【時事抄】 企業型DC移管手続き忘れが急増中、情報格差は国のせい?
拠出した「掛金」と「運用収益」の合計額をもとに個人毎に給付される年金額が決定される「確定拠出年金」、略してDC(Defined Contribution Plan)。米国の税法401k条項の特典を活かした企業年金制度をモデルに、2001年10月に「確定拠出年金法」が施行され始まりました。開始当初は「日本版401k」とも呼ばれていましたが、もう聞くことはありません。
施行から20年が経ち、掛金額と商品選択に応じて、個人毎の運用成績に大きな差が出ています。積立期間中の運用成績によって将来の給付額が変動する仕組みだからです。(私が勤めた会社は06年に制度導入し、私は掛金上限まで拠出し各国株式に全振り、運用資産は掛金総額の倍以上になりました🤗)
制度の中身を知らない人がまだ多いようです。日本経済新聞に掲載された記事を見てみます。
<要約>
転職時に企業型確定拠出年金(DC)の移し忘れが急増している。22年度末時点の企業型DCの元加入者で118万人、資産額は2,818億円に上る。この10年で3倍超に増加していて、厚生労働省も対策を検討する。
企業型DCで積み立てた資産は、転職等で会社を移る時には、転職先の企業型DCや個人型DC(iDeCo)に移管して、資産運用を継続できる。ただし、会社を離れた月の翌月から6ヶ月以内に移管手続きが必要だ。仮に手続きを忘れると、資産は国民年金基金連合会に自動移管される。移管された資産は運用されずに保管だけされ、さらに毎年624円の管理手数料が差し引かれる。
運営管理機関連絡協議会(東京)によれば、22年度末時点の企業型DCの加入者数は805万3500人、総資産は18.8兆円。そのうち自動移換の対象になった人数はその1割強、資産では1.5%に相当するという。
厚生労働省は状況を重く見て、厚労相の諮問機関である社会保障審議会で改善策を議論する。3月の部会では管理手数料の引き上げによって対応を促す有識者の案が明記された。また加入資格失効後の資金の移し先をあらかじめ決めておく案も提起されている。
(原文936文字→500文字)
企業型・個人型DCの加入者都運用資産額は右肩上りで増加しています。しかし24年から新NISA導入され、DCよりも新NISA投資枠へ優先的に投資する人が多いようで、今後はDC加入者の伸び悩みが見られるかもしれません。
確定拠出年金は、原則60歳まで引き出せないことがデメリットだと言われます。しかし私自身の経験を鑑みると、「60歳まで引き出せない」ことがむしろ大きなメリットだと思いますね。特に投資初心者にはとってはそう。
それは相場暴落時でも投資商品をもち続ける強制力があるから。上述の通り、2006年に積立て開始した私の投資信託(Index株式)は数年でリーマンショックに見舞われ、更に数年後には東日本大地震が起こり、運用資産が半減するような含み損になりました。
とはいえ拠出金は引き出せない。悪化した運用成績はもう見ないようにして、定期積立設定はむしろ安く買えるのだからと変更しないで放置したままでした。その後ようやく相場が戻って少し利益が出るようになっても売却できず、黙って運用を続けるしかありません。動けなかったことが結果的に正解で、60歳まで引き出し不可という制度の縛りが、相場暴落時にも、戻った時も、上昇した時も、ひたすら握ったモノを離さない握力になったと思います。
また掛金拠出額の全額が所得控除対象となり、これも実は侮れません。年間30万円ちょいの拠出額、税負担率が平均して収入20%ほどでしたから、毎年6~7万円を節税していた計算です。20年で120~140万円。けっこう大きい。
長年務めた会社を辞めてからは確定拠出年金をiDeCo(個人型確定拠出年金)に移管して今は海外債権での運用を続けています。退職時に会社から移管案内パンフレットもいただき、退職後には運営会社から「移管手続きを忘れないように」というハガキも届きました。
「しつこいなあ」と感じましたが、移管手続き忘れが増加中とのニュースを見ると周知の難しさを感じます。一方、YouTubeなどを通じて良質な情報が得られる便利な社会にあって、少しの手間を惜しんで「調べない」人々が大勢いることを改めて知ることにもなったニュースでした。
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