団地の遊び BCL 2
BCL 2
BCL とは、ものすごくカンタンに言って、ラジオを聞いて受信報告書なるものを送るやつである。テレビでも良い。
海外の日本語放送を聴いて受信報告書を送るのが、やっていて一番楽しかった。これの何が楽しいのか、と言われると、その楽しさを伝えるのは、なかなか困難かもしれない。
受信報告書とは何か、というと、何時に始まりオープニングに何を話したか、何時にニュースが始まったか、どんな内容だったか、そんなことを書いて送るものである。
受信状態や、感想などももちろん書く。
最近は、どうなのか知らないが、当時は、モスクワ放送、北京放送、BBC(イギリス)、西ドイツなどが、日本語放送をやっていた。
ラジオは、やり始めた当初は、デジタルではなかった。デジタルだと、周波数の数字をそのまま合わせればカンタンに聴けたーーー勿論、受信状態が悪い時もあるが。
しかし、デジタルでなかった時は、自分でダイヤルを回し周波数を合わせた。これが、モスクワ放送や北京放送だと、出力が大きいので、すぐ聴けた。
ところが、入りずらい国だと、ラジオに耳をつけ、ダイヤルをゆっくり回し、それはもう必死になって聞き耳たて、見つけるのである。
とうとう一度も聴けなかったのが、アルゼンチン国営放送だった。まず遠い。日本の裏である。そして出力が弱く、あと何かハッキリした理由を忘れたのだが、近くの周波数のラジオ局が邪魔をしていて、入りずらい、確かそういう、もう致命的な訳があった。
友達で、アルゼンチン国営放送を、受信したという奴は一人もいなかった。もしこのラジオ局を日本の、それも東京で受信したいのなら、ビルの高い所に巨大なアンテナを立てる、それしかないと本気で言われた。
金のある大人の中には、そういう人は、いたようである。
最近のことは、まったく知らないので、少し調べてみたら、アルゼンチン国営放送はあった。受信状態は確認していない。
距離的なことを言うのなら、遠くでも南アフリカ国営放送は、受信できた。ものすごく感度良好というわけには、やはりいかないが、結構、聴くことができた。もっとも、日本語放送はなく、英語だったけど。
英語でも、なんとか、かろうじて内容を把握することは、できないこともない。ニュースなら、固有名詞が出てきて、例えばアメリカ大統領の名前とかが出れば、どんなニュースかは、だいたいわかる。
友達のムーちゃんが、南アフリカ国営放送に受信報告書を送った。なんとか英語を解読した。
すると、ベリカードの代わりのような書面が届いた。ベリカードとは、受信報告書のお礼に、局が送るもので、たいがい絵葉書みたいなモノが多かった。
南アフリカ国営放送からは、とりあえず返信はあった。ムーちゃんはーーーほら来たぞ、スゴいだろ。
みんなに自慢げに、見せびらかした。英語なので、何を書いてるのか、わからないのだが、とりあえずなんかすごいと、みんなも思った。
ところが、BCL 本の月刊誌、なんて名前のモノだったか忘れたが、それにーーー間違った受信報告書を書いたら、こういうのが返信されます。写真付きで、出ていた。まさに、ムーちゃんの持ってるものと同じだった。
ムーちゃんはみんなに大笑いされたが、まあそれほどバカにはされなかった。むしろ、なるほど、そういうものもあるのか、と感心し関心するほうが、大きかった。
そして、南アフリカ国営放送を聴き、コッソリと受信報告書を送った。自分も誰にも言わずにやった。
そしたら、やはり、ムーちゃんと同じものが来た。
結局、みんなで話すことになったのだが、南アフリカ国営放送は、なんなんだ?という結論に達した。子供相手におとなげない、なんかそんなことを皆で言い合った記憶がある。
北京放送は、気前が良かった。ちゃんとした受信報告書を書かなくても、番組の感想だけで、パンダの切り絵や、四角いペナントみたいなぶら下げる竹模様のシャレたものを、送ってくれたりした。最近は、どうなのだろうか。
BCL の良さで、一番実感したのは、西ドイツやロンドンからの生のラジオ、その声を聴けることといえる。ーーー今日午後のロンドンは、またしても霧と雨。なんでことを言われると、なんか想像力がふくらみ、そうなのかぁ、とアホみたいに感心できるのが、良かった。
なんといっても、まだ何も知らない子供の頃である。本当に外国というものがあるのか?と本気で疑ってる奴もいた程である。そんな時に、海外のラジオを聴けるのは、ある意味とても幸せであった。
とはいえ、と、あるラジオ局が、日本で録音したやつを外国に送り放送していた、という、いわゆるヤラセをしていたのを知った時はーーーそんなもんだろうよ、と友達と話した、やはりヒネた子供でもあった。
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