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何故、音楽著作権への投資が”一世一代のチャンス”なのか

世の中には様々な投資対象がある。誰にでも手軽に投資できるのは上場株だが、その道のプロだけが投資するものとして、不動産や未公開株や”貸付”や、はたまた貴金属やワインやポケモンカードなどもある。
中でも”音楽著作権”は、実は世界では大手のプライベートエクイティファンドが最近になって挙って投資対象としている有望な投資対象だ。世界最大のPEファームの一社であるEQTを創業したコニー・ジョンソン氏は「このチャンスは30年前にプライベートエクイティが黎明期だったころを彷彿とさせる。テクノロジーによる市場の変化は一世一代のチャンスを生み出している。」と述べている。ここでは何故音楽著作権が投資対象として有望と考えられるか議論したい。

先ずは音楽著作権の投資対象としての表面的な特徴を整理する。

  1. キャッシュフロー: 曲が再生、ダウンロード、商業的に使用されるたびにロイヤリティ収入が発生する。その結果、音楽著作権には安定的で継続的な収入が期待できる。

  2. 長期的収入: 定番となった人気曲(カタログミュージック)は長年にもわたって収入を生み出す傾向がある。

  3. 変動性: 株や債券、不動産などは経済状況や金利、市場動向によって左右される。一方、音楽ロイヤリティは消費者の嗜好や業界の変化には影響されるかもしれないが、他の資産との連動性は低い。

つまり、音楽著作権は安定的なキャッシュフローを長期的に生む資産と言える。このような資産として他に、リスクの低い債券や不動産があるが、それらのような安定的なキャッシュフローを生む資産は、大抵アップサイドは限定的だ。しかし音楽著作権はアップサイドの可能性も十分にあることが特殊だと思う。以下、その理由を説明したい。

  1. デジタルストリーミングの成長: SpotifyやApple Musicなどのサービスは、音楽の消費方法を変え、より多くのリスナーの獲得に成功している。これにより、ロイヤリティが著しく増加しているアーティストや音楽が存在する。

  2. 長期的な収益: ”カタログミュージック”と呼ばれる定番曲は時間を経ても人気が持続し、新たな世代のファン獲得により長期にわたってより多くの安定収益を生み出す可能性がある。尚カタログミュージックはストリーミングの普及により年々増加しており、音楽消費全体の75%を占めるようになっている。

  3. グローバル市場の拡大: 音楽は国境を越えて受け入れられる。これにより、新たな地域でファン層を拡大できれば、そのロイヤリティ収入は著しく増加する可能性がある。

  4. 新技術の活用: AIやビッグデータなどの最新技術の活用により、楽曲の利用効率やプロモーション手法が向上し、収益化の新たな道が開かれている。例えば最近ではアーティストをアバター化し高齢化したアーティストもメタバースコンサートを開くことでファン層を拡大し続ける動きさえ出てきた。(「KISS、今後はデジタル・アバターとして活動することを発表」 by billboard JAPAN

つまり特にカタログミュージックの著作権への投資は、最初から安定的で長期的なキャッシュフローが見込めるのみならず、テクノロジーによる構造変化を踏まえたプロモーションにより新たな世代や地域のファン層を拡大することで、キャッシュフローの増大を図ることができるのだ。キャッシュフローが増えれば、その現在価値(つまり著作権の値段)も上がる。売却してキャピタルゲインを得ることも可能だろう。
このような投資対象資産は他にあるだろうか?強いて言えば不動産のバリューアップ投資は同様の性質を持つかもしれない。それでもアップサイドはある程度限定的だろう。

音楽業界のデジタル化やテクノロジーの進化を背景に、音楽著作権投資は長期の安定収入に加え、アップサイドの大きな潜在力を秘めるようになっている。もちろんカタログミュージックの著作権に投資する為には業界における相当の人脈や、複雑な著作権に関する専門知識、さらに音楽プロモーションの知識と能力が必要であり、誰にでもできるわけではない。ただだからこそ黎明期の今、実行できる数少ないチームにとっては一世一代のチャンスと言えるのかもしれない。