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Tailor Works事例#5(前編)静岡銀行|

株式会社テイラーワークスが運営するコミュニティプラットフォーム「Tailor Works」。地域ビジネスユーザーのネットワークを広げ、地域サステナビリティの実現を目指しています。

このマガジンでは、すでにご活用いただいているコミュニティオーナーへ、導入のきっかけや使ってみた感想などについてお話を伺います。

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株式会社静岡銀行 地方創生部 推進役 井出 雄大さん
TECH BEAT Shizuokaは、静岡県内事業者と先端技術を持つスタートアップ企業との共創の場を提供し、県内産業の活性化や新たなビジネスの創出を図るオープンイノベーションプログラム。豊かな自然環境を有し、多彩な産業が集積する静岡県から、新しい価値の鼓動を生み出すため、活動を続けています。
お話を聞いたのは、静岡銀行の地方創生部に所属する井出雄大さん。「静岡県内の企業とスタートアップ企業との出会いを通じて、オープンイノベーションを起こしたい」と語るその想いの背景についてお話を伺いました。

──まずは、井出さんとTECH BEAT Shizuokaのご紹介をお願いします。

井出さん(以下、敬称略):TECH BEAT Shizuoka 実行委員会で事務局を務めております、静岡銀行の井出と申します。

TECH BEAT Shizuokaは、静岡銀行と静岡県が協同して、静岡県内の事業者と首都圏のスタートアップ企業とのビジネスマッチングを通じて、静岡県内の経済・産業の活性化や、新しいビジネスの創出を図るプロジェクトです。

私が所属する地方創生部では、地域活性化に関わる事業の企画・運営や自治体との連携を担っており、その一環としてTECH BEAT Shizuokaを担当しています。

私たちが描く「県内にオープンイノベーションの風土を醸成し、事業者同士の化学反応によって新たな価値を生み出したい」という想いの実現に向けて、多くの方々が集い協働するコミュニティを目指しています。

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オンラインイベントへの切り替えに苦労

──コミュニティ運営で大変だったことはありますか?

井出:一番大変だったことは、新型コロナウイルス(以下:コロナ)の感染拡大を受けて、イベントの場を急遽オフラインからオンラインへ切り替えなければいけないことでした。

2020年3月に開催した、農業版イベント。コロナ禍の影響を受けて、急遽オンラインでの開催となった。

オフラインのイベントでは、県内の事業者が気軽に立ち寄って話を聞くことができ、立ち話が商談につながることもありました。しかし、オンラインイベントは一方的な情報発信になりやすく、偶発的な出会いや相互理解が生まれにくいんですよね。スタートアップ企業のライトニングトークを見るだけでは、事業内容やソリューションを正しく理解することも難しいのではないかと感じています。

実際にオンラインイベントをやってみたからこその学びでしたが、参加者同士がインタラクティブにコミュニケーションできる仕組みをつくる必要があるなと。今も理解度のギャップを埋められる方法を模索しています。

オンラインツールに触れられるプレイベント開催

──オフラインからオンラインへの切り替えの難しさを感じられて、工夫したことや試してみたことがあればお聞かせください。

井出:大きく2つあります。1つ目は、2020年7月の大規模なオンラインイベントを開催する前に、プレイベントとしてオンラインツールの使い方を学ぶセミナーを実施したことです。静岡県内でもコロナ禍で多くの事業者が急速にリモートワーク等への対応を迫られるなか、オンラインに適応してもらうきっかけをつくることが目的でした。

2020年5月に開催した、プレイベント。県内企業向けにオンラインツールに触れてもらえる機会を設けた。

2つ目は、オンラインの商談が円滑に進むための仕掛けづくりです。オンライン上で課題をシェアし、解決策を募る仕組みを構築したものの、イベント開催の直後しか商談が盛り上がらないという現実が見えてきました。

そこで、2021年2月に開催した直近のイベントでは、事前に県内の事業者から課題を集めるアンケート(商談のタネ)を実施し、事務局が課題を噛みくだいて開催日より前に代理投稿するなど、Tailor Works上で活発なコミュニケーションが行われるよう工夫しました。

──実際にプレイベントを開催されて、手応えはありましたか?

井出:はい。今となってはZoomがないと仕事が進まないぐらいですが、当時はオンラインツールを用いた働き方がそれほど浸透していない段階だったので、先進的な取り組みとしてテレビにも取り上げられました。静岡県内の状況に合わせて、迅速に開催を決断できたことが良かったと思います。

オンラインという新たな場所で、ビジネスマッチングにつながる施策を

──工夫されたことを2点お聞きして、とても上手くいった印象を受けたのですが、さらなる課題も?

井出:オンラインツールを用いることで、県内の事業者にとって「スタートアップ企業とのタッチポイントが増える」というメリットはありましたが、顔をつきあわせて話すニーズが根強くあり、一歩踏み込んだ商談に至っていない現状があります。

この点はオンラインではまだ越えられない壁だと感じました。また、ほかの地域ほどコロナの感染が広がっていない静岡県では、オンラインツールの利用はあくまで「その場しのぎ」という感覚を持っている方も多いのかもしれません。このような背景が、県内の事業者がTailor Worksをあまり活用できていないことにつながっているように感じます。

ただ、既存の習慣になかったところから、すぐに劇的な変化は起こらないと思っています。県内でオンラインを積極的に用いてイノベーションを起こしている方々と連携しながら、私たち運営側がコミュニティコーディネーターとして、焦らずに一歩一歩、価値を伝えていくことを大切にしていきたいです。

──オンライン化の価値についてはどのように考えられていますか?

井出「オンラインコミュニティ」という概念は、日常的にオープンイノベーションを生み出す上で、非常に有用な考え方だと思います。Tailor Worksという場所の存在によって、新たな価値が生まれる可能性が大きく広がったと感じているので、いろいろと仕掛けていきたいです!

Tailor Worksでオンライン商談を一気通貫

──Tailor Worksを利用する前は、どのようにイベントを運営されていたのですか?

井出:Tailor Works利用前の2020年3月に開催した農業版のイベントでは、ピッチの配信はZoomのウェビナーで開催しました。さらに、商談する際はZoomで商談ルームを13個ほど作り、1時間ごとにZoomのミーティングIDを発行し……、商談ルームを合計90個ほどつくって運用していましたね。

商談ルームを作るために必要な台数のPCを準備し、イベントを運営。運営側の負担がかなり大きかった。

井出:どうしてもピッチの配信と商談がぶつ切りになってしまって、ピッチの配信を見た方がどれだけ商談ルームに訪れたかなど後追いが難しかったのですが、その点をTailor Worksでは一気通貫して対応できるのでとても良いサービスだと思いました。

ピッチを見て興味を持ったスタートアップ企業に対して、県内企業が「登壇企業に問い合わせる」ボタンをクリックし、 個別にメッセージを送ることで商談ルームができる。ピッチから商談への後追いが可能。

──実際にTailor Worksを使ってみていかがでしたか?

井出:オンラインの商談会にすることで、移動距離や時間を気にすることなく、関心ある企業やテクノロジーと出会うことができるようになりました。

また、バーチャルネットワーキングスペースを利用することで、入室してきた企業同士のやり取りが気軽に行える環境を用意できました。このような場を設けることで、さまざまな企業やテクノロジーと偶発的につながることができます。この2点は非常に良いですね。

一方で、県内の事業者とスタートアップ企業をつなぐための事務局側の関与が大事だとも感じています。ビジネスマッチングを実現させるためには、お互いの事業内容や、課題とその解決方法などを理解しておくことが重要です。

現段階では、事務局が県内の事業者とスタートアップ企業との間に立って、両者を引き合わせることが必要だと考えています。Tailor Worksを利用するうちに、“コーディネーター”という役割で両者をサポートする重要性に気が付きました。

生きたコミュニティのために

──いかにTailor Works上でコミュニケーションが取れる状態にするかがポイントになりそうですね。

井出:まずは、県内の事業者にもスタートアップ企業にも、継続的にTailor Worksへアクセスしてもらうことが大事です。

そのためには、イベントを一時的に開催するだけでなく、コミュニティメンバーの興味を惹くような情報を充実させ、「Tailor Worksにアクセスすれば有益な情報が得られる」と認識してもらうことが必要だと考えています。

事務局としてきちんとサポートするために、“コミュニティ”と謳う以上は、随時コミュニケーションが生まれる状態を作りたいです。

県内の事業者やスタートアップ企業の方々から、イベントの質も高く評価していただいております。特に県内の事業者からは「今まで出会えなかった企業やテクノロジーを知るきっかけになった」という声が多かったです! これまで辿り着けなかった情報を知れるようになり、とてもうれしかったですね。情報収集の方法としては、今まで静岡県になかった方法を生み出せたと感じています。

──後編では、Tailor Worksの具体的な活用方法や、利用するなかで感じた気づきを伺います。TECH BEAT Shizuokaに興味のある方は、こちらからぜひご参加ください。

※Tailor Works公式サイト内にある、上記2つの事例記事を再編集のうえ、掲載しています。