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太陽にほえろ!隠れた名作編★追悼特別◎奈良岡朋子02。第192話「2・8・5・6・3」後半 第二ステージ


変わった場面は
捜査一係。鬼以外が揃っている。
アッコも心配そうに。

ボンの先輩であり、体育会系ゴリの後輩。
これが三上順テキサス。三人目のジュン刑事である。

◆ボン田口良も、制作側では、
ジュンと名乗らせたかったらしいが、
ジュン刑事が四人続くのを避けた為に。

また役名のジュンが同時期に
二人になってしまう事を鑑みて、
役名というよりは、
役者名にジュンをつけて宮内淳とした。
だから、芸能界デビューは太陽!なのだ。
淳と命名したのは制作側であり、

岡田晋吉プロデューサー

プロデューサーの岡田さんかも知れない。
本名は宮内 博史である。

その宮内淳もコロナで急逝した志村けん同様に、
数年前(2020年8月14日)に70歳でこの世を儚む。
志村けん死亡は2020.3.29。
若すぎる死だ。
しかし宮内淳 死因はコロナではない。

◆また役名の田口良。これは、
ジーパン時代に
第66話「生き返った白骨美人」で、
常に逮捕願望がある老人の役名として、
浜村純が演じた「田口良三」が、
番組では先に登場している。
※大阪の浜村淳ではありません。お間違えなく。

これを参考にしていたかは不明だが、
二代目ジュン刑事。ジーパン柴田純が彼を取調べている。
純が純を取り調べる情景。
一係室内で調書を取る珍しいシーン。
そこにお茶をボスに淹れたが、
ボスに言われ、そのお茶を差し出すクミ。
これはジーパン時代蘊蓄話で紹介します。
もう少しお待ち下さい。


192話では、そのボンが見つけた情報。
派出所で藁をも掴む、この事実。
皆に報告したのだろう。
やったで!ボン。
いつもは頼りないが、
こういう時は必要な四人目の新人。
誰も気付かない情報を掴み
聴き込んでくる!
まさに現場百回の田口良。

「山さん、その酔っ払いの自宅の
 電話番号に、似たような電話番号を
 リストアップしてみて調べたら?」と
テキサスは進言する。

兎に角、動かないといけない。
一係内で、考えていても仕方がない。
お茶を呑んでいる場合ではない。

山村は、
「ゴリさんと殿下とテキサスは、
 その番号(に似た)の家を
 足で洗ってくれ!」

「はい」と体育会系。
電話帳に飛びつく。

「あたしも調べます!」とアッコ。
お茶汲みだけが仕事ではない。
信頼するボスの所在地確認がまず急務だ。
アッコは小まめに動く。


◆こういう時に
インターネット検索が出来たなら。
捜索時間が少しは短縮できるが、
1976(昭和51)年は
携帯、スマホ、パソコンも無かったそんな時代。
皆の机の上に情報検索機器は
一切見えないでしょ?

固定電話のみだった。
しかもボンが加入した後期テキサス時代に
マカロニ、ジーパン時代の黒電話から
プッシュホンに代わり、呼び出し音も
♪リリーンから♫電子音に変わっている。
しかも内線と外線の音が視聴者に判るように
鳴らされている。
これは皆さんお気付きでしょうか?

※世間では、水面下で
インターネットを利用した情報閲覧システムを
実際に開発していこうと動いていた時代。
アイデアは戦前1940年代からあったという。
1976年は筆者も、16歳になった頃。
九州で高校ニ年生でした。


それを見て、
「よしっ!」と動こうとする長。
しかし。

「長さん!」と山村。

「長さんとボンは、
 滝田のアパート行ってくれないか?」

※アパートでなく、団地ですよ、山さん。
脚本と違うのでは?ないですか?
しかし、
芝居に身体ごと入り込む山さん。
ここは露口さん間違えたか?な。


「これだ!」とあの滝田の手帳を
背広の内ポケットから取り出す。

◆証拠であった手帳を
鬼が山さんに預けていた事が、
鬼の運の尽きか!
もしも持っていたら早く殺されていたかも?

「色々考えてみたが、
 滝田がこれをメモしたのは、
 長さんたちに追われた時しかないような気がする。」
と山村。

「俺たちが追ったとき、、、」と野崎。

「そうか、自分の住んでいる団地なら、
 あそこが、行き止まりになっていることは
 知ってた筈だ。」

※下川氏は、団地と発音している。
此方が正しいでしょうな。やはり。
脚本を隈なく正確に読み込んでいる下川さん。
やはり芝居の超ベテランです。


「あの時、奴は何かを隠したんだ!」と良も。

「何を隠したのかは判らんが、
 奴にとって必要だったのは、
 この数字だ!」と山村。

絵には出てこないが、
手帳にメモされた、あの数字。

「2.8.5.6.3」を
視聴者と一緒に想像の中で、
確認させる山村警部補。
視聴者をストーリーの謎に巧く惹きつける。
誘導させる、
そんな名演技の露口茂。


「なるほど。それで咄嗟に手帳に
 書き写したか?
 行くぞー。ボン。」

井上堯之バンド♫
これはマカロニ時代の名楽曲。
「ホシを小走りに尾行★」の別バリエーション

七曲署捜査一係 
体育会系たちの得意な足の捜査が始まる。


◆一係の貴公子殿下と、
一係の体育会系柔道部の二匹。

あっ。いや、失礼しました。
二匹ではなく二頭です。
二頭とは、ゴリとテキサス。

◆子供と動物には好かれ懐かれるが、
女には辛っきし駄目な二頭です。

◆ビールを、水やお茶代わりに飲みます。

2023年、殿下含みこの3人は
今や70歳代後半です。
ゴリ竜雷太はもう80歳代へ。
いつまでも長生きして下さい。

殿下は合気道をされていた、とか。

やはり体育会系は長生きです。
この蘊蓄話が終わるまで。生きていて。
この三人の追悼ブログは
書きたくないですから。


本屋を当たる殿下、

食堂を訪問のゴリ。

覆面車クラウンセダンに乗り込んで
次に向かう二頭。


※ここでも テキサス(上&左)のジャケットにご注目!


時代は、ボン、ロッキー時代の昭和58年。

ほぼ6年半後の 第337話「偽装」でも、
ボンが襟を立てて着用しています。

春放送の 第348話「ジュンとキング」でも。
この回は、テキサスが可愛がっていた警察犬ジュンの、
即ちハディーラ号の最後となります。
もう老犬になってしまって後任にその職を譲ります。

最終回となります。刑事犬から指導犬への昇格となる事を
ボンがラストシーンで視聴者に説明します。
この時のボンは紺黒のマフラーを組み合わせ。
その他多数ストーリーに着用してます。


また、ドックは上記の2年後、
第445話「人質を返せ!」
第446話「光る紙幣」で着用している。
これもその他多数の前後の回でも。

またラガーは一話のみの着用だったかな?
第488話「過去」で。
この時は、スコッチとボスが病欠で、
久しぶりの6人体制を
執らざるを得ませんでした。

全てメッキの四角いボタンが光ってます。
目印ですから誰でも分かります。
別の蘊蓄話アイテムを用意しましたので、
太陽にほえろ!ファンには見ておいて頂きたく。



「あ。そーですか?
 どうも失礼しました。」と山村。

山村とアッコは
手分けして似た電話番号に1件1件
確認していた。

「もしもし。

 はっあ?葬儀屋さん?

 あ。どうも失礼しました」と
ハスキーボイスのアッコ。

「いやだー。縁起でもない。」

壁時計を振り返るアッコ。
午後2時20分であった。


場面は、監禁されたマンションに戻る。

犯人から藤堂に電話が入って
話をしている。

「藤堂さん。ニトロを逆用したところは、
 流石だと褒めてやりたいんだが、
 どうやら、時間切れのようですね。

 さあ、メモの内容をどうぞ。」

「忘れたものは喋れんねー。」

「強情を張るのも
 いい加減にしたらどうです?
 ニトロは一本だけじゃないんですよ?」
とまた勝手に切れる。

電話では、
ニトロがあと数瓶、部屋の中に
隠されている?との警告だった。

その電話の後に、
天井を見上げ、まだ捜索していない
場所を点検し始める鬼。


182-3センチの鬼は、
自分の所持している車キーと同じ
キーホルダーに付け仕舞っている鍵で
天井の通風孔を開けた。

井上堯之バンド♫

「サスペンス2#2」が再度間奏する。



開けた通気口の奥に
木箱が。

井上堯之バンド♫
「驚愕のジングル」

発見した木箱の中には
ニトログリセリンが入っているに違いない。

そーと、取り出し床に置く。

隠された木箱の蓋を開けた鬼。
案の定、ニトロの瓶が
10本入っていたのだ。

藤堂は合計三つの木箱を
そっと取り出した。
計30本が、二人の側に置かれた。


床に腰を落として、美也子は
鬼の背後で、何も出来ない焦燥感と
半ば諦めの顔。

◆藤堂が犯人に数字の謎を教えないと、
自分の生命も危ない。
しかし本当に自分を狙ってくるだろうか?
それさえ美也子には判らない?

藤堂は木箱の中から
ニトログリセリンの瓶を1本取り出し、
蓋を開けて匂いを嗅ぐ。

「違う。偽物だ。」

「偽物?」と美也子。

「ただの水ですよ。」

瓶の中身はただの水だった。

「はーはあ!」と立ちながら
美也子は後ろの壁に反る。
少し安堵のため息を吐く。

「どうなる事かと思いました。」

「いや、ただ全部が偽物かどうか
 解りません。」

「えっ?」

「恐らくこの中には、
 本物があるはずだ。
 それを見分けさせる為に
 こんな手の込んだ仕掛けをしたんですよ。

 一種の拷問だ。私の口を割らせる為のね。」


突如、先程の換気口から、
部屋に暖気が吹き出す。

上(天井)を向いて確認する鬼藤堂。
暖房が入ってきたのだ。

「暖房だー!」と鬼。
「何故急に暖房を、、」と美也子。

「ニトロは温度が上がると危険なんです。」

「奥さん、冷蔵庫開けて。早く」


Wikipediaより
↓↓

ニトログリセリン(英: nitroglycerin)とは、
有機化合物で、爆薬の一種であり、
狭心症治療薬としても用いられる。

グリセリン分子の3つのヒドロキシ基を、
硝酸と反応させてエステル化させたものだが、
これ自身は狭義のニトロ化合物ではなく、
硝酸エステルである。

また、ペンスリットやニトロセルロースなどの中でも
「ニトロ」と言われたら一般的にはニトログリセリン、
またはこれを含有する狭心症剤を指す。

甘苦味がする無色油状液体。
水にはほとんど溶けず、有機溶剤に溶ける。
わずかな振動で爆発することもあるため、
取り扱いはきわめて難しいが、
一般的に原液のまま取り扱われるようなことはなく、
正しく取り扱っていれば 爆発するようなことは起きない。

昔は取り扱い方法が確立していなかったため、
さまざまな爆発事故が発生していた。

実際の爆発事故は製造上の欠陥か
取り扱い上の問題がほとんどである。
日本において原液のまま工場から出荷されることはない。
綿などに染みこませて着火すると爆発せずに
激しく燃焼するが、高温の物体上に滴下したり
金槌で叩くなど強い衝撃を加えると爆発する。

2023.4.14調べ。
上記の文面は変更される場合有り。
↑↑ここまで。


この基本的な化学知識を
遺憾無く発揮して、
たった一人で、危険物処理をする
鬼 藤堂俊介。部下は周りに
誰も居ないのだ。

びっこをひきながら
冷蔵庫に向かう美也子。

鬼は腰を上げて、木箱を、一箱ずつ
中腰で、ゆっくり冷蔵庫に入れた。

額からの汗を右手で
拭う美也子。


場面は変わり、滝田の団地。

野崎とボンが検証。
「(非常階段を)降りたのは
 (即ち、動きが止まったのは)
 ここだな?」と長。

「ええそうです。」と良。

つまり、四階から非常階段を登り
屋上に逃げようとした滝田を下から
ボンが捕まえて、引き摺り下ろした場所を、
野崎は良に確かめる。

四階か?
「何にもないなあ?」
「有りませんねー」

四階のダストシュートが
一階に向けて開いていることに
気づいた野崎。

「これだー。これだよー。」

一階に素早く降りたゴミ捨て場。
ここで、見つけたものは、、、

「長さん。こんなものが、、」と良。

「東都貸金庫のトランクルームの
 預かり証」を発見したのだ。

表紙を捲る野崎。
「手帳に書き写した数字。
 これだったんだよー!」

即ち、あの「2.8.5.6.3」が
印字されていたのだろう。

◆画面の絵では、説明されない。
恐らく視聴者は野崎とボンの動きで
そのように想像するしかない。
制作側も、そのように想像して下さい、と
いう事だろう。


場面はまたまた変わって
監禁マンションの一室に。

冷蔵庫の中には、二つの木箱。
もう鬼は、本物と偽物の区別を終えて。


三つめの箱が最後。
あと残った一つの木箱から、
一本ずつ、瓶を鑑定をしている絵。


蓋を開けて一本一本ずつ
中の液体の臭いを嗅ぐ。

※本物はそーっとゆっくり、
冷蔵庫のドア棚に置いているが、
その時の藤堂俊介は、
ラベルが見える方が本物。
偽物はラベルを裏向け、または
見る者の目から遠ざけて
置いては、しないか?

※このように、ちょっと説明を加えないと
判らない芝居をする石原裕次郎。
恐らくそうに違いない。

ゆっくりとした裕次郎の動きで
見ている視聴者に
そのように考える時間と余裕を与える。
そんな演技と推察する。


◆上手いねー。流石は日活俳優。
でも、山さん、長さん、ゴリや殿下だって
そんな芝居は出来ますね。

俳優になって2年目のテキサス。
まだ新人のボンでは、どうかな?
この二人のみ、芸能界ではまだ
修行中の身だ。
演技はまだまだ。当時は。

次の瓶の蓋を外し、
臭いを嗅ごうとした時に、、

突然、あの電話のベルが
鳴り出す。


◆いきなりの電話のベルに
ドキッ!とする石原裕次郎。
慌てて瓶の挙動を抑える。

上手い!この演技力。
◆相当な緊迫感を
画面を見ている視聴者に伝える。

この演技は、視聴者も分かり、
どちら様も自分の生活シーンで、
体験的に感ずるために、
真に迫る芝居演技と言える。

実は、
一係のアッコがかけていたものだった。

テキサス進言で、可能性がある電話に、
山村と二人で手分けして
電話帳を一つ一つ見て、
電話をしていた捜索活動だった。


場面はまたマンションの一室。

焦燥感が二人に覆い被さる。


鬼は本物、偽物への真剣な見極めを続ける。
そんな状態だから
電話に出る事は出来ず。

◆美也子は術もなく、暖房で暑苦しく
次第に高くなる部屋の暖気に
何処まで打ち勝てるのか?
奈良岡朋子も、迫真の表情。

🟠ゲスト出演者で、
ここまでの真剣さを視聴者に
伝えられる女優は、かつて居なかった。

「んっ、留守かー」とアッコ。

捜索リストに赤字で🔺印を
付ける。🔺は留守である事を示すのだろう。

「係長さん、そんなお金の為に、
 どうして貴方まで
 死ななきゃならないんですか?
 ねえ、あの人たちに
 早く教えてやってよー。」


🟣このシーンの解説に、少し時間を下さい。
🔴ストーリーを一旦離れます。

ある脳科学者の解説を
このシーンで参考にします。

★女は男に対する劣等感で苦しみ、
 その相手を時として憎んだり、
 つらく当たったりすることが、
 皆さんにもあると思います。
 それは、父であり彼であり夫であり。

◆ある脳科学者曰く、
 脳にも同じ事が言えます。
 脳には「課題へのアプローチの仕方」が
 二種類あり、人によって
 とっさの優先側が分かれます。

 違うタイプの二人は、
 (これは男女のみならず、性別を問わず)
 話がすれ違い、優秀な相手には
 劣等感を抱きがちです、と。

◆特に女性の場合は、
老若不問で、誰でもありがちで、
上記の性分を、
心なしか自分の意思とは裏腹に
周囲に見せてしまいます。
要はこれを相手が察知するか否か。

このストーリーの演技では、
特に「奈良岡朋子の演技と台詞」に
即ち、上記の台詞に、
これが巧く加味されて表現されているのでは
ないでしょうか?

この演技が出来る人は、
男性俳優ではなく、
やはり又、女優の中でも
「奈良岡朋子でなければならなかった」のだ。
そう思う。

しかも人生経験豊富な彼女。
女性なら誰でもと言えることではない。
芝居というより、そんな演技が巧い。
第192話のストーリーでは、
「永く辛い生活感を続けている女」
「何とかして突然に脱皮したい女」
これが表現できるか?
これを視聴者に漂わせられる女優が
必要だったのだ。


が、そんな事を一切知らない鬼。
それを受け止めて、今は
自分の懐に深く収める鬼。
しかしそれどころではない藤堂俊介。

しかし、第一ステージの前編で
美也子が鬼に言った一言。
「そんなお金なんて、私は欲しくないのに、、」

この言葉の裏に隠してある、
美也子の本音が読み取れなかったのだ。
上記の察知が出来なかった藤堂俊介。
刑事としての察知。
男としての察知が出来なかった藤堂。

この美也子の本音が
藤堂に対して最後の最後に、
女の「時代への報復感で塗られた」冷たい牙
となって現れるのだ。

上手い脚本の冥利ですね。
これを察知できるか?視聴者は?


ストーリーに戻ります。

「係長さん、そんなお金の為に、
 どうして貴方まで死ななきゃならないん
 ですか?ねえ、あの人たちに
 早く教えてやってよー。」

奈良岡朋子のこの台詞の
続きは、、美也子はどうしたか?

美也子は、犯人に縋るように、
発信が出来ないと分かっている電話に
無造作に飛びついた。

「もしもし。もしもし!
 係長さんと、もう一度話して!
 もしもし。、、も、、」

「あーああっ!」と電話に縋り付く。

何をするにしても、
もうどうしようもない現実。

◆しかし、後から判るが、
この犯罪を仕組んだのは美也子。
彼女自身である。
自分ではどうしようもない苦しい生活感が、
この犯罪に彼女を追い詰めた。

◆そう思わせない振りをしてるのは、何故か?
額から汗を垂らしてまで。

◆この主婦の犯罪は、
やってしまったこの犯罪には、
彼女自身、自分でも、
どのように決着を付けたらよいのか?
犯罪の終着点を探している演技。

◆しかも、足を引き摺り、
それが、藤堂の同情を買い、
一方の鬼は、
男であり、刑事である鬼は、
まず爆破を防ぎ、ここから退去しなければ
ならない絶対使命がある。

しかも主婦であり、女であり、
更には足が簡単に動けない女を、
男である自分が保護し、
助命しなければならない。

◆しかも他方で、一係のアイツらに
どのようにしたら、早く教えられるか?
多分、山さんを中心にして、
皆はもう動いているだろう。
というのが、鬼の心中。


電話に手をついて、諦めたと思わせる?

そんな美也子。

鬼は本物と偽物との仕分けを終了し、
冷蔵庫の扉を静かに閉じた。

「すみません。取り乱したりして。」
電話から離れ、鬼に詫びる。

この台詞は、
美也子の本気か?嘘か?


午後3時30分になり、鬼は、

「いいえ。暖房も止まったようですね。」

美也子に背後を晒したままに。

「さあ次はどう出るか?
 予告通りだと、あと30分で
 貴女と私を殺す筈だ。」

「しかし殺したところで、
 一文にもなりゃしない。

 とすればだ。
 或いは諦めるかも知れませんねー。」


少し5秒ほど沈黙が
二人を包む。

  「いいえ。
 諦めたりしませんわ?」と美也子

突然に豹変する主婦の美也子。


脂汗が額から出て、頬を伝う鬼。

振り返ると美也子が、

ニトロ瓶を持ったまま、鬼を
冷んやりとした眼で睨みつける。

「奥さん!?」

「動かないで」

「教えてください。主人のメモを。」

「吃驚したでしょ、藤堂さん。」


井上堯之バンド♫
四回目の間奏
 名曲「サスペンス2#2」

「あなたには解らないわ?ー」

「この歳になっても、まだ夫婦共稼ぎで、
 やっとの思いで団地暮らし。

 ご近所の人達が次々と家を建てて
 喜んで引越していくのに。

    いくら働いたって、あたし達は
 そんな夢さえ持てないのよ。」

「もう嫌んなったわー。つくづく。」

「あたしだって。
 あたし達だって。

 もう少し【豊かな思い】を

    味わってもいい筈よ。
    それもイケナイって言うんだったら、 
    あたしは死んだ方がマシだわ?」

今度は、鬼が。
◆ゴクリと、唾を飲み込む藤堂俊介。
この絵で、分かりますよ。
映像ならもっと鮮明に分かります。


苦しい生活に追い詰められた女の
一世一代の必死さを
体感する鬼警部補 藤堂。

独身の40過ぎ男、藤堂。
 ※この時、石原裕次郎は41歳。
 ◆死去したのは52歳である。
死ぬのが本当に早すぎる!


藤堂俊介。彼自身が、
女の怖さを初体感する、このシーン。

◆こんなシーンは太陽にほえろ!。
他の作品には無い。
◆だからこそ。隠れた名作なんです。
裕次郎だけではない。
奈良岡さんもかなりの名芝居。

奈良岡さんの脂汗が伝わっている所が見えますか?

この時、一係で確認した、
あのメモ書き「2.8.5.6.3」が
フラッシュ!、、鬼の頭に閃く、、

この謎の数字「28563」。

「ご主人のメモは、
 2.8.5.6.3」
とうとう美也子に告白したのだ。

これを聞いて気持ちが素直になった?
美也子は、
「あ、り、が、とう」と。

あーああー。

ほっとする。

◆しかしだから、どうなんだ!
◆この後はどうするんだ!美也子は!
◆自分の計画の全貌を打ち明けても、
もう何処にも、逃げられないんだぞー!
◆逃げ場なんて何処にもないんだ!


ここで、二回目のコマーシャル。

体育会系柔道部の二人。

「次は何処ですか?」と弟子のテキサス。

「次は、キャッスル新宿の702号室。
 新宿のマンションだ!」と師匠のゴリ。

「じゃあ、
 まだ住んで無いんじゃないんですか?」

「兎に角、当たってみよう。」とゴリ。

※イグニッションキーで、
 一発でエンジンが掛からない覆面車クラウン。
 撮影に使う車両ならば、
 まめにオイル交換した方がいいですよ。
 番組制作スタッフの皆さん。
 いつも使っている車ならば、
 オイル交換の目安は3000-5000km。

二頭の柔道部ゴリとテキサスは
覆面車クラウンで
「キャッスル新宿」に向かおうと
市街地をスタートさせる。


続いて、
マンション部屋の、
これが最後のシーン。

また違う箇所に盗聴器があったのだろう。
美也子と藤堂の話を聞いていたか?

ニトロを持ち、藤堂の背後で
後に続く美也子。

通路の防火シャッターが上がり始める。
美也子との会話を聞いていたホシが
守衛室コントロール室から開けたに相違ない。

一人の男のスラックスを履いた足が見える。


藤堂と美也子はライフルを
携えた、その男と対面した。

※美也子の足は、いつの間にか治っている。
やはり芝居だったのか!

「相棒はどうした?」と鬼

「守衛室で眠っているよー。」と美也子の弟。

大杉と酒井の事だ。
即ち、金に釣られて共謀させられて、
殺されたのだ。恐らくは。


「治。よくやったわねー。」と美也子。

「あたしの弟よ。
 うだつの上がらない医大の事務員。」


美也子は説明。

井上堯之バンド♫
「危機のテーマ」
数あるこのテーマの中でも
危機のテーマのオーソドックスな楽曲。

やっと地下の駐車場に出た二人。


鬼は治と美也子に車に乗せられた。
やはり足を引き摺っていない美也子。
芝居だったのだ。
演技の中の芝居は上手い奈良岡朋子。
その日産プレジデントは
マンションから表通りに。

※いずれ、鬼藤堂俊介の番組中で
使用されるプレジデントも同じ黒色。
だが、
その鬼のプレジデントはアルミホィールを
履いている。第256話「ロッキー刑事登場!」で
最後のシーンで登場します。
この車と同じかな?



入れ違いで、覆面車5世代目クラウンが
マンションに入る。

一足違いで
「キャッスル新宿」に到着したのが、
体育会系の師弟のゴリとテキやん。

この姿を、ボンの後ろ姿と比べてみて下さい。

もう少し早ければ、、、。

「キャッスル新宿」の守衛室で、
ゴリとテキサスは、
大杉と酒井の射殺遺体を確認した。


治と美也子は、鬼を拉致したまま、
東都貸金庫トランクルームがある、
地下駐車場に直行した。


治はプレジデントを出て、
一人でトランクルームに入ったが、

トランクルームでは、
職員を装った殿下が顔を見せる。

預かっているアタッシュケースを
開いて、
「これだろう?」と。

驚く治。

既に大金を回収していたのだ。

後ろから、待機した野崎とボンが
治を抑える。

ボンが左手を取り上げ、治は野崎に
手錠をかけられた。
やっと逮捕された。


そうとは知らない駐車場の美也子。

思っていた時間よりも遅いと
感じた彼女は、
「遅いわー。」と美也子。

美也子は、駐車場に

そろりと近づく山村を確認する。
ゆっくりと歩くその山村の視線は
プレジデント後部座席の鬼を捉える。
やはり無事だったか、ボス。

鬼視線も山村を捉える。

そこに、慌てて駐車場に出てきた良。
やっと犯人を確保した事を山村に
報告しようと走る。

◆走らんでええんや!ボン。(筆者の思い)
犯人に気付かれるやんか?

山村に報告しているボンの姿を
美也子は捉える。
一所懸命さがいつも裏目に出るボン。

◆聞き込みも張り込みも、尾行も
直ぐに犯罪者に気付かれるシーンが多い。
大概は直ぐにバレてしまう。
やはり山村、野崎に付いて実地勉強が不足。
城南署ではそんな尊敬できる先輩がいなかった。
だから独り善がりが身に付いた。

周囲の状況がまだ掴めない新人1年目のボン。
去年の1975年(10月)に、
良い先輩"この場合は山村" の元で
仕事が出来るテキサスを羨み、

城南署から自ら希望転籍させてもらい、
七曲署にやってきたが、やはり
一所懸命さがいつも仇になる。
ひとりよがりのボン。

と、思われても仕方ない。
やはり🐤ひよこ。
いや、今はまだヒヨっ子のボン。

第223話「あせり」から自省に苦しみ、
皆の助言で更に成長していくストーリーがある。

◆城南署から七曲署に転籍になったのは、
マカロニ、ボン、スニーカー、ラガーの
この四人だ。しかし、ラガーの後任 島津公一も
城南署からの転籍に。鬼が引っ張ってきた五人目。

内三人は死んでしまう。淳と淳二、良。
更にはスニーカー山下真司以外は、
本当に死んでしまった。この世にはもう居ない。
公一のみ、海外研修生として、日本警察官研修代表の
一人として選任される。



「誰?!警察ねー?!」と
ボンの動きが、美也子の勘を擽る。

駐車場に出てきた
山村と良の姿を見て、
刑事であることを察知した美也子は、
ニトロを片手に、
プレジデントを降りた。

続いて車外に出て
「馬鹿な真似は止しなさい!」と鬼。

先程の山村の眼の動きで、
事件は、ほぼ収拾されたと察知した鬼。
「弟は逮捕された。」

あとは、張本人の貴女だー、
と言わんばかりだ。



美也子はニトログリセリンを見せ、
「釈放するように言うのよー。」
「お金も渡すように、言って!」

そのとき、
野崎と殿下が治を連行し、
駐車場に。

「動かないでー。」

「ボスっ!」と野崎。

その時、体育会系の二匹。ゴリとテキサスが
やっと地下駐車場に到着した。


急ブレーキ音が地下駐車場に響く。

「ボスっーう!」と運転席から降りたゴリ。

「来ないでーっ」と美也子。

「これは、ニトロよーっ」と
美也子は皆に見えるように
振り翳す。



この眼の演技力。

井上堯之バンド♫
「仰天驚愕のジングル!」
冷たく、耳を劈く(つんざく)ジングル。

「さあ、藤堂さん!
 命令して!
 お金と一緒に弟を渡すように言って!」

しかし鬼は美也子に対して、

「奥さん。その瓶を落としたら
 貴女は殺人犯だ。」

瓶をゆっくり下げる美也子。

  「今なら未遂で済む。
 犯罪者として死ぬのがいいか、
 生きて人生をやり直すのがいいか。」

  「よーく考えるんだ!」


井上堯之バンド♫
「ボン 愛のテーマ」

オリジナルバージョン間奏
レコードバージョンかな?
※別名「新愛のテーマ」と過去には呼んでいた。


プレジデントのドアを閉めて、
鬼は美也子に接近し始める。

「来ないでー。近寄らないで!」

と観念しそうで、
それでも観念しない美也子。
声はかなり弱くなっていく。
女の諦めは、まだ遠く、、、。

しかし、もうどうしようもない。
刑事七人も周りに居て、
逃げるに逃げられない現実の現場状況。

女一人では、どう足掻(あが)いても
どうしようもなく。
もう今更逃亡出来ない状況だ。

ニトロを掴んで逃げられない。
逃げようとすると、
身体の振動で、動いただけで
自爆してしまうのは理の当然だ。


最後の女の覚悟は、
ニトロ瓶による爆死?

これだけは
何としても阻止しないといけない鬼。藤堂。
ここにいる全員が爆死の危険が否めない。
他の駐車している車輌にも
引火し大爆発を引き起こす可能性に繋がる。

これを大事な、家族同様に慕う部下に
やらせる訳にはいかない。
部下を死地に追いやる事は絶対に出来ない。

「お願いー!近寄らないでー!」

また、瓶を皆に翳して
最後の足掻き(あがき)をする美也子。


皆は、二人の動きをじっと
見守るのだ。それしか。ここでは、
ボス一人に任せていくしかないのだ。

とうとう、美也子を瓶を掲げたまま、
女は涙を浮かべる。
「ああー。」
次第に身体が崩れ掛かる美也子。

※誰でも死にたくはないのだ。
美也子自身も。

こんな演技は、彼女しか出来ない配役。
若い、綺麗なおんなには、無理なんや!

近づいた鬼は、美也子から
ニトログリセリンの瓶を取り上げた。

「これで、貴女は
 殺人犯にならずに済んだんです。」

この泣きにも、女の諦めの裏を表現している。

プレジデントの黒いボディに
項垂(うなだ)れ、
腰を落とし、膝を曲げる。
周囲に縋り付くしかない美也子。



「ボン 愛のテーマ」終了間際に

鬼はニトログリセリンの瓶を高く上げ、


右手の指から、瓶を離した。

瓶は、地面に叩き付けられ、
粉々になるも、中の液体は
八方に迸(ほとばし)っただけ。

爆発も、何も起きず。

山村、良、

野崎、

殿下も唖然。

体育会系の二匹(二頭)もこれには吃驚!

一番驚いたのは、美也子。

「どうして?」

「どうしてこれが!?」

「すり替えたのね。
 唯の水と。
 あたしたちが、あの人たちとグルだと
 いうことが解っていたのねー?」

即ち、美也子と夫が、
弟たちとグルだった、という事が。

瓶は落としたが、
中身は水だった。


「違う!
 すり替えたのは、貴女の為だった。」

「えっ?!」と美也子。

井上堯之バンド♫
「愛のテーマ1B」

「時間が来て、あの連中がやってくれば、
 必ずあのニトロを使うだろう。
 ただ、そう思っただけです。

 奥さん。
 貴女がプロの悪党になる気なら
 大いに自慢しなさい。

 私がこれほど、見事に騙され、
 これほど、女性を怖いと思った事は
 産まれてこれが初めてです。」


山村、良がボスに寄っていく。

弟の治を逮捕した野崎、殿下も近寄る。

美也子の右手を取り上げ、
静かに手錠を打つ山村。
治と野崎、殿下はともに離れていく情景。

やっと話ができる距離まで
近づいた体育会系のゴリとテキサス。

「ボス!それにしても無茶じゃないですか!」
「番号を教えたりして!」と体育会系ゴリ。

「何が無茶だ?」

「連中をここまで引っ張って来れたら、
 一網打尽に出来るじゃないか?」

「俺たちがここに気付かなかったら
 どうなっていたんですか?」とテキサス。

「気付いていなかったら?あ」

「お前たちが、そんな部下なら、なあ」

「俺は、おまえーっ!
 ニトログリセリンで、ドデぇーんと
 死んじゃった方がいい!

  バァーん、とな?」と鬼。


🔴ここで、最後の疑問?

「ボス!それにしても無茶じゃないですか!」
「番号を教えたりして!」と体育会系ゴリ。

ボスが美也子に「2.8.5.6.3」の数字を
マンションで、教えていた事が、
外で捜索活動していたゴリに
何故分かっていたのか?

これは、1976年の初回の放送から、
2023年の今まで、ストーリー内では
釈明されていない謎です。
47年間の謎なんです。
皆様、そうですよねー。
何処かで放送中に
釈明、説明された絵がありましたか?

◆回答は、たぶん。

まあ、覆面車の無線で
ボス以外の仲間たちが連絡を相互に
取り合っていた、ことにしておきましょう。
だから分かっていた。か?

これも、
七曲藤堂一家の密なるチームワークです。

まあ、ボンの諦めない現場百回の聞き込みが、
ボスの居場所を見つけるヒントに、
ぶち当たっていった。

◆行動する事が、近くの宝物を引き寄せる。
私たちの生活、勉強、仕事でも
同じ事が言えるのです。
私たちも「現場100回」を意識しましょう!
何回も繰り返す事で、真が自ずと見えてきます。
諦めない事です。探るは「深はチカラなり」。
だから、「チカラとなる真が見つかる」。


CAST

矢島明子:木村理恵
滝田美也子:奈良岡朋子
滝田甲造:北原義郎
飯田治:信実恭介(後の信実一徳)
故買屋:松本敏男
大杉徹:戸塚孝
酒井賢太郎:小坂生男

次回、ジーパン時代に戻り、
狂気の若者を描く脚本家の名作です。
ジーパン時代73-74の名作選の一話を
ご覧頂きたく。

12748字


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