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エブリデイ

朝になる度に思うこと
一日がこのまま止まって始まらなければいいのに
それ程までに憔悴した男は
鏡を見る度に拳を当てて
消えてしまえよと訴える

毎日仕事に向かって
やりたくも無い作業に追われ
疲労困憊で家に帰ると、迎えてくれる家族も無く
独り発泡酒を飲むことが楽しみだ

こうした人間は今やこの国にたくさん存在していて
いつからこんなに幸福度が下がったのだろうと
皆が首を傾げた
この国は治安が良いし、戦争も起こらない
だから生まれただけでハッピーです
そうは言われても現実的に幸せでない人は多数存在している

幸せってなんだろう
結婚することだろうか
豪邸に住むことだろうか
宝くじが当たることだろうか

そのどれもが自分を満たしてくれるわけもなく
酔いが覚めない内に眠りにつく

本当の幸せを知っていたのは、いつまでだろう
子供の頃は何も考えずに蜻蛉を追いかけていた
川では沢蟹を探し
空に飛ぶカラスの数を数えていた

それが僕等の無くしてしまった本当の幸福
頑張っても頑張ってももう手の届かない幸福
それならば、幸せを上塗りしたらどうだい
神様が語り掛けてくる
それって、そんなに容易いことなのでしょうか
男は夢を見ていた
夢の中で河川敷に佇んで、隣には見知らぬ女性の姿
ああ、これは私の希望だ
朝が来たら、またこの幻影が終わってしまう
そう考えると寂しさが押し寄せてきたが

神様のご褒美だと思って
そっと女性と手を繋いだ

夢なのに暖かい

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