□要約
苦しみや悲しみを生きる人は、人目につかないところで静かに己の経験を深化させる。真の幸福を知る人は、世間が注目しがちな場所とは、まったく別なところで生きている。
□本
私たちの社会はさまざまな形で弱い人を「疎外」してしまう。疎外され「生きがい」を失う人、「生きがい」を見失う生活をするなかで疎外されて行く人。
こうした人たちに求められているのは「自分の存在はだれかのために、何かのために必要なのだ、ということを強く感じさせるもの」にほかならない。
本当の意味で何かを「してもらう」ことこそ、「生きがい」の発見へとつながっていく。無用者だと思い込んでいる人の存在を心底必要だと思うこと、そのおもいがその人の固く閉まっていた心の扉を開く。
周囲の人にできるのは、与えることではなく、求めること。
苦しみが人をしばしば自分のなかに閉じ込めるのに対し、悲しみはいつしか他者に開かれていく。
悲しみは「思いやり」の源泉。苦しみのなかに悲しみの光が射してきたとき、他者を招き入れる余白が私たちの心に生まれ、悲しみを通じて他者とつながるという道が、そこに開かれる。