我がミステリ遍歴(2)
本棚にある占星術殺人事件を「手始めに」という軽い気持ちで読んだところ、その面白さに衝撃が走った。
占星術を題材にした事件全体の怪しげな雰囲気もさることながら、御手洗潔の破天荒な魅力に、とにかくやられた。夕方から読み始め、ご飯を食べるのももどかしく、その日の夜のうちに一気に読み通してしまった。
――これは、凄い。
実をいうと、トリックに関しては知っていた。いわゆる「金田一少年」被害者というやつである。そして、この占星術殺人事件が元ネタというのも、知識としてあった。
母親がその金田一少年から興味を持って、占星術殺人事件を購入したのが数年前。以来、ずっと本棚にあり、その背表紙を見るたび「そのうち読んでみるか」と思っていた。
そして月日は流れ、機は熟し(?)、読んでみたところ、その面白さにひっくりかえるくらいの衝撃を受けた。
僕の中では、「トリックが同じなら読み比べて、小説というジャンルが漫画やゲームとどれほど違うのか分かりやすいな」という、一種の答え合わせにも似た軽い気持ちだったのだが、思いがけぬ結果におどろきを隠せなかった。
僕はそれまでミステリは「トリック」が主眼のジャンルだと漠然と思っていた。そしてそのトリックに興味がさほど持てなくて、だからミステリというジャンルに感心こそすれ、心の底から没入するということはなかったし、今後の人生でもないだろうと思っていた。
だが、占星術殺人事件は違った。トリックは同じでも、圧倒的に違う「凄み」のようなものを見せつけられた。それは今までの読書体験とは明らかに異なるものだった。
これはもっと他の作品を読みたい。この御手洗潔という探偵にまた会いたい。僕はすぐさま本屋へ駆け込むことになる。
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