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コムギのいた生活

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7才の若さで悪性腫瘍に侵されていることが発覚してしまった愛犬コムギとのかけがえのない日々。 犬の幸せとは何か、飼い主として出来ることは何か、そして命とは。 少しづつ最後の時に向か…
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#犬の闘病

コムギのいた生活 8 -希望-

コムギのいた生活 8 -希望-

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放射線治療を再開して数日が経ったある日の昼過ぎに大学病院から連絡があった。
出社していた僕は先日お願いしたCT撮影の結果の連絡だろうと思い、会社の外に出て少し震えてしまう手を抑えながら電話を受けた。
O先生からだった。
「先日お話ししたCT撮影の結果なんですが、右鼻腔内全体が白く濁ってしまっていて現状の把握が出来ませんでした。」
「それは腫瘍が進行してしまっているということですか・

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コムギのいた生活6 -長い1日-

コムギのいた生活6 -長い1日-

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隣県にある大学病院は我が家からはかなり距離があるのだが、幸いなことに彼女の実家がその近くにあって、診察時間が朝早いこともあり前日に泊めてもらうことにした。
仕事が終わった後に出発したため、着いた頃には彼女の実家は普段であるならばもう寝静まっている時間になってしまった。
起きて待っていてくれた彼女の姉と旦那さんに迎えてもらい家の中に入ると、何度か訪れたことがあり彼女の家族のことが大好

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コムギのいた生活 5 -癌治療の開始-

コムギのいた生活 5 -癌治療の開始-

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「悪性腫瘍には腺腫とリンパ腫があり治療方法も変わってきます。」
「リンパ腫の場合は抗癌剤治療がメインとなり転移の可能性を疑う必要がありますが、腺腫は転移の可能性は低く放射線治療と切除手術、抗癌剤を状況によって併用して対応します。」
「鼻腔内の場合はリンパ腫の可能性は低いのですが、念のためどちらか検査はしておきましょう。」
上背があり精悍な見た目の腫瘍科のM先生が手書きのメモで図解を

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コムギのいた生活 2 -我が家に来た日-

コムギのいた生活 2 -我が家に来た日-

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2012年の夏、コムギは北関東の自然豊かな地で生を受けた。
産まれたばかりの子犬たちに会うために僕たちが電車を乗り継いでその地を訪れると、コムギは一緒に生まれた妹とともに連れられてきた。
芝生の上に放たれたコムギは傍にいた妹をぎゅっと踏みつけながら起ち上がると遠い空の彼方を凛と見上げた。
降り注ぐ夏の日差しに霞みながらも大地にその存在を刻むかのような凛々しい立ち姿に魅了された僕たち

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