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ジーパン時代73-74優秀作品その1 第57話「蒸発」・・ ◆ちょっと休憩◆ に、太陽ファン向けの問題あり。

下記は、

年次別「行方不明者」届受理状況。

四年前令和元年の
(警察庁生活安全局生活安全企画課)の
調査報告による。

https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/fumei/R01yukuefumeisha.pdf

終戦10年を経過したあとの
「行方不明者」届受理件数は、

◆山村が、行方不明になり、

一年間に2万人の死亡か、と台詞で言っている

も、調べてみると、、、。
行方不明者そのものはもっと多かった。
それが判ったのが、この公表された数字。
ひょっとして下記、昭和48年 90447件の中で
死亡した者が2万人なのか?
交通事故での死亡者が1万人前後だ
と云うのに。


行方不明者。報告だけで纏めた数。
昭和31年 85,719件
↓ここから富に増加している。
昭和47年 90460件
昭和48年 90447件→これが放送時期

この昭和48年の件数と
さらに11年後。
下の昭和59年の件数と比較するだけで
90447件−104187→ 13740人

(この二つの年を比べても、
 13740人増加だ)

昭和59年 104187件
このあとに僅かながら減少。

平成15年 101855件

更に減少している。
令和元年 86933件

昭和時代の31年ころから、
放送時期の昭和48年までと
比べてみれば、経過した17年あとに
プラス4700件強と、増えていた状況だ。

さらに、放送時期の昭和48年までは、
上記の様に年々と
そこからまた増加している事が判る。

その頃1973(昭和48)年に、
新聞、雑誌等でも皆さんご存知だった、
社会問題化していた行方不明者。

■社会不安、家族崩壊、経済貧困などに
押し潰されていった普通の生活者たち。
【現況から逃げ出そうとした人々たち】


即ち

その、現況から逃げ出そうとした
【人間蒸発】を取り上げた問題提起作品です。

太陽にほえろ!としては、
これまでのマカロニ時代には
無かった稀有なストーリーである。

但し、犯罪描写を散りばめて、
逮捕する側の一係と
当事者である男と妻の、

特に男と女が突然に
離れて行くしかなかった事情に、
周囲の者たちは、残された者たちは
どう向き合い続けるか?

この事情はストーリー内では皆目判らない。
人其々の事情がそうさせていたのだろう。
理由は、一概に番組内では言えないから、
であったろう。


謂わば、当時の社会問題の裏側で
個々には表面化してこない「一ファミリー」の
家族崩壊。即ち江原家。
突然居なくなってしまった大黒柱の夫。
そして追い詰められた妻と子。

太陽!ストーリーとして、
巧く構築されてある。
それを番組として、現代の
皆に再考してほしく、
多くの視聴者に、この問題を投げかけ、
番組が提起した作品なのである。
令和時代でも、同じく。

しかし、最後には、
太陽!流に纏めているラストシーン。
鬼の含み笑いに、
純を代表とした当世の若者たちに、
これからの生きる希望を
仄かに醸し出すラストだ。

◆ ウルトラセブン 第34話「蒸発都市」とは
全く違います。
作品としての意味合いが。

ストーリー渦中で、
片親"父"を失った若い純と
心臓病の妻を抱えた山村の台詞なしの
(言葉を交わさない両者の眼の動き)
の違いをも、ご覧頂きたく。


二人の感情の差が、その眼に現れています。

人生の哀れを知っている40歳になった山村と
半ばその哀れさを経験していない23歳。
怖いモノ知らずの黒メガネ。
即ち、 全く哀れを知らない純を感じ取れます。

また、病院の表で、
警察官の職務の本意を純に解く山村。
この本意こそが、太陽!が終生描きたかった
人の生命の尊さに他ならない。
これは、第二ステージで。

更には日活出身の斎藤光正監督だけに、
陰と陽の使い分けを巧くされている
今までも何回もあった、第57話の映像。

当直(泊まり勤務)の山村が
独り一係の、誰も居ない部屋で。
扇風機の首を一人で変えて、、
「蒸発かーあ!?」

ラスト一係部屋で、
「俺も蒸発してみたい、、と
 思ったことがあったよ。」
と山村が純の前で。

こんな映像シーンは、
あまり他の作品にはない。

但し、テキサス時代の名作。
第118話「信じ合う仲間」では、
山村が刑事を辞めたいと揺れるゴリに対して
上記の台詞に近い事を話しています。
※これは、テキサス時代の蘊蓄話で。

更に斎藤光正監督はマカロニ時代も
そうだったが、カメラアングルを
他の回とは変えています。


陰と陽の旨い使い分け、については、
ウルトラマンシリーズを
監督した実相寺監督のようだ。
俳優が居なくて、陰と陽だけで、
登場人物の心のうちを表現させる。

皆様がご存知なのは、
初期の三部作(Qとマンとセブン)の最終作品。
それはウルトラセブン最終回。
諸星ダンが友理アンヌに告白する。
あのシーンを演出されたは、満田監督です。
ウルトラシリーズメイン監督。
現在は85歳となられてます。2023年現在。

「自分は地球人(人間)ではなく宇宙人だ」と。
その瞬間の映像に似る。

では、第57話。
故小林恭治氏のナレーション。
次回予告から↓↓

「ヤクザの争いで一人の男が消された。
 謎の男からの通報で、
 七曲署は色めき立つ。

 蒸発した男。
 たまたま殺人を目撃してしまったことが、
 捨てた筈の過去へと男を引き戻した。

 目撃者を消そうと
 執拗に伸びる闇からの手。
 疾走するクルマから
 男を狙って銃弾が発射された。

 次回太陽にほえろ!蒸発に
 ご期待ください。」

↑皆様、28秒で、このコメントが
話せますか?
ストップウォッチを用意して、
喋ってみてください。BGMは、
オープニングテーマ、次回予告版。


◆上記の「疾走するクルマ」も、
筆者の蘊蓄を述べます。今ちょっとだけ。
シリーズで、マカロニ時代から登場している、
都合3回目の、犯人たちが乗る同じクルマです。
ナンバープレートも同じです。
皆様気付いてましたか?
知ってる方は、あのクルマか?とね。
フォード3代目タウナス1967-69年型か?

写真は2ドアクーペ。ナンバープレートは1969年の意味。

世界でも珍しいV型4気筒エンジン搭載車。
日本ではインプレッサ、レガシー等、
V型180度(水平対向)4気筒ならば、
スバルにありますが、
日本にはV型直列4気筒はおまへんなあ。
他のメーカーでは、コストが高くなり
売価が高いので作っていない。
しかも(水平対向)エンジンを造っている
メーカーは、日本ではスバルとトヨタのみ。
世界的に見てもポルシェくらいです。
エンジン音が、ボトボトボト、と煩いので
誰でも解ります。静かさに欠ける。

以前の2回は共に水谷豊ゲストの回です。

また、山村精一がこの回より、
サングラスを掛け始めます。
しかもよく似合っています。

前振りはここまで。


第57話「蒸発」
1973年8月17日放送

脚本:鴨井達比古
監督:斎藤光正

斉藤光正の表記はあやまり。
斎藤光正が正しいです。後年、この表記に改められた
のかも知れませんが。

ストーリー概略

七曲署正門から、クミが歩いて
玄関に向かうシーンから、始まります。

♪たんたんたん、た、た、た、たーんたん。
た、た、たん、た、た、た、たーん。

と、クミの口遊む歌からストーリーが始まる。

この歌は
沢田研二往年の名曲。
「危険なふたり」
作詞:安井かずみ
作曲:
加瀬邦彦
編曲:
東海林修
累計65.1万枚の売上げを記録

第4回日本歌謡大賞・大賞
第15回日本レコード大賞・大衆賞
第6回日本有線大賞・歌唱賞

皆が口ずさんでいた名曲でした。
筆者も街のレコード店に買いに行きました。
たしか470-480円だったと
記憶してます。中学生の小遣いで
買えましたから。
和田アキ子の四曲入りのEP盤も
たしか700円だった。

勿論、消費税なんてありませんでした。


七曲署一係。

殿下、ゴリは ヘボ将棋の真っ最中。

「ゴーリさーん!」と野崎は
ゴリの下手な打ち方に、何をやってるの?と。
そこに、鬼も顔を覗かす。
俺が、と打ち方を伝授しようとしている。

一係では、
将棋は、殿下が名人級なんだが。
機械に強い殿下は、頭の中の構造が
相手の三手先、四手先を読む為に、
単純肉体派のゴリとは違うのだろう。
ゴリ押しだけに、力ずくで打つために、
いつも墓穴を掘ってしまうのだろう。
将棋にも、冷静さが必要だ。

ここにクミが部屋に。
「クミちゃん、お茶!」と肉体派ゴリ。

「俺にもくれー」と山村。
「ちょっと待って下さあーぃ」とクミ。

この時、天井から吊り下げた蛍光灯が確認できず。

純は、自席と隣りの野崎席の上で
席をベッドにして寝っ転がって
鬼が読み終わった新聞を読んでいた。
読売新聞か、な?
また電話帳を四冊、枕にして
寝そべっている。

隣の席はまた野崎席に戻っているのか?
向かいがマカロニ時代と同じ山村席だ。
第53話の登場編と同じ席の配置です。

◆この後、最初のコマーシャル前に
山村にクローズアップし、
カメラの焦点を合わしますから、
ひょっとしてこの時だけの臨時措置かな?

その組んだ、純の裸足の汚い足を
手で叩くクミ。
吃驚して起き上がる純。
「どうしたのおーっ」

純は、裸足で仕事している?

「感謝しなさい。
 貴方に買って来たのよー。」と
クミは、純用の湯呑みを差し出す。

「いいでしょーっ」

それを見た皆んな。
「ねーね。ボス、
 ちょっと過保護じゃないすか?」と野崎。

「おー。」と同感のボス。

「過保護だよ!」とまた野崎。

「過保護だよ。」とつられて殿下。

「仕方ないでしょー、図体ばかりデカくて
 赤ん坊と同じなんだから、、」
とクミは皆に云う。

それを聞いて咳き込み
先に出してもらった茶を吹き出す純。

吹き出した純の茶が、
ゴリ、野崎、殿下、鬼にまで
飛んでいる、細かい演出だ。

茶が出されていない先輩。
と云うことは、純が先に出署している
証であるか?


ゴリも怒り、再度「お茶あっ!」。

次のクミの台詞。

クミは、
「つ○ぼ、じゃありません。」
○は「ん」です。

◆この「つ○ぼ」は現在では
放送禁止用語です。地上波では。
耳が不自由なひと達を
蔑(さげす)み、詰(なじ)った言葉だと
解釈認識されます。

ネット配信のrutubeでは、当時の映像が
カットなしで、令和でも視聴できます。

日テレから地方局に
再放送用に回された同話は、
この部分をカットするか、台詞を
消して放送していたのだ。
または、57話のみ全てを、削除した放送局も
あるのです。このクミの一行の台詞の為に。


また、山村は、そんな事より
「お茶あーっ」

「分かってます!」と
クミも少し憤慨している様子だ。

「ボスうっー」とゴリ。

その時、一係室に電話。
「はい。捜査一係。
 何いー!?」

ここでも、蛍光灯が見えません。

「殺しっ!場所はーっ」と鬼。

井上堯之バンド♫
名曲「危機のテーマ」が間奏。

3:34★3曲目が 危機のテーマ
但し、井上堯之バンド♫ オリジナルサウンド版では
ありませんから、念の為。

現場のシーンへカメラは飛ぶ。


現場では、準レギュラーの鑑識課員
(北川陽一郎)が既に現場を観ている。

※北川は「影への挑戦」
 の序盤シーン以来のご登場となる。

上記の、
鑑識主任の高田(北川陽一郎)の報告によれば、

「死後8~9時間と言うと、、」と山村。

「昨夜の午後11時前後ですね、、」と
高田は山村に報告した。

「至近距離から3発。即死だな。」
と殿下。

「目撃者なし。この連中は
 一杯呑んで早く寝ちゃうんらしいです。」
とゴリ。と純も走り寄る。

「仏さん。
 二の腕に刺青がありましたね。」と殿下。
「暴力団かな?」とはゴリ。

「待てよ?あの顔。
 前に見た事がある、、。」と山村。


一係に戻って、
クミは推理小説「Yの悲劇」を読んでいた。

◆『Yの悲劇』
(ワイのひげき、The Tragedy of Y )は、
1932年に発表されたアメリカ合衆国の
推理作家エラリー・クイーンの長編推理小説。

ドルリー・レーンを探偵役とする「悲劇」4部作のうち、
前作『Xの悲劇』に続く第2部。
本作を含む4作品は「バーナビー・ロス」名義で
発表された。1978年にフジテレビが
同名タイトルでドラマ化した。

これは、Wikipediaより。


それを閉じて、、

「それで、、」と鬼が、山村に尋ねる。

「殺されたのは竜神会の幹部、原牧で、
 殺しの現場は寺林組のシマです。」

◆久しぶりの「寺林組」が番組への再登場だ。
第7話「きたない奴」以来。ほぼ一年振り。

「何だあ?ヤクザの縄張り争いか?
 つまん無い!」
と、クミは面白く無さそう。

「寺林組を少し、叩いてみる必要が
 あるなあー。頼むわー、山さん」と鬼。

「おい、行くぞー」と
純を引っ張り、出掛けていく。

その時、ボス席の電話が鳴る。


「はい。捜査一係。はい?
 何ですって?」

その電話が気になる山村。
そして、鬼も手を伸ばして
山村を止める。

「貴方それ、ご覧になったんですか?」

鬼は、腕時計を右手に付ける。いつも。

「絶対に間違いありません。
 犯人は寺林組の石岡です。
 約1メートルの
 距離から3発撃ちました。
 見たんです、この眼で。直ぐ逮捕を、、」

◆この「石岡」と言うヤクザ名は、
第242話「すれ違った女」でも、登場します。
しかもこれも拳銃絡み。第242話はスコッチの名作です。
また、太陽にほえろ!PART2でもリメイクされます。

電話ボックスから
遠目で、その寺林組の輩たちが
自分を探しまわる事を見て感じた、この男。

「、、逮捕して下さい。お願いです。」

「貴方誰です!?
 もしもし、あなた誰ですっ!」


井上堯之バンド♫
今度は、
「危機のテーマ スローバージョン」

「直ぐに石岡を、っ!
 でないと俺は殺されるっ!

 奴は俺に見られた事を知っているんです。
 頼んます!」と電話は勝手に切れた。

「まだ、夕刊も出てないのに状況説明。
 時間も正確だ。これは本ネタだぞ。
 兎に角、別件で石岡を逮捕しよう。」と鬼。

◆石原裕次郎は、
上記の「これは本ネタだぞ」のように、
「ナ行」と「タ行」さらに「タ行」濁点。
またさらに続く「サ行」濁点、、の続く単語が
この裕次郎の発音は上手く聞き取れない。

◆松田優作が四年後1977年に、
岡田プロデューサーに、新たな新人として
推薦したロッキー木之本亮も、
「サ行」の発音は苦手だったようだ。
これは、石原裕次郎が木之本亮に
面と向かって指摘していた。
「お前、サ行の発言に手こずってるな」と。

未だに「何を言っていたか?」
45年前の放送の、
山村の傑作主演回「偶然」で、
逮捕した犯人の前で、取調室で話した、
証拠品のジュラルミンケースの前で。
彼の台詞が聞き取れず、理解出来ないままである。

筆者の当時19歳息子(現在22歳)にも、
聞いてみたが、この時の木之本亮の台詞。
「何言ってんの?わからへーん?」と。
◆誰も、理解出来ない筈ですよ、この台詞は。
◆そもそも、何を発音しているのか?
判らないんだから。

皆様も、ビデオやDVDをお持ちならば、
上記「偶然」をご確認ください。

木之本亮さん。何を言っていたのか、
教えて欲しいです。どうかお願いです。
このブログを見ていたら、
教えて下さーい。貴方が話した台詞で
45年間、筆者は頭を悩ましているのですから。
それで、ウルトラマンダイナ。
スーパーGUTSの隊長がつとまりましたな?
◆ウルトラマンシリーズ
隊長役の最高齢だった、元ロッキー刑事。
当時48歳だった筈です。


脱線ばかりで、スミマせん。
ストーリーを続けます。

「しかし現場付近の聞き込みも、、
 手応えが無いですし、、」とゴリ。

「ゴリ!しかしもクソも無いよ。
 目撃者がいるんだ。ソイツを探し出せば
 万事解決だ。なあ!

 二課行って、何とかネタを探して
 しょっ引いて来い!」

「はいっ!」とゴリは即座に退出する。

「あー。山さん。
 もう一度現場付近の聞き込み捜査の
 やり直しだ。」

鬼の口から、山村の顔へ。
山村は隣りの純を見遣る。
ツーと言えばカーだ。
純も、これから何処に行くか。
もう分かっている。
◆これも、台詞なし太陽!流の演技だ。
この間、ものの二、三秒だ。


画面は変わり、
寺林組の事務所。

◆この事務所は、
ジーパン編。第54話「汚れなき刑事魂」で、
撮影に使用した事務所だ。
皆様、覚えてますかあ?

即ち、
ナカヨシビル2Fの戸川興業(即ち戸川組)
の事務所だ。
壁や机、ソファ、パーテーションなど
そのまま使われていますね。しかも、
前回では、
ストリップ興業やエロ映画のポスターだったが、
今回では、プロレス興業の公演ポスターが
この事務所には貼られている。
当時実在した坂口征二のプロレス公演だ。
※ほんの一瞬しか映りません。

その第54話で、
純の空手二段の長い手足を繰り出して
チンピラ5、6人を蹴散らした。
その腕前が初披露された、あの回です。
◆当然、その後の一係室でゴリに怒鳴られ、
視聴者も、純が空手二段だと云うことを
知る事になる。
◆俺たちの勲章では、松田演ずる
中野裕二は、空手三段だと、いう設定だった。



こいつが、狙撃犯人だ。

「うちの帳(とばり)だ!
 時々出入りしてる、
 ボケヤスって言う野郎だっ!
 何ーぃっ!馬鹿やろー。
 見つかるまで捜すんだ。
 捜すんだよー。」

そこに、野崎とゴリが
乗り込んでいく。

「よおーっ!暑いねー」と野崎。

「石岡さんだねー。
 ちょっと署まで来てもらおうか。」と

長さんのすぐ右に、狙撃犯人。

警察手帳を翳して、
「だいぶ慌てて、誰かを捜しているようだ
 ったがねー。」

すぐさま逃げ出そうとする石岡に、
「ゴリさーん」と大声で。

奴の進行を塞ぐ、肉体派体育会系ゴリ。
輩数人を倒して、石岡をぶちのめす。

「恐喝容疑の逮捕状だ!
 とりあえず別件逮捕って云うやつだな」


調べ室では、
「いい加減にしろっ」とゴリの怒号。

「おい、いつまで黙(だんま)りを
 押し通す積もりだ?」

じっと睨む野崎。

「石岡あーっ。お前、昨夜の11時ごろ、
 何処で何してたんだー!」
「おーい?何してたんだよーっ!」

調べ室から一係。


鬼を囲むが、野崎、ゴリ、殿下は、
自分の台詞のみに、鬼に近付いて
カメラに入り台詞を云う。


「鑑識の結果は?」と鬼。

「拳銃は38口径 のS&W。
 えっーと、前科はありませんねー。」
と野崎が報告。

「石岡のアリバイも一応成立しました。
 勿論捏ち上げでしょう、がね。」とゴリ。

「石岡のアパートからも
 何も怪しいモノは出て来ません。
 凶器も衣類もその日のうちに
 処分したものと思われます。」
と殿下。

「手掛かり無しか?」と鬼。
「長さん。石岡の反応は?」

台詞を話しながら、お茶を貰いにいく
ジーパン時代の長さん。
これは、珍しい光景だ。

「あー云う連中は、
 本当に身に覚えが無ければ、
 もっとギャーギャー喚きたてるもんです。」
 待ってるんですよー。アイツら!」

「待ってる、?」と殿下の声だけ。

そこで、湯呑み茶碗を
クミに淹れてくれと、身体で催促をしている。

クミも言わずもがな、
用意した急須を持ち、立ちながら。

こんなシーンも、マカロニ編、ジーパン編
では初の演出だ。
これも、野崎、クミの息が合ってないと
一発での撮影はOKとはいかない。
これも、太陽!流、クミの「台詞なしの演技」。


そして、野崎の次の台詞。
お茶を貰いながら、

「証拠は残さなかったし、
 アリバイも作った。あとは
 目標者さえ居なくなればいい。」

「あ、あーありがとう。」と
お茶を注いだクミに、礼をいう。

「その通りだ。
 奴らが目撃者を消すのが早いか?
 俺たちが保護するのが、早いか?
 別件逮捕だけに、時間制限もある。
 のんびりしている訳にはいかんぞ。」
と鬼は云う。

この鬼の台詞の間は、

現在の彼女(数年前)
目鼻の配置が、可愛い青木英美。

クミの顔が、ずーっとクローズアップ。
次回予告からスタートして、
7分26秒→7分45秒までの
ほぼ20秒間。鬼の台詞にクミの顔。
鬼の顔は画面には映らない。

こんな演出も初めてだが、
各自の台詞を云う時に、
各自の姿が鬼に近付いてくるカメラへの露出も、
流石な斎藤光正監督。

またいつぞやの回に近い撮影方法。
入り口からパーテーションを映像に絡めて
鬼を向きカメラは左右に動く。
こんな撮影は、後期の太陽!では殆どない。

また、石岡の取り調べも、下からの俯瞰で
ゴリを捉えるカメラ。
その石岡を睨み続ける野崎。
古い木製の取調べ机が味がある。
前回の、港署の調べ室は、スチール製だった。
七曲署では、経費が、かなり抑えられている。

扇風機も、マカロニ時代では、二台あったが、
ジーパン時代では、扇風機が一台。減らされている事に
お気付きでしたか。皆さん。


その時に、鬼のデスクの電話が鳴る。
受話器を殿下が取り、鬼に渡す。
山村からだった。

「あー、山さんか?
 何っ、男がひとり消えたあー!?」

「通称「ボケヤス」という男なんですがねー。
 いやあ、ここの砂利屋に通いで来てた
 労務者ですう!」声をかなり大きくする。

◆周囲のダンプや騒音が煩くて、
山村は、鬼の声が聞き取れない様子。
このような、映像化も珍しい撮影。
露口さんも、現代劇よりは、時代劇口調
のような話しぶり?

「そいつが、現場検証の終った直後に
 ここに現れて、仲間に貸していた
 2000円を取り立てて、
 慌てて消えてしまったっつうんです。」

「あはーあーっ?
 住所も本名も、分かりませんわあーっ!」
と、でかい声を張上げる山村。

その時、山村は此方を監視している、
どうもヤクザ風チンピラ輩を発見。


井上堯之バンド♫
「サスペンスI」より。一部間奏。

「了解っ、何とかします。」

画面は変わってパチンコ屋。
山村と黒メガネが、、。

「山さん。こういうのが、仕事だったら
 最高ですねー、こりゃあ。」と純。

パチンコ好きの純は、
赴任以来、仕事で初めてパチンコ屋に
出向いていた。

パチンコ屋のBGMは、
森昌子の♫「同級生」

◆そして、山村も黒サングラス🕶。
このサングラスは山さん、よく似合ってます。


アウトロー40男、物静かな山村の代名詞。
チンピラ純とは違う。男の生きて来た俗界を、
男臭さを感じるサングラスです。


◆◆ちょっと休憩◆◆
ここで問題です。

Q問題その一
一係刑事が、サングラスを在職期間で
一度でも掛けなかったのは誰でしょうか?

◆皆様ご存知でしょうか?
下に挙げるこの中の一人だけ、
一度でも掛けることは有りませんでした。

まずは、ボン加入前の
167話「死ぬな!テキサス」までの
初期のこの五人。
野崎太郎、島公之、石塚誠、内田伸子、三上順。

内田伸子は111話で純と結婚準備のために
退職しますが、
この中の一人だけが、掛けませんでした。
あとの四人は掛けています。
これが判る人は、相当な太陽!ファンです。
簡単なんだけど、なあー。


Q問題そのニ

また、三上順のみ、一度しか
サングラスを掛けませんでした。
※よって上記の五人からは外れます。

それは第○話か?
これを答えることは出来ますか?
これは、相当に難しかろうと思います。
テキサス時代前期(ボン加入前)の六人体制を
全て見ていないと分かりません。

ここで、休憩終わります。
正解は、いずれこの蘊蓄話で。


ストーリーに戻ります。

山村は、タバコを咥えながらパチンコしてた、
純の台からパチンコ玉を手で掬(すく)い、
山村の情報屋に、渡したのだ。

「ちょ、ちょっと何、何をするん、、」と純。

「どうだ?見つかったか?」と山村。

情報屋の台詞。
「●★▲、、」何を言ってるのか判らない。
BGM森昌子の「同級生」が耳ざわり。

「いやあ。何でもマズイことをやって、
 トンズラしたらしい。」
この後の台詞、、が●★▲、、。

ショートピースの空箱に、

お札を詰めて、情報屋に渡す山村。
二、三万円くらいを折って渡すのを見る純。
当時、山さんの給料はたぶん警部補としても、
手取り15-17万円くらいしかないんじゃ?この頃は。
奥さんの病院代もかかるだろうに。
心臓病の薬は保険が効かないんじゃ?


この情報屋は(鮎川浩)。

この時、49歳。
2023年には100歳の筈だが、
彼の没年月日は不詳。
NET特別機動捜査隊に長く出演経験がある。

太陽にほえろ! (NTV / 東宝)では、
準レギュラーとは言えないが、全四話のみ。

第57話「蒸発」(1973年) - 情報屋
第115話「一枚の名刺」(1974年) - 与田分章二
第364話「スニーカー刑事登場!」(1979年) - 麻薬の売人
第390話「二十歳の殺人」(1980年) - 平田の電話友達


山村は彼の住所を聞き出し、

必ずと言っていいほど、小田急電鉄の近くがロケの場所だなあー。

「ボケヤス」の住まいする  汚な荘 を家宅捜査。

外から覗きに来る大家に
「何やってんだい!」

「三日も留守になってますから、
 中は埃だらけじゃありませんかあ?」と
大家らしい親父。

汚い文字だが、かなりの高等教育を受けた者の書いた文字?

「競馬に、山頭火ー?」と山村。

撮影に使われたのが、↓の句集。

【定本 種田山頭火の句集】を発見した。

「何者ですか?これ」と純。

「乞食同然の一生を送った
 放浪の俳人だ。」とは山村。

◆彼について、調べてみました。
以下にリンクのみ。
別サイトに飛ばします。

市井の哀れの中で、生き抜いた
現実の俳人を知っている山村精一。
架空のストーリー(第57話)に登場する、
現存した俳人だ。


架空の設定だが、太陽にほえろ!登場人物。

山村精一も両親に早く死に別れ、
幼少期から親戚をタライまわされ、
他人に蔑まされながら、それでも
これまで生き抜いて、育まれた強さは、
貧しくも、尚小さくも未来への希望を失わない、
他の現実の生者から学びとってきたのだ。

この世を渡っていく不屈さを
彼、山村は教鞭者としてきたのだろう。

そして、周囲に反対されつつも、
(これ↑は以降の65話で、鬼が言った台詞から)
妻高子という生涯で最高の伴侶を得る。
妻が死んだほぼ一年後、↓第250話で、
(最高の奥さん)だったと、ゴリが言っています。


山村が持ち上げた句集から

畳に落ちて来たのは、
江原行夫(山本耕一)の免許証。

「この免許証、二年前に期限が切れてるな。」

と云い、純にそれを渡す。

場面は、その江原家。
玄関に佇み、ブザーを押す山村。

三鷹市中原一丁目13の番地が確認できる。

どうも留守らしい。


純は

「こんな家がありながらねー、
 どうしてあんなボロアパートに一人で
 住んでんですかねー?」

「兎に角、砂利屋の連中は、
 あの運転免許証の写真を見て、
 ボケヤスと証言したんだ。
 何かの理由で、偽名を使っているのかも
 知れんな?」

そこに、山村の背後で、純が
門のロックを開けようとする音。

「おい、止せ。」山村が止めさせる。
「あ、おー、いーっ」と純。

そこに、、「もし、、」と女の声。


夫人である江原邦子(長内美那子)と
息子の和男が帰宅してきた。

井上堯之バンド♫
「青春のテーマM2 -信頼-」かな?
この57話で、シリーズ初演奏さる。

「何か、ご用ですか?」と夫人。

「あなたー?」と山村。

「あたし。江原ですけど。」

「こちらの、、。」と山村。
「あ、は。こりゃどーも」

と頭に手をやり、
純が勝手に門を開けようとした事に、
バツの悪そうな顔をする山村。

「私。山村と申しますが、
 江原行夫さん、ご在宅でしょうか?」

「こちら、江原行夫さん、ですね?」

「パパ死んじゃったよー。」
二人して、仰天の顔の山村と純。

「そうだよねー、ママあ。」

「すーー。
 お亡くなりに、、なった?」と山村。

「ええ。」と夫人。

「先月、一周忌を済ませました。
 あのおう、どちらの山村様で、、?」

無言で警察手帳を翳す山村。

「警察っ?」と夫人。


場面は、表玄関から
居間に通された二人。

「間違いなく主人です。」

ボロアパートで発見した二年前の免許証を、
夫人は確認したのだ。

井上堯之バンド♫
「追跡のテーマII スローバージョン」

このテーマは、追跡のシーンではなく、
登場人物の、揺れる心のシーンに間奏される。
当初は、シンコのテーマ風に作曲されたもの。
追跡中のテーマは、
殆どが「怒りのテーマ」となる。


「どうして、これが、、」

「そ、それは、ですねー。」と純。

それを抑えて山村は、
「奥さん。
 どうしてお亡くなりになったんですか?」

「それが、よく分からないんです。
 多分、転落死だろう、、と。」

「何処で、ですか?」

「信州の山の中です。」
「信州?」

「え。」
「それは、お仕事でお出掛けの時ですか?」

「実は、主人は、三年前から、
 行方不明になっているんです。」


◆ということは、1970年大阪万博の年。

「蒸発って、云うんでしょうか?」

純は出された茶を飲むのを止め、山村を見る。

「警察に捜索願も、出しましたし、
 随分捜しました。
 でも子供や、あたしの生活もありますし、
 働かなければなりませんし、、、
 二年経ったある日。
 警察から連絡を受けました。
 身元不明の白骨死体が、、、。」

「何故、ご主人だと分かったんですか?」

「残っていた背広やセーターも
 主人のものでしたし、
 背格好も、、、刑事さんまさか?
 あの人が生きているなんて、云う事が?」

落ちたハンカチにも、演技させている57話。
邦子の驚愕の気持ちを代弁させている。

「いやあ、まだ何とも、、、」

「あの人、、山が大変好きだったんです。
 だから、、」

◆以降、四年後に登場する、ロッキーのような、
本格的な山登りではないにしろ。


「ママあーっ!ブランコの鎖が
 壊れちゃったよー。 

 直してよー。ブランコ、ねえー。」和男。

「僕!何処だいー」と純。

「あすこ、だよー」
※この台詞も、あそこ、とは言ってない。
「ううーん」

庭のブランコ。

庭にブランコ。かなり裕福な家庭を
視聴者は想像してしまう。

なるほど、鎖が絡まっている。
工具箱を足で蹴って開く純。

「お兄ちゃんも、刑事なのおー?」
「ああー。変か?」

「変じゃ無いけど、
 拳銃も持ってないじゃないか?」

「まあねー。新米だからな、俺は。
 あの人と違って、、」
「そうかあ。新米だからかー」

新米の意味を分かっているのか?
この幼稚園児は?

◆新米でも、身に付けなければならないが、
自分の曲げない信念は、幼稚園児に話しても
理解して貰えないだろう。
もう少し大きくなってから、だな。と。

◆しかも、幼稚園児が拳銃って言うか?
ピストルと言うのではないか?

「そーだ、よ。」


そこに、見知らぬ女性が、
庭を横切り家の中に。

この子も、生きていたら今は、55-56歳か?

「あれ、誰?」と純。

「生活の足しだよー。
 下宿してるお姉ちゃん、さ。」と和男。

「あ、そおー」と純。

「ただいまー。」

「お帰りなさい。
 下宿人です。女子大生ですの。
 生活の足しにと。」と夫人。

「ほーおー」と山村。


場面は、一係。

「じゃあ、ヤスっさんと、江原行夫は
 同一人物って見ていいんだな。」と鬼。

「その可能性は、非常に強いですねえ。」と山村。

「ですが、その写真は小さいし、
 汚れてますからねえ。」
とは野崎。
「まだ断定は出来ないでしょう。」

この頃は、推論の山村に対して、
事実だけを重んじる捜査を主張する野崎。

◆ほんのちょっとの臭いを外さない山村の勘、
即ち「ヤマカン」と、
◆徹底した捜査の常道を身に着けてきた、
「長カン」。

北署時代で鬼デカの谷さんに
徹底して叩き込まれた刑事の真髄。
※北署時代の長さんの先輩鬼デカの話は、
以降ボン、ロッキー時代でのお話です。

どちらも間違いではない。
特に長さんは、オカシイと思う処は
徹底して、誰が何と言おうと追求します。

そんな長さんは筆者も好きです。
山さんとともに、筆者の生きる指針として
参考にしています。



急に立ち上がって、、

「ボケヤスって言う男。
 髪型も変わっているし、顔に傷跡が
 あるそうですから、な。」と山村。

「しかし、その奥さんも妙ですねー。
 蒸発した二年後に同じ服をきた
 白骨死体が出てくれば、まあ
 誤認するのは仕方ないとしても、
 亭主の写真や持ち物を全部捨てちまう
 とは、ねー。」と野崎。

「女って言うのは、
 意外と冷たいもんですなー。」と。

「あらっー。失礼ねえー。
 そんなこと有りませんよー!」と


鬼に立ったまま、茶を淹れているクミが、
大反論する。

「あたしだったら、アルバムは大切に
 取っておきますわー。」

「おい、クミちゃん?

 お前なあ、我々の話にクビを
 突っ込み過ぎるぞー。」と鬼が。

◆石原裕次郎は、不精髭が伸びてる。

「スイマセン?!

 あっーそうだ!分かったわ!

 その人の奥さん。きっと新しい恋人が、
 出来たのよー。」

このクミの発言、発案に、

山村は、
「そーだ!
 クミちゃん?やったぜえー!」

「32歳の若さで、しかも美人だ。
 もう一度幸せを掴みたいと思うのも、
 当然かも知れん!」

「そーよ。当然の権利だと思うわー!」

とクミが。

やっと自分の提案が山村に採用され、
鬼も黙った。
野崎も気付かないことをクミは。

タバコぷかぷかの荒くれ野郎たちの
堅まっている頭では、思いも付かない事だ。
女性であるが故の柔らかい発想だ。

しかも当たり前な、
現代女性のインスピレーション。
尚、この回もシンコは欠場である。

尚、クミ同様に、3代目浅野ゆう子、お茶汲みチャコが、
發した言葉が、捜査の進展を決する台詞を発する。
第123話がある。それはテキサス時代の傑作名作。


井上堯之バンド♫
「マカロニ刑事行動のテーマ。
 アコースティックギターバージョン」

各自の聞き込み。
ボケヤスの写真を持って、

ゴリは砂利屋近くの食堂で。

また、天井からの撮影の斎藤監督。


野崎は山手線脇の住宅地で、

暑い中、西瓜をぱくついている労務者に。

山村は工事現場で。

そして、タクシーを止める山村。
右手を大きく上げて走りながら止めようとする。
このスタイルは、最終回まで変わらず。

光化学スモッグが、空気中に漂っている映像だ。
これがそうです。最近の若者は
光化学スモッグを、知らないでしょうが。

殿下は、競馬新聞を検討中の兄さんに。

一方で、江原家。
純は、幼稚園児、和男と一緒に遊んでいた。

起き上がりロボットと戯れる純。
それを見ている和男。

「面白いなあー、コレ。」

「初めてなのおー?」

「倒れても起き上がるんだなー。」
「遅れてるうーっ」と和男。

◆このロボットは、
第64話「子供の宝・大人の夢」でも登場する。
そのロボットそのもの、ではないが。


今日は、山村が当直の晩。
深夜、午前1時30分を過ぎている。

◆ここからの映像は、
第一ステージで、
斎藤光正監督の腕の見せ所。

また、天井からの映像。

タバコにマッチで火を付けた山村。
一服の煙が扇風機が吹いた風で
何処とも無く、煙が散らばっていく情景。
◆こんなシーンは、太陽!初。

まだ夜でも暑い。
なのに上着は脱がない山村。

山村が扇風機のダイヤル式強弱をより強くする。
◆エアコンならば、こんな情景は
撮影出来ない。
◆署の経費がないからか、扇風機は一台のみ。


井上堯之バンド♫
「サスペンスII の2」が間奏。

「身元不明の死体が、
 一年間で二万近く、かあ?」
「蒸発かー!?」

◆またまた登場の、天井から吊り下げた
蛍光灯が、山村の推理を照らしている。

◆序盤のシーンでは、
蛍光灯が無かったことに、お気づきでしたか?
このシーンのみ、吊り下げられている、か。

家出人確認資料。その中の一人。


「江原行夫」昭和11年5月生まれ。
現在37歳だ。
ひょっとして、江原は蒸発したのでは?
そして、死んではいない。
我々の捜査線上に浮上して来ている。
あの男が。

やはり、この「ヤマカン」は的中していた。
山村の勘だけに。

しかし、江原に一体、何が起きたのか?

山村の影と扇風機の影が映像化。
真実を揺るがし、更に歪ませる映像。

「身元不明の死体が、一年で二万近く」
◆山村の台詞では、
全てが蒸発者だと云う訳ではないから念の為。
何かの事件での当事者か、被害者で
ある場合もなくは無い。
◆何処かの国が拉致した被害者かも。

場面は変わり、また江原家。
日が変わっても、また純は和男と
遊んでいる。

井上堯之バンド♫
「サスペンスII の2」は継続して間奏中。

船のプラモデルを制作中の純。

「俺も、父ちゃん居ないんだぞ。」と純。

「へえー。やっぱり蒸発したの?」
「? ママが言ったのか?蒸発って。」

「うーうん。近所の子がそう言ってた。」

純の黒サン(サングラス)を掛けて
部屋で純の隣りで、遊んでいる。

夫人が、部屋に来て、
「すいません。柴田さん。
 いい加減にしといて下さいな。
 一人で遊ぶの、慣れていますから。」

「いいや。俺がプラモデル作るのが
 好きなんですよ。」と
船のプラモデル制作に夢中の純。

◆男は誰でも、プラモデルが好きです。
しかし、近頃は、街のプラモデル屋が
殆ど無くなったから、寂しい。
京都ではJoshinの模型コーナーに
行くしか、おまへん。

「すいませーん。彼方にお茶が
 入りましたから、どうぞ。」

「ケーキある?」と和男。
「あるわよ。和男ちゃん、
 手洗ってらっしゃいー。」


井上堯之バンド♫
「青春のテーマM2 -信頼-」
2回目の間奏。

プラモデルを持ちながら、
部屋を出ようとするとき、

その時に、夫人は、
「柴田さん。本当に、、
 主人は生きているんでしょうか?」

プラモデルをタンスの上に置き、

「もしも、生きているなら、
 大丈夫ですよ、奧さん。
 もしも生きているなら、きっと、
 俺たちが探し出します。
 ご馳走になります。」と一礼。

しかし、夫人は
純が座っていた和男のベッドに
腰をかけ、もの思いに耽りはじめる。

【もう探さなくてもなく良い。今更。
 新しい生活を始めようと準備している
 ところなのに。。】と、

純の想いとは、裏腹に。
純にはまだそれが伝わらないのだ。


23歳の世間を知らない若造の想いと、
32歳の夫が生きているかもしれない若妻の願念。

そして、もしも再会する事にでもなったら、
私はどう対応したら良いのかと
その不安と疑心暗鬼が
勝手に心の中で持ち上がってくる。

新たに、生活をしていく為に
見つけた男が、夫の他にいることを、
自分の顔を見た時、夫に悟られないか?

もっと言うと、
夫を自分から裏切った顔を
こっちから見せたくは無い。
どうしても、秘密裏に隠していた事は
自分の顔に出ている筈だ。

ここが、どんな女にも共通する、
女のウィークポイントだ。(筆者の経験)


その女を愛していればいる程、
男にはそれが解るのだ。
だが、ルートコーズを作ってしまったのは
やはり生活を乱した男自身にあるのだ。

この時の、ゲスト女優「長内美那子」の
太陽!流、台詞なしの演技。
彼女の演技は巧い。この配役は
彼女で無ければならなかった。

「なあ。パパが帰って来ると嬉しいか?」

「嬉しくないよ。だって、パパ二人も
 要らないもんー?」

「二人?いー」と純。

「だって、よそのおじちゃんが
 もうじきパパになるんだもん。」

「小阪のおじちゃんも、
 お兄ちゃんと同じくらいに、
 プラモデル作るの、上手なんだよ。」

「そ、その小阪のおじちゃんって、
 ママの友達かい?」

「鈍いなあー、お兄ちゃん。
 恋人に決まってるじゃないか。」

「恋人おーっ?」と仰天の純。

◆部屋では、
純の黒メガネをお茶目に掛けている和男。
でも、和男の部屋には、当時放送していた、
ウルトラマンタロウのお面が。


夜に、家を出て
一人で歩く夫人を、純は尾行していた。

何処に行くのか?
喫茶店で、その問題の小阪(松本朝夫)と逢引。

「何だって?ご主人が生きてる?」

「見たのかい?」「会ったのかい?」
「黙ってちゃ、分かんないじゃないか?」

「探してんのよ。警察が、、」
「警察、、?」

「いつかは、、こんな事が
 起こるような気がしてた、、」

ハンカチを差し出す小阪。
顔を伏せて、泣き出す夫人。

「あなたと会った時から、
 生きているのでは、、、?」と

やはり、後悔と胸騒ぎがした夫人。
夫に対しての裏切りの不安に苛む。

「しかし、今頃になって、、そんな。」

「だって、生きているんですもの、、。」

「和男だって、あんなに懐いてるのに。」
「君だって、僕だって、何も悪いことは
 しちゃしない。」

パーティションを境に、
純は二人の会話を、よく聞いていたのだ。

「この先、私はどうすればいいの?
 どうすればいいのよ。
 どうすれば、いいのよー。」
号泣した。

他のテーブルでは、
「何があったの?」
「何を泣いてるの?」と
ヒソヒソ声が聞こえ来る。


場面は、変わって柴田家。
第53.54話についで、57話が
三回目の登場となる。

たき(菅井きん)は

「お前、甘いのが良かったんだろ?」
紅茶だろうか、砂糖を入れて
アイスティーを純に渡す。

「明日も、そのお宅に張り込みかい?
 他家(よそ)のお宅に伺ったらねえ、
 きちーんとしてなきゃ、ダメですよ。

 矢鱈、刑事風を吹かして嫌われると、
 出来る仕事も出来ないように
 なるからねー。気を付けないと、、」

と、純のジーンズ上着に、
アイロンを掛ける優しい母、たき。

「でも、どういうんだろうーね。
 その奥さん。」

「ねえ。母さん。
 何故、母さん。再婚しなかったの?」

「嫌だよー。何言ってんだい!今頃。

 別にね、、再婚がイケナイって云う訳
 じゃないのよ。誰だって幸せになる
 権利はあるんだからね。」

「だけどね。母さんには、そんな人が
 現れなかっただけなんだよー。」

「はーはーん!」と純。

「嫌だねー。親 冷やかして、、
 汗が出ちゃうじゃないか、よー。全くう。」


さっきの、純が手にもつ、
アイスティーを取り上げ、
一気に飲み干してしまう。母たき。


※そうだわーなあ?、と納得し、
口元が緩む。

やはり、死んだ親父を
今でも好きなんだ、と。
そんな母が好きな純。
第85話「親父に負けるな!」で、
二人して亡き父の墓参りをするシーンがある。

やっぱり、甘すぎたかしら

夜の風に吹かれて
縁側の風鈴が鳴いている。

「それにしてもさあ、
 その江原さんって言うひと。
 どういう積もりなんだろう、ね。」

「そんないい奥さんと、子供が有りながら、
 家を出たっきり、帰って来ないなんて。」

「そんな奴は、何処かで
 のたれ死んでっちまえば良かったんだよ!」

純は、自分が片親であるが、反面
自分はしっかりしている積もりでも、
今は父が居ないあの子が不憫だと感じている。

まだ、幼稚園児の和男。
自分を親父代わりの様に、置き換えて、
和男くんの行く末を心なしか、心配している。

ここも、情に厚い23歳の柴田純。
子供と動物とお年寄りには、優しく接する。
このむさ苦しい、ボサノバ頭の空手二段。
マカロニの一つ歳下。

ここまで
次回予告から22分25秒。
全編のほぼ、1/3を終了します。
ここで第一ステージは終わりとします。

優秀作だけに、内容が濃くて、
46分の放送時間では物足りなさがあった。
ために、当蘊蓄話では、第57話は、
※第三ステージまで続けるかも。

16960字


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