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カナリア

丘の上でカナリヤが鳴いている
幸せを呼び込む小鳥のさえずりは
言葉が発達しすぎた僕等の心には届かない

手紙に文字を認めて、最愛の人に贈る行為を
愛と呼ぶのならば
「愛」個体では方程式は成り立たない
隣の席に座るあの子も、教壇の前の席のあの子も
閉め切られた窓からカナリヤの唄を聴いているのだろうか

ニアイコールで結ばれる僕等は
全員がある程度同じ教育を受け、最後にはゴミのように扱われる
(君の代わりはいくらでもいるよ/君の代わりは捨てられたよ)
ゴミ箱の中に丸められた恋文を
拾い直して手紙の皴を伸ばしてみる
届かないであろうこの心も、生まれ持った指数の乱立であるのだから、言い訳をすることはできない

カナリヤはきっと僕等の知らない所で
愛を育んでいるに違いない
羽を水溜りで洗って、清潔な羽を広げるようにして
小川の流れを旋律と勘違いしながら
鳥本来の持つ美しき言葉を惜しげもなく
綿帽子のようにひとつひとつ丁寧に飛ばして

代わりのいない相手を見つけに枝を蹴るのだろう
閉鎖的な校舎に閉じ込められた僕等とは住む世界が違う
ただ、その違いが

ひたすらに愛おしいのだ

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