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デマの拡散についてとこの時期聴きたい音楽について

この記事は Bizjapan Advent Calendar 20日目の記事です。タイトルからわかるように、全然違う二つのことについて、それぞれ語ります。

デマの拡散について思うこと

パンデミックで生活のあらゆるものが変わった。すれ違う人全員がマスクをつけて歩いていることに違和感を持たなくなった。大人数での会食を最後にした時を思い出せないし、飲食店は9時や10時に閉まることが当然の事となった。そして、他に大きく変わったものは、TwitterなどのSNSで流れてくる投稿に占める陰謀論的な言説やデマの割合の多さだ。

新型コロナウイルスだけが原因ではないかもしれないが、インターネットでデマや根拠が乏しい情報が急激に拡散される光景を目撃する機会がここ数年増えているように感じる。そして、SNSの普及率が8割を超え、ほぼ全ての人がインターネットに接続する環境を持っている状況で、SNSに載せられたデマが拡散されるスピードや規模は今までより格段に上がっている。そして、例えば今年一月のアメリカの議会襲撃事件や、新型コロナウイルスやマスク、ワクチンについてのデマなどから分かるように、デマが社会の安全を脅かすようになってきている。

デマの拡散は急速に行われ、社会を危険に晒している。しかし、いわば「もう一つのパンデミック」であるデマの拡散を止めようとしている団体や企業は少ない。例えば、Big Tech と言われるようなインターネット上で影響力を持ったり、ソーシャルメディアプラットフォームを運営している企業も社会からの要求に応え、対策を講じているが、情報の共有に制限をかけすぎることと表現の自由の衝突を危惧したり、情報発信にかける制限を強めることによるサービス利用者の減少などを避けるために限定的な対策に終始しているのが現状だ。また、報道社が出す記事などには、どの主張が正しいか言い切っているものが多く、その姿勢が逆に一部の人には、「自分たちを騙そうとしている」と感じさせてしまう。そこで、情報を発信するときに、読者を集めて収益を得る必要がない学生団体であるからこそ、より中立的な立場から、話題になっている問題に対して賛成・反対の両方の意見を提供して、ある立場、意見の真偽を判断するのに十分な情報を発信することができると思った。キャッチーに情報をまとめる方法であるインフォグラフィックス(Infographics)を用いてそれを行うことで、記事などの文章より気軽にその判断に必要な情報が手に入る環境を作ることが目的のプロジェクトが、私がリーダーをしている Disinformation Inhibitor である。

しかし、このプロジェクトを進めていく上で問題になってきたことの一つは、一言で「デマ」と言ってもどの段階を経てデマになったか、また、どのような意図でその情報が流れ始めたかはそれぞれのデマで異なるということだ。
例えば科学的、統計的に見てコロナワクチンとその後の突然死に因果関係が認められないために「因果関係がない」と発表されているのに、それを「ワクチン摂取率を上げるために因果関係がないと主張している」と記事に書くことも科学的な知見から得た事実と異なる情報を、不確かな推測をもとに流している。また、コロナワクチン接種直後の体調不良や、突然死があったという正しい事実から出発しても、そこに不確かな推測を加え、その限られた事例によるリスクを過大評価し、過剰一般化するSNSの投稿なども多く見かける。さらに、デマの拡散は全てが悪意を持って行われているとは限らない。自分に回ってきた過大評価されたリスクなどを「これを一人でも多くの人に伝えて被害者を減らさなければ」という思いから拡散してしまう人も多い。
つまり、多くの意見を乱暴に「デマ」という一言で括って、一般的な、「誤りを正すメソッド」が全てのデマに対して存在すると考え、強引な方法で解決しようとすることは短絡的だ。

もう一つ、デマの拡散に対処する上で重要なのは「この立場が正しい」と断言することの危険性だ。
多くの問題において、真偽の判断をはっきり下せるのに十分な情報が揃っていない。そのような状況で真偽を判断してしまうとそれが誤った情報になる可能性がある。
また、「これが正しい」と強くアピールすることが多くの人の意見を変えることになるとも思わない。そうではなく、その正しさの根拠や、その嘘を信じている原因である不安などを解決することこそが、デマの拡散を防ぐ唯一の方法ではないだろうか。

Disinformation Inhibitor を運営するにあたって、デマが悪意から生まれたと決めつけず、また、デマを信じたり拡散したりする人々も自分たちと同じ社会に生きている人間であり、そうするだけの理由や気持ちが背景にあることを想像力を持って理解すべきだと思う。
一方的にこちらが正しいと思う意見を押し付けることや、デマを信じる人を見下したりすることは、デマの拡散を防ぐことにおいてむしろ逆効果であることを肝に銘じたい。
デマを信じる側の立場に立って、見た情報の吟味という行為のハードルを下げることで、一人でも多くの人に、回ってきた情報を拡散する前に立ち止まって考える時間をとってもらえるようにプロジェクトを進めたい。

この時期に聴きたい音楽について

すでに長文になってしまったが、ここでダメ押しとして、史上稀に見るドラマチックな話題の転換を行い、最後にこの時期に聴きたくなる曲を一曲紹介して終わりたいと思う。メンデルスゾーンの交響曲第5番「宗教改革」である。ここ最近思うのが、個人的にキリスト教色の強い曲を聴くとクリスマスを連想するということで、この曲も表題にある通り、この曲はキリスト教の影響を濃く感じさせるものだ。1楽章はミサで使われる曲が引用されていたりして、神々しい雰囲気が漂っている。2楽章は伸び伸びと牧歌的な旋律が美しい。3楽章は秘めている哀しさのようなものを感じさせる。4楽章は、宗教改革の指導者として有名なルターが作曲した賛美歌を主題として使っていて、荘厳で喜びを感じる。特に4楽章の冒頭の賛美歌のフレーズをオルガンに近い響きで出させる部分が、自分の心の中にクリスマスを呼び起こす。時間があるときに、BGMとしてでもいいので、是非聞いてもらいたい。

かなりの長文になりましたが、ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。

Happy Holidays and a happy New Year!!
良いお年を!

たいら



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