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法務研修の参加者満足度を高めるためのポイント

社員教育の一環として、「法務研修」を実施している会社も多いのではないでしょうか。
せっかく多くの人が集まって研修を行うので、参加者にとって有意義なものにしたいですよね。
本記事では、法務研修の満足度を高めるためのポイントをまとめます。


1.参加者が内容を理解できること

①伝える内容を絞る

法務担当者は正確性を重視するあまり、説明が長くなる傾向があります。しかし、説明が長くなると、本当に伝えたい内容が相手に伝わりにくくなってしまいます(西岡 p50)。
説明が長くなりそうな時は、次の質問を自分自身に投げかけてみてください。

限られた時間しかない場合、あるいは1文だけしか相手に伝えることができない場合には、何を伝えますか?

ナフリック p45

また、内容を絞るうえでは、達成すべき目標を設定して、そのために必要な内容が何かを逆算して考えることも大切です。
目標の例としては、以下のようなものが考えられます。

  • コンプライアンス研修⇒「日常業務で守るべきルールや留意点を理解してもらう」「〇〇関連の違反件数を〇件まで減らす」

  • 契約研修⇒「契約書を読んで、内容を理解できるようになってもらう」「〇〇に関する問い合わせを〇件まで減らす」

②参加者の知識や経験に合わせる

参加者の知識や経験に応じて、研修を分けることも有用です。
たとえば、契約研修の場合、営業経験に応じて以下の内容にすることが考えられます。

  • 営業1年目の方⇒「契約書の意義、一般条項」

  • 営業2年目以上の方⇒「契約類型別のポイント」

  • マネージャー⇒「契約スキームの検討」

③分かりやすい表現を用いる

私の失敗談ですが、以前、同僚との雑談中に、「民事と刑事の違い」を尋ねられれたことがあります。
その際、私は「民事とは、私人間(しじんかん)の…」などと教科書的な説明をしてしまい、同僚に「良くわからないけど、しっかり勉強しているんだね」と言われたことがあります。

いくら正しい言葉で説明しても、相手に理解してもらえないと意味がありません。どこまで厳密に説明すべきかはケースバイケースですが、先ほどの例では、「民事は、被害者が加害者に損害賠償を支払うこと」「刑事は、警察が犯罪者を捕まえて罰すること」くらいの説明でもよかったかもしれません。

分かりやすい表現を使って説明できるように、法律書だけでなく、一般向けの書籍などに目を通すことをお勧めします。
また、研修の場面では、相手の反応を見て、分かりやすい表現に言い換えましょう(岩田 p109)。

2.実務で役立つこと

①参加者の関心事項に合わせる

参加者が知りたいことや悩みを把握して、それに寄り添った内容を盛り込むことも重要です。
たとえば、ハラスメントに関する研修を行う場合には、参加者の立場や関心に合わせて、以下のような内容とすることが考えられます。

  • 【一般社員】ハラスメントを目撃した場合の対処法を知りたい⇒「注意する方法やフォローの仕方」

  • 【マネージャー】部下の適切な指導法を知りたい⇒「部下のタイプ別の指導法・NG例」

  • 【管理部門】ハラスメントの報告を受けた場合の対応を知りたい⇒「社内体制と対応フロー」

②具体的なアクションを提示する

法律書籍を参考に資料を作ると、「用語の定義」や「法律の解釈」などが大部分を占めることになります。
しかし、現場担当者が知りたいのは、「個々の場面で具体的にどうすればよいのか」です(三浦 p25)。
法務担当者としては、一般的な内容だけでなく、自社の実情を考慮して、現場担当者が具体的にどうすべきかまで踏み込んで伝えることが求められます。
もし可能であれば、予め法務部門内で議論して、具体的な対応指針を作成しておきましょう。

参考文献

  • 西岡壱誠『「伝える力」と「地頭力」がいっきに高まる 東大作文』(2019, 東洋経済新報社)

  • 三浦悠佑「事業部門が”腹落ち”する法務研修の方法論」『BUSINESS LAW JOURNAL』(2019, Lexis Nexis)

  • コール・ヌッスバウマー・ナフリック『Google流 資料作成術』(2022, 日本実業出版社)

  • 岩田健太郎『「感染症パニック」を防げ!リスク・コミュニケーション入門』(2014, 光文社新書)