看護計画テーマ「PEG造設患者の標準看護計画」
今回のテーマは、「PEG造設患者の標準看護計画」になります。
では早速まとめていきましょう。
PEG造設患者の標準看護計画
PEG(percutaneous endoscopic gastrostomy:経皮内視鏡的胃瘻造設術)とは
開腹手術をせずに内視鏡を使い、腹壁と胃壁の間に瘻孔(胃瘻)をつくる方法である。カテーテルを通して直接胃に栄養剤を注入する栄養療法として使用されるほか、イレウスに対する減圧目的としても使用されることもある。
アセスメントの視点
経腸栄養療法は静脈栄養にくらべて、患者の消化機能の廃用障害の心配がないという利点がある。胃瘻を用いた経腸栄養療法では、胃に直接栄養剤を注入するためチューブが胃食道接合部などの逆流防止機構を障害せず、誤嚥性肺炎や逆流性食道炎を起こす危険性が少ない。またチューブが咽喉頭を刺激しないため嚥下訓練が行いやすく経口摂取をしながら利用可能であり、患者の不快感や苦痛が少なく管理が容易であるという利点がある。PEGは全身麻酔をしなくても胃瘻を造設することができる手法であり、全身麻酔による合併症の心配がなく、全身状態の悪い患者にも選択できる。
適応
1.正常な消化機能はあるが、自力での経口摂取はできないか誤嚥を起こしやすいなどの摂食障害があり、4週間以上の継続使用が考えられる患者
1)脳血管障害・痴呆・頭部外傷など意識障害による経口摂取困難例
2)神経筋疾患による嚥下障害
3)経鼻胃管栄養時の誤嚥性肺炎の予防
4)頭頚部腫瘍・食道腫瘍・胃腫瘍による経口摂取障害・通過障害
5)薬物誤飲や熱傷による食道狭窄・瘢痕
6)小児の先天性食道狭窄
2.長期にわたり消化管内の減圧が必要な患者
1)癌性腹膜炎による腸管通過障害
2)新生児の先天性消化管奇形による胃拡張
PEGの適応とならない例
1.内視鏡が通過困難な咽喉頭・食道・胃幽門部狭窄
2.多量の腹水の貯留
3.著明な肝肥大
4.極度の肥満
5.横隔膜ヘルニア
6.高度の出血傾向
7.全身状態が不良で予後不良と考えられる例
8.消化吸収障害
9.胃の病変・手術の既往
挿入方法
前日の準備
1.術野の長毛のカット・臍の掃除
2.入浴または清拭
3.夕食以降絶飲食
当日の準備
1.血管確保
2.前投薬を施行し、ストレッチャーで内視鏡室へ搬送
3.造設手順は看護技術マニュアル参照
PEG造設後の管理
患者の栄養状態や全身状態、年齢により個人差はあるが、瘻孔の完成まで約2週間かかるといわれている。この期間、重要なことはカテーテルの抜去・脱落を防止すること、腹壁と胃壁を固定するストッパーの固定圧を適切に調節すること、瘻孔周囲のスキントラブルの予防である。瘻孔の完成後はカテーテルの抜去により大きなトラブルを起こすことはないが、スキントラブルの予防、PEG栄養療法による下痢や胃食道逆流に伴う誤嚥の予防など長期にわたる管理が必要であり、患者・家族への指導が重要となる。
造設中に起こる合併症
1.胃出血・血腫
穿刺針が腹壁や胃壁の血管・隣接する臓器を損傷することにより起きる。通常はバンパーとストッパーで胃壁と腹壁を強く固定すると自然に止血する。胃瘻チューブは開放しておき、造設後のバイタルサインのチェックとともにカテーテルからの排液の性状や皮膚の観察を注意深く行う。
2.誤穿刺
腹壁から胃壁を穿刺する際に肝臓や結腸に穿刺針を刺すことで起きる。予防策としてはPEG施行時と同様に胃を膨らませた状態で腹部単純レントゲンを撮影し結腸と胃の位置関係を確認しておくこと。腹部エコーで腹壁・胃壁・肝臓との位置関係を確認することが必要である。誤穿刺の疑いがある場合、PEGキットは留置したまま栄養剤の注入と飲食は中止し、抗生剤投与を行う。消化管損傷に伴う腹膜炎発生時は緊急手術を考慮する。
3.誤嚥
喉頭麻酔や使用薬剤による嚥下反射の低下、意識レベルの低下により起きる。処置中は吸引を準備し、意識状態を観察しながら適時口内吸引を行う。
4.咽頭痙攣・心呼吸停止
局所麻酔や使用薬剤によって起きる。SPO2モニター、血圧計などを装着し、バイタルサインを観察する。
造設後早期の合併症
1.腹膜炎
カテーテルの早期の抜去・脱落により胃内容物が腹腔内に漏れて腹膜炎を引き起こすことがある。患者の状態に合わせたカテーテルの選択が重要である。
また、患者への説明を十分行い協力を得る。術後24時間は腹壁と胃壁が密着するようにストッパーを用いて固定し、癒着を促進させる。この時、胃壁の吊り上げが不十分だと胃壁と腹壁が十分癒着せず、腹腔内に栄養剤が漏れたり、長すぎる瘻孔となり、カテーテル交換の際に瘻孔を損傷しやすい。
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