テイラーの2023年事業進捗。やってみてわかったこと
あけましておめでとうございます。テイラー代表の柴田です。
テイラーは、日本と米国でHeadless ERPを提供しています。
今回は、2023年を振り返って、2023年に検証できた仮説=事業進捗について整理したいと思います。
ローコードで複雑なシステムが作れるのか:SAP製ERPの置き換え
Tailor ERPはその設計思想として、Tailor PlatformというERP開発基盤に投資することによって、アプリケーションレイヤーである個々のERPアプリケーション(例えば「CRM」や「在庫管理」のような粒度のソフトウェア)の開発を10倍簡単にするという方針を採っています。
こうした開発基盤においては、効率化(抽象化)の裏返しとして柔軟性が一部犠牲になるため、どの程度の柔軟性をもたせるかが重要になります。
Tailor Platformは、エンタープライズ向けERP用の開発基盤として作っているため、例えばSAP製のERPができることは、Taillor ERPでも概ね実現可能、というのが顧客から見た場合の妥当な水準であると考えています。
SAP社といえば、ERPの代名詞的なグローバル企業で、世界中の巨大企業が複雑なサプライチェーンや製造、会計などを管理するソフトウェアを提供しています。
最近、SAP製の既存システムをTailor ERPに置き換える機会に恵まれ、実績としてもTailor Platformの複雑性基準が検証されたと考えています。
「ノーコード」という、我々の考えでは全くユーザー層もユースケースも異なるバズワードと混同されてしまったせいで「ローコードは複雑なことができない」という先入観が一部あるように感じているのですが、それを打破することができたと考えています。
同時に、「SAPのシステムはものすごく複雑で読み解くのは無理ゲーなのではないか」といった要件定義フェーズへの先入観に対しても、良い教訓になったのではないかと考えています。(答え:内部構造が見えればそんなに難しくなかった)
カスタマイズはスケールするのか:パートナーによるインプリメンテーション
先程来、カジュアルに「ERP」という言葉を使っているのですが、そもそもERP(Enterprise Resource Planning)とはどのようなシステムを指すのでしょうか?
私は、そもそもERPというシステムは存在しないと考えています。
建築物でいえば「複合型商業施設」や「コミュニティセンター」のように、実際には複数の要素の集合体で、しかもその価値は各部品の足し算ではなく、部品同士がいかに連動するかで決まるという点がERPを特徴づけています。
しかも、企業によって必要な部品が異なり(例:倉庫管理は必要か、製造プロセスはあるか、受注はERPの一部なのかECプラットフォームで賄うのか・・・)、さらに個々の部品についてもカスタマイズが必要です。
そのため、単にERP開発基盤を提供するだけでは充分でなく、お客様の要件を分析してシステムに落とし込むことができる、いわばカスタマイズサービスがセットで必要になります。
テイラーでは、開発基盤を作る際にこのカスタマイズに関わる人々の開発体験を重視しており、実際にプラットフォームチームは常に開発者体験を最優先に製品開発をしています。
2023年はこのカスタマイズを、いかにスケール可能なものにするかについて企業努力をし、Tailor Platformの開発当事者ではない外部のパートナーであっても、遜色のないカスタマイズが行えることが確認できました。
まだ、SalesforceやSAPのように「インプリメンテーションベンダー」企業をたくさん抱えたエコシステムを構築するには売上が少なくともあと100億円くらい必要なのですが、少なくとも技術的には見えたぞ、というのが現時点です。
外部の開発者にもTailor Platformが使えるのか:セルフサービス型のプラットフォーム提供
さらにこれを一歩進めて、Tailor PlatformをPlatform as a Serviceとして顧客に直接提供し、お客様側の開発者が自社システムを開発するというPlatform as a Service販売についても実績が出ています。
そのためには、ドキュメントの充実はもとより、様々な開発ツールをセキュリティも考慮しながら公開していく必要があり、「運用でカバー」できる社内ツールとは求められる水準が全く異なってきます。
またいわゆる「カスタマーサクセス」に求められる機能も、より技術的な内容になったり、購買意思決定者も変わるため、SaaSの提供とPaaSの提供では求められる組織ケイパビリティが全く異なります。
当社では、事業としての核はPlatform as a Serviceにあると考えており、その意味でSelf Service型の製品に今後も継続的に投資していこうと考えております。
米国でも通用するのか:米国における顧客獲得
今年最も当社が注力したのが、米国を中心とするグローバル展開です。
私(柴田)は昨年5月にベイエリアに引っ越し、また米国でも採用を進めて米国市場開拓を頑張ってきました。
様々な発見や仮説検証をしながら、米国でも売上を含めたトラクションが出てきたことは2023年最大の収穫です。
米国市場は非常に多様な顧客層が存在し、厚みがある市場なので、製品の提供価値を絞り込み、接点が全くない状態から実売にまで繋げられるようになってきました。
米国でも通用するという事実はとてもエキサイティングです。加えて、歴史的にみてIaaSやPaaS等の開発者向けサービスは成熟期に至る過程でグローバルで一つの市場に統合されていきます。したがって、当社にとって米国で市場シェアを獲得するということは、「グローバルなサービスを作りたい」という願望以上に切実な、当社のPaaSとしての中長期的な生存条件だと考えています。仮説上の手応えが、実態を伴ってきたことに対してホッとしているというのが正直なところです。
まだまだ解くべき課題は山積していますが、2024年は間違いなく飛躍の年になると思います。
幅広いポジションでグローバルに活躍できる人材を募集中です
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