立ち上げ14ヶ月で売上3億円、SNSベタな妊活専門家を覚醒させた「StoC事業」の全貌
プロデュースへの思いが再燃
森:よし子先生と出会ったのは、まだ僕がStoC(Specialist to Consumer)事業を立ち上げる以前のことでしたね。当時は漢方領域でのサービス開発を模索していて、よし子先生には監修者としてサポートしていただけないかと考えていました。
よし子:森さんと出会ってから目の前の景色がめまぐるしく変化していて、もう随分と昔のことのように感じられます(笑)。このような形で一緒に事業を立ち上げるとは、夢にも思っていませんでした。
森:よし子先生に出会った当時、世界は新型コロナウイルスが猛威を振るう真っただ中。「副作用があるかもしれないけれど、それでもワクチンの効果を信じて注射を打つしかない」という状況下で、多くの人が自分自身の健康に向き合っていた時期でした。
そうした背景もあり、漢方領域に注目していたんです。健康は結局、よく食べ、よく休み、よく運動する……つまり、普段から身体にいい生活習慣をすることなのではないかと考えていて、それらを支える漢方に大きなチャンスを感じていました。
実際のところ、僕以外の人たちも、「健康は日常生活でつくるもの」だと理解していたように思います。コロナがきっかけで運動を始めた人も多いと聞きますし、漢方の市場も年々拡大していましたから。
よし子:とはいえ、森さんはあまり漢方の事業について話をしませんでしたね。むしろ私の話を聞いてくださり、りんどうの事業をいかにして伸ばすか、その方法を一緒になって考えてくれました。
森:よし子先生が手がける事業について話を聞いていくと、「僕がやろうとしていることより、よっぽど社会的な価値があるじゃないか」と思ってしまって(笑)。
僕はもともとインフルエンサープロダクションを経営していたのですが、人に依存するビジネスモデルなので、アンコントローラブルな部分が多く、もうプロデュース業には手を出さないと決めていたんです。
ただ、よし子先生の話を聞いていると、それでも協力したくなってしまって……。僕の持っている知見で解決できる課題があると感じましたし、りんどうの事業はもっと広がっていくべきだと確信したのです。
事業をまるごとDX、StoC事業の立ち上げ
よし子:当時、りんどうは、とても苦しい状況でした。コロナ禍で苦境に立たされ、変革の必要性を感じつつも、何をどう変えれば良いかさえ分からなくて。身体の専門家として、目の前のお客様を救うことで精一杯でした。
サロンには絶えずサポートを求める声が届いているのに、経営は赤字すれすれ。とりあえず赤字にだけはならないように、「世の中に必要なものは必ず残る」と信じて突き進むしかありませんでした。
そんなとき、森さんは「こんなに多くの人を救える技術があるならば、もっと多くの人がその恩恵を受けられるようにすべきだ。自分ならそのサポートができる」と言ってくれましたね。
誇張でもなんでもなく、運命とはこのことかと思いました。突然現れた方が、自分の長年抱えていたもやもやを綺麗に言語化してくれるだけでなく、それを解決できるよう伴走までしてくれるというのですから。
森:よし子先生の話を聞いていると、思っていた以上に、自分にできることが大きいと感じました。
話を聞くうちに見えてきた課題は、利益率と効率性の低さです。この2つがボトルネックとなり、りんどうの成長、そして、よし子先生の信念の実現を妨げていると感じました。
りんどうで販売されているオリジナルの漢方は、その効果に比例して原価も高いのですが、広く手に取ってもらえるよう売価は抑えられており、恐ろしく原価率が高い。
くわえて、求めるケアは人それぞれであるという方針のもと、それぞれに合わせた治療を提供するために、多大な人件費もかかっていました。
よし子:自分でも、分かっていたんです。高く売ればもっと利益が出るし、お客様に一律の治療をすれば、サロンで働くみんなも楽ができます。
でも、一部のお客様しか助けられないのでは意味がない。少しでも多くの人を救うために……と、利益率や効率性を無視していたんです。
でも、森さんがその固定観念を切り崩してくれました。
森:よし子先生の信念は正しいけれど、それによって事業が立ちいかなくなってしまっては、本末転倒です。
でも、やり方を変えれば、高い利益率を維持しながら、顧客に十分なサポートができそうだった。そこで、代理店事業をやめ、StoC事業の立ち上げを決めたのです。
独自の価値を広げて濃くするSNS戦略
森:StoC事業はその名の通り、スペシャリストの皆さんが「本業だけ」にコミットできる体制を実現する事業です。よし子先生には、SNS運用や事業のオンライン化など、さまざまなサポートをさせていただきました。
これまでを振り返ってみて、僕たちとタッグを組んで得られた、いちばん大きなものはなんですか?
花森:りんどうの価値を再定義できたことです。
私たちが提供したいのは、私の技術や知識そのものではありません。妊娠したいすべての人に伴走するパートナーであり続けることが、私たちの幸せであり、お客様の求める価値です。
つまり、究極を言えば、私がいなくてもりんどうは成り立ちます。
りんどうの価値を再定義したことにより、「自分が治療家であり続けなければいけない」という呪縛から解き放たれ、治療家から、治療家であり経営者になれました。
これまでは、他の治療家にはできない治療を「私こそがやるぞ」という覚悟で突き進んできたのですが、その「私こそ」のこだわりが足枷になっていたんです。
「私がやらなければ」と思えば思うほど、自分の手の届かない範囲にいる人々には無頓着にならざるを得ないし、自分のリソースに限界が来たら、それ以上に輪が広がっていくことはありません。
でも、漢方サロン「りんどう」そのものが、みんなに伴走するパートナーとなれれば、もっともっと多くの人を救うことができます。
福岡のサロンに閉じこもるのではなく、サービスをすべてオンライン化するなど、あえて自分の思いを全力でりんどうに託すことで、かえって本当に私の実現したかった未来に近づくことができました。
森:たしかに、「いちばん大切にしたい価値」に気づいてもらえるのも、第三者である僕らが介在する意味かもしれません。
よし子先生にとっては、「すべての人を救う」がキーワードだったので、そこをもっと伸ばせるような変革はかなり意識しました。
たとえば、経済的な理由や住んでいる地域によって、情報へのアクセスに差が出ないよう、SNSでの徹底的なノウハウの公開に努めています。
妊活や健康に関する正しい知識は、まだまだ広く知られていません。だから、情報へのアクセスそれ自体をマネタイズするのではなく、まずは無料で広く知ってもらうチャンスをつくりました。
ただ、知ったところでそれをすべて自分で実践するのは難しい。そこで、「目標に向かって伴走するパートナーを必要とする人にだけ、りんどうを活用してもらおう」という新しいビジネスモデルをつくったのです。
僕は、「誰のことも見捨てたくない」というよし子先生の思いは、何よりも大切にすべきものだと考えています。
年齢・性別・地域に関係なく無料で利用でき、無限の可能性を秘めているSNSをその糸口にする方法は、僕とよし子先生の思いを実現する最適な手段でした。
300日間、毎晩ライブ配信
花森:デジタルにとことん疎い私ですが、SNSに力を入れて世界が変わりました。TikTokフォロワー4万人、Instagramフォロワー3万人と知名度が着実に上がり、またそれ以上に、SNSを通してみんなの悩みを明確に知れたことが有意義だったと感じています。
特に毎日のライブ配信は、苦になるどころか勉強になることばかりで、疾走感とともに楽しむことができました。
フォロワーが2万人に達するまでは、必ず毎日22時から配信すると決めていたのですが、結局それにかかった期間は10ヶ月。お正月やデートの日、子どもの誕生日でも、一日も休みませんでした。
飛行機を降りてすぐ、空港の隅で立ったまま配信したこともあります。それでも苦に感じないぐらい、毎回得るものが大きかったんです。
……でも、ライブ配信を始めるまでは、正直うまくいかないことも多かったですよね。
森:そうですね。最初はTikTokへの動画投稿から始めましたが、思うようにLINE登録や商品の購入にはつながりませんでした。
たとえば、2本目にあげた動画の再生回数は、20万回を超える上々の滑り出しでした。にもかかわらず、よし子先生の公式LINEの登録者数は、10名にも満たなかった。
TikTokの弱みは「コンバージョンの低さ」です。動画の再生から、LINE登録などのネクストアクションにつながりづらいのは承知していましたが、想像以上の苦戦具合でした。
そこで始めたのが、毎日のライブ配信とInstagramアカウントの育成です。
ライブ配信をする際にこだわったのは、「毎日同じ時間に配信する」ということ。「なんとなくこの時間にTikTokを開けば、よし子先生に会える」という状態を確立し、安心して質問できる場を用意しておくことで、何度もライブ配信を見に来てくれるリピーターの方を増やすことができました。
ここまできたら、もう「行列が絶えないラーメン屋」と同じ理論です。人気がさらなる人気を呼び、「その場で答え切れない質問に関してはLINEで答える」などの誘導も可能になりました。
結果として、LINEの友達登録者数は3万6千人(2023年2月時点)にまで増加しましたが、これはフォロワー4万人のTikTokerとしては異例の数字です(LINEの友達登録差数獲得を目的に情報を発信しているTikTokerはいますが、TikTokのフォロワーが5〜10万人で数千人程度が通常です)。
また、InstagramにもTikTokとは別コンテンツを載せることで、TikTokでよし子先生を知ってくださった方がInstagramへ流れやすいような導線も確保しました。
今では、LINEの登録者数に一役買っているのはTikTokよりもInstagramです。初期から同時並行してアカウントを育成してきたことが、やっと功を奏しているといえます。
引き続き今年も、すぐには収益につながらない「仕込み」作業を大事にする1年にしたいと考えています。
事業の安定は通過点に過ぎない
花森:事業は立ち上げから14ヶ月で3億円を売り上げるなど好調です。ただ、「すべての人を幸せにしたい」というビジョンのためには、まだまだ認知度が足りていないと感じています。
私のビジョンを実現するには、極論、誰もりんどうのサービスに頼る必要のない未来をつくる必要があります。そこまでいくには、もっともっと、りんどうのノウハウや、私の知識が行き届く必要があります。
妊活というものは、いざ妊娠しようと思い立ってから、初めて不調に向き合い始めるのでは、遅すぎる場合もあるんです。
生理痛を抑えるために、低用量ピルや痛み止めを常に服用していたり、忙しさを理由に身体の不調に見てみぬふりをしていたり。これらは妊娠を難しくする可能性を持った生活習慣です。こうした知識は、妊活を意識していない人にも届けていかなければいけない。
森さんは、そんな私の壮大な夢をサポートしてくれる心強いパートナーだと思っています。
森:夢を追うなら、仲間が多いに越したことはありません。
SNSでの集客やコンバージョンはすでに形になりつつあるため、今後は直接的には利益につながらなくとも、テレビや書籍などでよし子先生の露出を増やしたいです。
りんどうほどの実績や技術・商品があれば、これ以上の知名度アップは必要ないと思う人もいるでしょう。ですが、よし子先生と僕のゴールは事業を安定させることではない。悩める女性を一人でも減らすためには、まだまだやるべきことばかりです。
花森:冒頭でも述べたように、私は身体の専門家であり、経営の専門家ではありません。だからこそ伸び悩み、葛藤し、私にこれ以上は無理だと開き直りかけていました。
でも、1年経たずにこれだけ多くの人と出会い、妊活に伴走させていただけた。
森さんのようなマーケティングの専門家と、他の分野の専門家が組むことで、一人では生み出せなかったなにかが、必ず生まれます。
世の中を変えたいともがき苦しんでいる方々が、森さんと出会えることを切に願っています。
Misfitsの森泰輝です!誰もがSNSのパワーを享受できる未来に向けて事業を創っています。書いてほしい記事のリクエストがあれば教えてください!