祖母

祖母には文才がある。
文をあやつる能力がめちゃくちゃあるのだ。
散文から川柳までなんでも書いてしまう。なんでも書いて新聞に投稿している。そしてその選ばれる率がめちゃくちゃ高い。常連らしい。地域の老人会でも評判がよくそれもモチベーションなんだろう。
小学校低学年のころ歯磨きの標語を作ろうという夏休みの宿題が出された。俺は祖母の家で祖母と一緒に考えた。すると俺がうんうんうなっているうちに祖母は三首くらいもう書き上げていてしかもめちゃくちゃいい首を詠んでいた。

「はぶらしと なかよしならば むしばなし」

祖母は粗削りやけど、と言っていたがこれは小学校低学年でもわかる完ぺきな首だった。
そして俺はそれを何食わぬ顔で提出した。
すると担任の先生がこの抜群のセンスに目をつけてしまい、これを小学校の代表として推薦してしまったのだ。
そして市内の小学校の中から集められた歯磨き標語コンテストで入賞してしまった。
ちょっとすごい標語を作ってみんなに自慢しようとしていたのがまさか入賞してしまうなんて。
思春期の母親に対する気持ちばりに複雑な気持ちで表彰状を受け取った。


最近祖母の家に行くと終活で書いた文章を整理しているらしくよく読み聞かせてくれる。
これといって凝らした表現は出てこないのだけどやわらかい感じの文章を書く。
その中で祖母が書いた数少ない凝らした表現が「スープも冷めない距離にある息子夫婦の家」という表現で、よくこの文章を読んでくれる。この表現も凝らしているのだけれどとても柔らかい感じの表現。俺めちゃくちゃ好き。題材は俺の母ちゃんで、母ちゃんがめちゃくちゃ気にかけてくれるって話。母親が褒められている文章なんだから悪い気はしない。
ほかにも俺が中学校の頃東京に孫を訪ねた話、息子らが旅行を企画してくれた話、小さいころの話、孫と散歩した話などたーくさんある。そのどれもがほっこりする文章で読み聞かせてくれるのが毎度楽しみ。(最近同じ文章ばっかり聞かされてストーリーを覚えているのもある。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?