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プライベート・クレジット投資における”既存ポートフォリオ問題”とは?(”プライベート・クレジット”って何?⑤)

金利が上がりSVBの破綻やクレディスイス問題などで大騒ぎとなっている今、プライベート・クレジットの投資環境には追い風が吹いていると言われている。株が下がっている時に買った方が儲かりやすいのと同様、プライベート・クレジットもこれから新規で投資する場合は有利と考えれらている。逆に言うと、既に投資してしまっている投資家は”Legacy Portfolio Issue”という問題を抱えている可能性がある。”レガシー”と言うと日本語的にはポジティブな意味合いを含む場合もあるが、ここでいうLegacyとは”過去にやってしまった”のような後ろ向きなニュアンスをもつ。”Legacy Portfolio Issue”とはつまり、既に作り上げてしまったあまりよろしくないポートフォリオがネックになることを言っているのである。

ある大手プライベート・クレジット・ファンドの幹部によると、この1年くらいでプライベート・クレジットの上乗せ金利は1〜1.5%上昇している(さらにベースとなる短期金利は4%以上上がっている)が、ローンのクオリティは逆に良くなっている。担保価値に対するローンの比率を表すLTVは60〜65%くらいだったのが今は新規ローンでは40〜50%程度で、コベナンツ(ローンの貸し手にとって有利な条項)も大幅に厳しくなっているという。つまりこれから新規でローンを貸す場合は、以前よりも大幅に有利な条件(金利も高くより安全な条件)で貸せる状況である。逆に既に貸してしまっているローンについては、金利/LTV/コベナンツの条件をタダでは変更できず、よろしくない条件のまま保有せざるを得ない。これをLegacy Portfolio Issueと言うわけだ。

投資家目線で考えると、これからフレッシュに現金を集めてプレイベート・クレジットに投資していく場合は期待が持てる環境と言える。一方で、既に構築された既存ポートフォリオにこれから投資するような場合には、フェアな値段/条件で投資できるかどうか十分に注意したほうが良いだろう。大幅なディスカウントで買える可能性もあるが、プライベート資産は値付けが簡単ではない為、実際フェアに値付けされないことも多いのだ。