Research28〜施工+エスキス〜

調査時間:2019.1.20(日) 9:00〜15:00
場所:狛江市+多摩川河川敷
天気:晴れ(4〜12°C)
エスキス:小林さん(12:00〜13:30)

今日は朝起きてから家には帰らず、街のどこかで朝食を食べてまた河川敷に戻ってみようと思う。都市には色々な昨日が分散していて、それらを繋ぎ合わせれば大きな家のようである。
また、お昼の時間には研究会の教授が来てくれる。そこでエスキスを受けて最後の1週間に繋げたい。

モスバーガー

和泉多摩川駅前にあるモスバーガーは朝7時から開店している。就寝時間にもよるが、7時は河川敷の生活とマッチした時間帯かもしれない。今回は9時くらいに入店したが、朝からご飯を食べて暖をとれるのはありがたい。

夜に使ったスマホやパソコンの充電をしたいと思っていたら、このようにコンセントがある座席を発見した。特に注意書きとかはなかったので、遠慮なく一つはスマホへ、もう一つはパソコンへ繋いだ。

電気は欠かせない存在だ。河川敷で生活している路上生活者でさえも、ソーラー発電やバッテリーを駆使して何かを動かしたりしている。加藤さんは昔、発電機そのものを持っていたらしい。そのようなリソースが身近に手に入る例として、今朝のモスバーガーは最適なものだった。

多摩川の権利

モスバーガーから帰ると、国土交通省のパトロールの人がぼくの家の前にいた。遠くからその様子を観察してみると、家の写真をたくさん撮ったり、なにやら情報を書き込んでいたり、警告のステッカーを貼ったりなどしていた。12/31に一回やられたので、今回が2回目ということになる。

相変わらず攻撃的なステッカーだ。

とはいえ気にせずずっと作業をしていると、14時すぎくらいに国土交通省のパトロールの人がぼくの家にやってきた。初めての対面だ。

パトロールの人は思っていた以上に物腰が柔らかい人で、ぼくを諭すような語り口だった。
「ここに造作物を無断で置くことは法律で禁止されているから、撤去して欲しいんです。あなたはホームレスですか?仕事はありますか?」
ぼくは卒業制作でやっているとは言わずに、
「身を寄せる家はあります。仕事はないです。ここでは週の半分くらい泊まっています。」
と嘘ではない範囲で答えると、パトロールの人は色々と想像力を働かせてくれて、
「まぁ色々と事情はあるでしょうからね。でも早く仕事を見つけて、ここに住むのをやめなさい。」
と言ってくれた。親心に溢れた人だ。

ここで気になっていた疑問をぶつける。
「あの橋の向こうにも住んでいる人がいますよね。あの人は撤去しなくてもいいんですか?ぼくがここでホームレスですと答えたらここにずっと住めるんですか?」
「ホームレスの人も本当はダメだし、生活保護と施設の案内も出して、路上生活をしないように促してるんだけどね。やっぱり生活保護とか施設とかを嫌う人もいる。そういう人には、名前とか生年月日とか出身地とか諸々の情報を書いてもらって、ホームレスとして登録している。」
という回答だった。つまり、河川敷のホームレスに関しては、オリジナルの住民票のようなものがあり、そこで全部を管理しているのだ。やはりブラックの中のホワイト、グレーゾーンの施策がされているのだ。

「でも、1月いっぱいはどうしてもここに住まなきゃならないんです。」
そう伝えると、案外あっさり
「わかりました。上司にそう伝えておくので、その代わり1月中に撤去してください。あと、これ以上の増築はやめてください。寝室さえあれば寝泊まりには困らないでしょ?」
と釘を刺しながら、ぼくの要求を飲んでくれた。家がなくて困っている人は、すぐに出て行けと言われても路頭に迷うだけだ。なんだか出て行かなきゃならないのは悲しいことだが、本当に家がない人たちを守るためのルールでもあるんだと思うと、従わざるを得ない。

帰り際にパトロールの人は
「ところでお名前は?」
と聞いてきた。なんかに登録されるのかな、嫌だなと思いながらも
「松岡と言います。」
と答えたら、
「私はタケウチです。よろしくお願いします。」
と返してくれた。最後は登録されるのかもしれないけど、その柔らかいコミュニケーションになんだか心が暖かくなった。
「君はまだ若そうだよね。30歳にもなっていないんじゃないかな?まだ20代なら仕事もいっぱいあるよ。頑張ってね。」
そう言い残して、タケウチさんは去っていった。

エスキス

お昼すぎに小林さん(ぼくが所属している研究会の教授)が来訪してくれた。研究会活動を通して3年間お世話になっていて、この路上生活者のリサーチも1年間卒業プロジェクトとして見守ってくれた恩師だ。

小林さんからのフィードバック
・ブリコラージュはひとつひとつの意思決定の積み重ね。計画なしの建築だから、なぜそうなったかを説明できることが大事。
・プライバシーについて考えること。
・一般の人たちが通る道との関係性が大事。(パブリック→セミパブリック→セミプライベート→プライベート)
・ストラクチャーをもっと生かす。(構造としても、壁としても)
・寝室の作り方とリビングの作り方の違いが明確だと面白い。(張力を使ってみたら?)

90分間みっちりとフィードバックを受けながら、ぼくの家で小林さんが買ってきてくれたコンビニ弁当を一緒に食べた。

張力で壁を立てる

エスキスを生かして、そしてタケウチさんからの注意を生かして、リビングルームは張力を用いて建設し、即興的に展開できるものにしたいと考えた。屋根も常にある必要はなく、必要な時にかけられるようなシステムを作れればいいと思う。

ストラクチャーのフェンスとコンクリートブロックを用いて、ヒモの張力で壁を立てた。他にも柱を立てて、空間の全体像を浮かび上がらせることができた。

張力を用いるのはかなり実用的なアイデアだ。壁を2箇所くらいに立てることができれば、それでもうなんとなく空間として区切ることができそうだ。
これ以上の恒常的な増築はできないが、仮設的な増築は可能になりそうだ。なので、壁にボードなどを貼っていって、もっともっとプライベートにしていきたいと思う。

壁の生かし方

小林さんからのフィードバックにもあった、ストラクチャーの壁としての使い方について考えてみる。ここには紙とペンはないので、設計のスケッチや図面のようなものを書いておくためのスペースとしてダイナミックに利用できるのではないか、とのことだった。

確かに中央に学校の黒板のような広いスペースがあるため、この壁を利用して設計図のようなものを書いた。結構イメージが膨らむし、ダイアグラムなどもこの場所で整理できる。これからは計画なども随時メモしていきたいと考えている。(個人的に結構気に入った。)

残り1週間

路上生活も残すところ1週間となった。27日には内覧会を行い、その場で解体して撤去、大学に搬入するつもりだ。水曜日までは大学に行かなければならないので、水曜日の夜からまた再びこの場に戻ってきたいと思う。長い釘を探したり、張力を用いたリビングの設計を行ったりしていきたいと思う。

ぼくのリサーチに関するフィードバックや情報提供お待ちしています!