぁと。

ゲームとYouTube(実況動画)には切っても切れない密接な関係がある

最新のゲームについて学びたい保護者にとっても心強い味方となりうる、ゲーム実況動画(YouTube)。特にフォートナイトの場合は運営元が積極的に奨励していることや、プレイヤーが多いこともあってか、たくさんの実況ユーチューバー(たとえばNephrite【ネフライト】おれんじ君あたりがうちの小6男子のオススメだそうです)が動画を毎日更新し続けています。また、有名どころのHikakinGamesでもフォートナイトが取り上げられることは少なくありません。

従来主流だった、シナリオ固定でエンディングがあるゲームでは、書籍や雑誌で“攻略本”なるものへの一定の需要があったと思います。
しかし、フォートナイトを含め、最近のオンラインゲームには、明確なエンディングがありません。またフォートナイトには、約3ヶ月が一つの“シーズン”とされ、複数のシーズンがまとまって“チャプター”が構成され、その区切りのたびに、内容がかなりの程度更新されるという特徴があります。

メタバース的な楽しみ方ができることもあるので、上手なプレイのお手本を見て真似るというだけでなく、どんな楽しみ方・遊び方があるのか…から、シーズンごとに変わる新しいキャラクターやアクション、武器などのアイテムの使い方まで、実況解説の対象は実に多岐にわたるわけです。

出所:株式会社ミクシィ「ゲームの魅力とリスク」Ver1.0(2021)p.10

そのため、プレイをするだけでなく、YouTubeでお気に入りの実況者の最新の動画投稿を毎日チェックするという流れは、うちの小6男子にもルーティーンになっています。
「さんざんゲームをプレイした上に、まだこの上ユーチューブまで見るのか!」という話ではなく(もちろんYouTubeの視聴時間上限が必要にはなりますが)、これらはフォートナイト世界を楽しむためにはいまや不可分一体の存在なんだなということが、うちの小6男子の毎日の過ごし方を具体的に知ることで、実感をもって受け止められるようになりました。

子どもから学ぶためには、まず保護者の受け止めが必要

この3ヶ月あまりの観察の結果気づいたことを、長々と列挙してきました。
うちの小6男子がフォートナイトを自宅でプレイするようになって、あらためて、小学校の同級生とのつき合い方、知らない人との接し方など、(あくまでもゲーム上ではありますが)“よそ行きの態度や行動”を知る機会に恵まれました。そのことはとても良かったなと考えています。

その一方で、「ネットのことは子どもに聞け」はいつでも基本だとはいうものの、一から十まで全部聞かれては、子どもが嫌がるのは必定です。
子どもの「好き、楽しい」を冷静に受け止められるようになるには、ただ教えてもらおうとするのではなく、保護者の側にも一定の努力は必要なんだろうなぁということを改めて感じております。

調べてみることで、同じようなバトルロイヤル系オンラインゲームにも、いろいろな表現の程度など運営会社の気の遣い方の差があるのだということも分かりましたし、子どもがゲームをプレイする前でもそれを知る方法は複数あるのでした。

“ゲーム”を十把一絡げにとらえるのではなく、また“ゲームをプレイする”にも、実にたくさんの楽しみ方(と失敗の仕方)があるのだということを、大人の側がまず知ることが、とても大切なのだなぁと。

おわりに

昨年のAdvent Calendar用の記事は、個人ホームページに書いたのでした。この時はまだうちの子(そのときは小5男子)には、フォートナイトはさせていませんでした。
いまでも基本的な考え方は変わっていませんが、保護者目線というよりは、あくまでも研修講師としての知識と経験からの記事だよなぁと感慨深く読み返しました。
ご興味ある方は、当該記事「子どものゲームに悩む保護者に伝えたいこと」もぜひご一読いただければ嬉しいです。

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