影がいい


影がいい。光ではなく影がいい。

決して光が嫌いなわけではない。実際写真を撮る際に光は大活躍してくれる。自然光は凡人の撮る写真もいい具合にしてくれる。

いや、そんな話をしたいのではない。光はキラキラしすぎて私のような人間にはとても眩しすぎるということだ。

影がいいとは言ったが、真っ暗闇のような暗い影が好きなわけではない。
“美しいものが生み出す影”が好きなのだ。

美術が好きだ。ただ美術に関する知識を詰め込めるだけの優秀な頭はないのでかろうじて有名な作者名を少し知っているくらいで作品名もどれが何派なのかもその歴史も何も分かっていない。
(こんな状態で好きと語るなと言われてしまいそうだが)

年末あたりに出る“来年注目の美術展”のような記事を見て気になる企画展の会期をスケジュールアプリに入れる。まだまだ先だなと思いながらそれなりの日々を生きていたら気づいたら会期が迫っていることがよくある。

休みの日に美術館に行き、特に好きだった作品のポストカードを買う。帰ってそれをポストカードサイズのファイルに入れる。もちろん本物とは全然違うのだが、自分の目で観た作品たちが時を超えてファイルに集められる。この時間がたまらなく好きだ。

ようやく話を戻すが影を好きになったきっかけは美術館で出会った一つの作品だった。

その作品が ミス・ブランチ 。
この作品は私の心を大きく動かした。

中に薔薇が散りばめられたアクリルで出来た椅子の作品なのだが実物を目にするとその場に立ち尽くし言葉を失ってしまうほど美しい。

初めて見た時、私の心は完全に奪われてしまった。これ以上に好きな作品を今後目にすることはあるのだろうか、本気でそう思った。

この作品は影までもが美しい。
アクリル内の薔薇の影が地面に写る。それがまた美しくなんとも言い難いほどに作品を魅力的にさせていた。

もしもこれを読んで気になってくれた人がいたらお願いだから実物を見てほしい。写真でも十分綺麗だが実物は別格に美しい。

その後他の企画展などで漆やアクリルなどを使った作品とその影を見てはその美しさに惚れ惚れしている。

モノを照らす光から影が生まれ、その影がモノをさらに魅力的にする。美しい関係だ。

これからも美しい影を見つけていきたい。
おすすめの影があればこっそりと教えてもらいたいものだ。

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