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【追悼】 デビッド・サンボーン逝く、歌うサックス

サックスの巨匠、デビッド・サンボーン(David Sanborn)の訃報をネットニュースで知った。78歳、前立腺がんによる合併症と報じられていた。もう今後は過去に残した録音だけで楽しむしかないと思うと、やはり寂しい。

聴けばすぐにサンボーンとわかる独特の音色。「サンボーン・スタイル」と呼ばれた、歌い上げるようなフレージングが「泣きのサックス」「泣きのサンボーン」と親しまれ、唯一無二の演奏スタイルを貫いた。

★★★

サンボーンとの出会いは強烈だった。ジャズの帝王マイルス・デイビス(Miles Davis)の音楽が好きで、その縁でギル・エバンス(Gil Evans)を知り、60年代後半に活躍して27歳で早逝した天才ロックギタリストのジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)を偲んでギル・エバンスが1974年に制作した追悼アルバムを聴いた。ジミの生前、ギル、そしてマイルスとの共演アルバムが企画されていたのだ。

冒頭1曲目に収められたのがジミの名曲「Angel」。歌い上げるサックスを聴いて、「これ誰!?」と衝撃を受けた。ソロ・デビュー前のサンボーンをフューチャーした4分ほどの短い演奏だったが、若くして逝ったジミを偲ぶに相応しいと「歌」だと思った

若きサンボーンが残した「泣き咽ぶサックス」を再び聴いて、ジミ・ヘンドリックスではなく、今度はデビッド・サンボーン自身の死去を偲んでいる

★★★

1945年7月30日フロリダ州で生まれ。幼い頃から小児麻痺に悩まされ、医師の勧めに応じてリハビリ目的で始めたサックスだったが、すぐに夢中になった。ジャズやブルースといった米国発祥の音楽に強い影響を受けて、10代半ばから多くのプロの演奏家たちと共演し、技術を磨き続けた。

実力が認められ、1975年に大手ワーナー・ブラザーズと契約してファーストアルバムを発表。これ以降はずっと第一線で活躍を続け、グラミー賞を6回受賞する栄誉も手にした、サックスの巨匠と呼ぶに相応しい人だった。

素敵な音楽を数多く残してくれて感謝しかない。

お気に入りのオリジナルアルバム「upfront」


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