仙台89ers データで振り返る23-24シーズン~後編(改定版)~

データで振り返るシリーズ後編です。今回はチームスタッツに着目してみます。

23-24シーズン チームスタッツ

1試合での平均ポゼッション数(PACE):74.3 【リーグ4位】
平均2P試投数(2PAPG):44.1【リーグ1位】
平均2P成功率(2P%):49.8【リーグ20位】
シュート試投数のうち2Pが締める割合(%FGA2P):65.1%【リーグ1位】
平均インサイド2P(IPPG):33.8【リーグ13位】
平均3P試投数(3PAPG):23.7【リーグ20位】
平均フリースロー試投数(FTAPG):18.0【リーグ9位】
平均フリースロー成功率(FT%):65.7【リーグ23位】
シュート効率(TS%):52.4【リーグ19位】
平均アシスト数(APG):20.9【リーグ3位】
平均オフェンスリバウンド数(ORPG):13.8【リーグ3位】
平均ディフェンスリバウンド数(DRPG):27.2【リーグ5位】
平均スティール数(SPG):6.3【リーグ16位】
平均ファウル数:19.6【リーグ5位】

 あまりにも多すぎるので気になるデータを並べてみました(頭が痛くなってきた人もいるかもしれませんが)。まず注目すべきはPACE。リーグ4位の成績です。今シーズンの仙台が目指した速い展開からのバスケットが形になっていた証拠ですね。
 次に%FGA2P。リーグ1位の数字です。今シーズンの仙台は現代バスケでは非効率とされるミドルシュートを多投するOFを採用。その影響もあり、%FGA2Pはリーグトップにも関わらず、総得点のうちペイント内得点の割合はリーグ12位です。(ちなみに同じく2Pの比率が高く、スタッツも似ているFE名古屋は、ペイント内得点の割合がリーグ1位)
 もう一つOFで目立つ数字がORPG。ここはゲルン(4.5)の存在が大きいです。ナイナーズはFGAが多いので、自然とOFRのチャンスは増えます。加えて、2P主体(3PAが少ない)なので、ロングリバウンドにならずに、ゴールの近くに落ちることが多く、ゲルンがORを取りやすかったのではないかなと推測しています。そして、ヤン(1.1)の存在が地味に大きいです。B1の外国籍選手を除くSFの中で1番の数字。もう1人特筆すべきなのが阿部(0.9)。B1の全SGの中で6位です。こういう泥臭いところを頑張れるエース、実にナイナーズらしくていいですね。ちなみに面白いのが、阿部の次にORを取っているのがなんと渡辺(0.5)。リーグの全PGの中で21位なので結構取ってます(同率が多すぎてあまり参考にならないかも)。小柄ながらボールへの反応と驚異的なジャンプ力で外国籍ズが届かないロングリバウンドをもぎ取っています。
 続いて来シーズンにむけての伸びしろです。まずはFT%。速い展開を目指す仙台に対し、相手チームはファールで速攻を止めることが増え、チームファウルが嵩みます。(FDPGとFTAPGの順位の差は速攻のストップの被ファウルが多いのが原因かな?)それがFTにつながるのですが、ここの確率が悪いです。FTAPGがリーグ9位なので、FT%ワースト2位は非常にもったいないですね、、、FTAPGがチームトップのゲルンが極端にFT苦手なのがチームの数字に影響している面もありますが(ゲルン以外だと73.5%でリーグ8位相当)、ヤン、阿部、(試投数は少ないけど)渡部のFT%が60%代です。ヤン、阿部はFTを獲得しやすいプレースタイルなので、もう少し上げていきたいところ。片岡に特訓してもらいましょう。
 そして先ほども触れた2P%。チームとしてミドルシュートを多投する以上どうしてもここは低く出ます。ブースが異常な高確率で決めていますが、阿部は成功率はおそらく並かそれよりちょっと低いくらいです(そもそもこんなにミドルシュートを打つ日本人選手がほぼいないため比較できない)。阿部はアテンプトは右サイドが多いのですが、確率は左サイドが上という不思議な結果に。阿部は左手のハンドリングやレイアップに苦手意識があるのかなと感じる場面がいくつかあったので、意図的に左サイドからのアタックを減らしているのか、チームとしての戦術なのか。1つだけ言えるのは、阿部お得意の体が流れながらのジャンパーは、右に流れながら(右にステップを踏みながら)の方が打ちやすいので、そこは影響していそうです。
 もう1つ気になる数字がTS%。リーグ19位とかなり低いです。2P主体かつミドルシュートを積極的に打つOFがナイナーズの特徴でしたが、それ故にシュートの効率性はイマイチでした。2P%も50%を切っています。これを改善すべきと捉えるか、このスタイルを貫くのか、落合新HCの決断や如何に。
 次にDF面。平均失点は昨シーズンから約2点増。かなりOFでペースアップしたにも関わらず2点増で抑えているので、頑張っていると言えるでしょう。そしてDFRPGがリーグ5位。DFリバウンドをきっちり取り切れている証拠であり、これが速いバスケの展開につながっています。ここでも触れたいのがゲルン(7.5 リーグ4位)の存在。ゲルンがDRを確実に取ってくれるため、G陣が素早く展開できます。ゲルン様々ですね。
 もう一つリーグ上位の数字になっている(なってしまった)のがFPG。まあ、タフなDFが持ち味のチームなのでここは許容しましょう。チームトップはラー。相手のウイングエースや自分よりサイズの大きいインサイドプレーヤーを担当することが多かったので仕方ない面もありますが、リーグ7位(試合数の少ない信州#46生原、茨城#8コンクリンを除くとリーグ5位)とかなり多かったです。見ている側としては「今のはファウルしなくても…」と思ってしまうような場面でのファウルもしばしば。次点が青木。フロントコートからフィジカルに相手のPGにプレッシャーを掛けに行くのが仕事であり、このしつこいDFこそナイナーズのDFの真骨頂なのでこちらも仕方ないところがあります。その中でも青木個人としてはファールを減らすこと、チームとしては青木がファールトラブルになっても困らないような控えPGを確保することがオフの課題ですね。
 最後に得点、失点別勝率を見てみましょう。今季80点を超えた試合が32試合、うち24試合で勝利しています(勝率0.66)。実況でもよく取り上げられていましたが、ここがナイナーズにとって1つの勝利のためのボーダーラインとなってみました。先述のFTの確率があと少し高ければ、PPG80点超えも狙えます(今季のPPGは79.3)。そしてDFでは、失点が75点以下の試合が16試合ありうち14試合で勝利。驚異的な勝率です。やはりナイナーズはDFが持ち味のチーム。いかに相手を抑えつつ、自分たちは速攻で得点するかがカギになっていました。

まとめ

今シーズンのナイナーズはデータ上
「シュート精度を試投数で補うOF」のチームでした。2P、特にミドルシュートを多投する現代バスケの定石から逆行するスタイルは非常に面白かったですが、同時にデータを見ると限界を感じる部分もありました。リーグで1番シュートを打っているにも関わらず、PPGがリーグ中位であり、OF効率に伸びしろがあります。PPGがナイナーズより上位、つまりナイナーズより少ないシュート数は少ないにも関わらず、より点を取れるチームがリーグに11チームもあります。その11チームは3PAPGが多いチーム、もしくは2Pを高確率で決めるチーム、つまりミドルシュートが少ないチームです。ナイナーズも速いテンポを維持しつつ、3PAを増やせば理論上得点は伸びますが、マッチするのかは不明です。ここをどうするかは来シーズンの采配に注目ですね。
 残念なことにDF面はデータが少ないので言及できることが少ないです…。強いて言えばDFRPGが多く、SPGが少ないので、「無理なスティールは狙わず、シュートを落とさせる&24秒守り切るDF」のチームですね。本当はペイント内失点とか被3P%なんかを調べてみたかったです。(試合見ていると3Pへの警戒が甘いと感じることがしばしばあったのでもしかしたらここの数字が悪いのかもしれない)Bリーグの発展とともにこういうデータも増えてくれると嬉しいですね。

長くなりましたが今回のnoteは以上です!読んでくださりありがとうございました!
次回はいよいよオフシーズンの醍醐味、「獲得希望選手を挙げてみた」です!


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