建築倉庫ミュージアム「高山明/Port B 模型都市東京展」

建築倉庫ミュージアム「高山明/Port B 模型都市東京展」を見てきた。これまでの高山さんの都市の中で展開する演劇が、一つの箱(そのなかに複数の箱)の中で見るという新しい経験であった。展示スペースの中に、大きめなロッカールームのようなケージが並べられて、そこに東京に暮らす人の持ち物と、その人へのインタビューがループ再生されるヘッドホンが吊るされている。結論から言うと、小さな空間に、現在の東京を「うつす」完璧な装置であった。
展示物を見ていると、持ち物とは実は極めてプライベートで、家を構成する一部であると同時に、家そのものであるような気さえしてきた。インタビューではどうしても建前だったり、その場の雰囲気や流れで話してしまうこともある。しかし、持ち物はそれ以上に正直だ。それら二つを同時に体験することで、その人の生活だけでなく、その背後にある東京という都市が見えてくる。つまり、個人個人の生活の理想はありつつも、東京の中では充足しきれない部分を「もの」が補完している様子が見て取れる。
じぶんを含めた、東京に暮らす人がいかにものによって生活をカモフラージュして、じぶんをだましながら生きているかがわかった。都築響一の「TOKYO STYLE」の中では、部屋というバックグラウンドが重要であった。しかし、ここでは、部屋はあっそりと居なくなって、あるのはその人の声と持ち物だけである。部屋はますますただの容器になっていると感じる。
そして、この展示は、コロナ禍の前に始まってい、今日(2020/8/23)に終わりを迎える。きっと開催した直後に行っていたら、ぼくも建築家である以上部屋や建物を無視して、都市を語ることに違和感を感じたかもしれない。しかし、このコロナは、そのような閉じた容器(部屋)も「もの」の一つだし、しかも持ち運べないのはダサいなという雰囲気にさせてくれた。
建築設計の過程で、模型はつくろうとしてる建築の色々な側面を見せてくれるが、本展示の模型は、東京という都市と全く新しい出会いをさせてくれた。自粛に退屈したからといって、スマホを見ながら都市の中をぷらぷら歩いている場合ではないのかもしれない。

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