功利主義と青酸カリ

功利主義と青酸カリ:「クロイドン発12時30分」(F.W.クロフツ)

「タイ・バンコクで、36歳の女が、一緒に旅行中だった友人を殺害した疑いが持たれています。友人の遺体からは、猛毒の「シアン化合物」が検出されました。また、女の周囲では、2020年以降、13人が不審な死を遂げているということです。」2023.05.04日テレニュースより 

↑よりクロフツの古典的作品「クロイドン発12時30分」を想起しました。
工場経営主の主人公が、不況で工場閉鎖に追い込まれると、自社に勤務する労働者が路頭に迷い、自殺者も出てしまうであろうことを案じて、富豪である叔父を殺害して遺産を手に入れて工場経営を立て直そうとする推理小説です。推理小説史上、おそらく初期の青酸カリ(シアン化化合物)の応用例であり、現実世界でもこの小説が登場するまでは、青酸カリが殺人に使用されたことはほとんどなかったことが知られています。また、主人公の功利主義的な考察も披露されています:「最大多数の最大幸福とはなんだ。そうだ、アンドリュウ老人などは死んでもいいのだ。職を奪われてほうりだされる職工たちはどうなるのだ。」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?